アニメごろごろ

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「魔法科高校の劣等生」コミカライズ担当作家の魅力を語る

毎回記事のタイトルの付け方に悩んだ挙げ句の果てに、面白味のないところに落ち着いてしまうのは何とかならないものか。まあそんな読み手にどうでもいい話は置いといて本題の方に入ろうと思います。


きたうみつな
「入学編」と「横浜編」と「ダブルセブン編」を担当するきたうみつな先生。コミカライズの中では絵柄が原作絵の雰囲気に近いので、原作絵に似ている事を重視するファンには嬉しいコミカライズだと思います。背景の描き込みが細かい事に加えて絵が崩れる事が殆んど見られないなど全体的に質は高い方ですが、大胆なコマ割と構図を用いた漫画ならではの魅力が乏しい為に、動きのあるアニメと比較すると地味な印象を受けます。

原作絵の影響を悪い意味で受けて最初は深雪の髪がカラーでは青色にされていましたが、最近は原作の描写に合わせてカラーでも黒色に塗られています。この作品には黒髪のキャラが多数登場するのですが、深雪の個性である黒髪ロングの存在感を増す為に、同じ黒髪の雫や真由美の髪にはトーンを貼り付けて、深雪はベタ塗りのみにして髪の色感と質感を差別化。ちなみに森夕先生も同様に深雪の黒髪を他とは変えて描いています。




森夕版
深雪視点から描かれた「優等生」を担当する森夕先生は深雪を美少女として描いている事が最大の特徴。普段は効率を重視して簡素な絵を描きますが、深雪の見せ場では睫毛を丁寧に描いて、そこらの美少女とは別格の容姿をしている事を読者に印象付けます。

戦闘に迫力が無い事や背景に空白が目立つといった欠点もあるのですが、毎巻上達していて丁寧に描かれたコマは他作品と遜色が無い位には上手なんですよね。きたうみつな先生みたいに絵が安定すれば格段に見映えがいい作品になるのは分かりきっているので、森夕先生の生産性がこれから先も伸びる事に期待しています。




依河和希版
達也と深雪の過去を描いた「追憶編」を担当した依河和希先生の特徴は少女漫画的な表現。深雪の心境を貼り付けたスクリーントーンや背景に描いた花を用いて表現する場面が多いです。深雪が周囲の事には目を向けずに達也の事だけを想い、恋する乙女の世界に入る時などは瞳の描き方を淡い感じに変えてあるのも注目点。

見せ場で絵柄の方向性は同じにしたまま丁寧に描こうとする森夕先生とそこが違います。依河和希先生の非常に細い輪郭線は少年漫画的な荒々しい戦闘には向いていませんが、兄に恋する幼い少女の繊細な心の移り変わりを描いた物語には適しているかと思います。




天羽銀版
美少女が魅力的ではないとか目が死んでいるとかファンからの批判も多い「横浜騒乱編」を担当した天羽銀先生。ネット上では否定的な意見が多い作品ですが、その全てが駄目という訳ではありません。作者紹介に書かれている大胆なアクションシーンと男らしい人物描写に定評ありには納得。

平面の漫画の中に空間の立体感を感じさせる構図の巧さ、中年の親父が持つ渋さに関しては他作品を圧倒するものがあります。多分女性キャラが少ない作品のコミカライズをしていれば、あそこまで叩かれる事は無かったのではないでしょうか。




マジコ版
アニメ化はしていない「来訪者編」を担当するマジコ先生はバランス感覚が優れています。きたうみつな先生の様に背景を十分に描き込み、森夕先生の様に深雪を美少女に見せる事も意識、さらにはデフォルメキャラを用いて軽い雰囲気も出す。色んな漫画家の良いところを持ち合わせたバランスの取れた作品。表紙で受ける印象以上の完成度の高さでした。

デフォルメは特にいい味を出していてポンコツなリーナの可愛さが強調されました。ただそれが達也の感情表現を豊かにしている面はあるので、そこに対しては賛否両論になる可能性はあるかと思われます。絵的な特徴には手前にいるキャラなどの輪郭線を太めにしている点も挙げられます。そうする事によって背景とキャラの境を明確にして、描き込みの多いコマでも読者が楽に読める様に配慮したのでしょうね。アニメ派が知らない話である点も含めて、個人的に最もお勧めする作品。