シリーズの新時代を切り開いた「アイカツスターズ」の魅力

シリーズで最も心を打たれ、自分の人生において大切な作品である「アイカツスターズ」。10周年を機に日頃から抱いている熱を形にしたいと思い、その魅力を改めて書き記すことにしました。
アイカツらしくない作品の意義
「アイカツスターズ」は放送当時に大ヒットした前作と比較され、作風の変化に関しては一部のファンから厳しい声も聞こえました。
確かに前作を好きな人には受け入れ難い展開もありましたが、そうした展開に関して「アイカツというブランドでやる意味があるのか?」と言われたら「アイカツでやることに意味がある」と思っていますし、前作と違う話をやりきったスタッフに尊敬の念を抱いています。誰かの真似なんて退屈なだけさ。
娯楽作品としてのアニメであれば前作と似たような作品を作り続けることも手ではありますが、子供を教育する役割も担っているキッズアニメとなると話は別。
仮に前作を真似した作品を作ることで喜ぶ人はいるかもしれませんが、それでは新しい話を多くは伝えられないでしょう。子供を楽しませるだけではなく、作品を通して何を伝えるのか。
「アイカツ」が当時の時代の空気を感じ取って明るい話へと舵を切ったようにキッズアニメの使命を考えた時、「アイカツ」が好きな人に向けて「アイカツ」に足りなかった話を見せることには意味があるでしょう。食事も娯楽もバランスよく栄養を偏らせない。それが前作から渡されたバトンを繋いでいくことでもあります。
あかりジェネレーションのその先へ
「アイカツスターズ」が「アイカツ」から渡されたバトン。その一つが過酷な勝負の世界、真剣勝負で敗北した後の話が挙げられると思います。
あかジェネでは主人公達がお互い競い合っていく内に勝負に本気になり、総決算であるスターライトクイーンカップでは氷上スミレと新条ひなきが失敗と敗北から悔し涙を流します。
のの「いつもより真剣で熱くてなまらめんこかったです!」
上記が物語のクライマックスであった為、彼女達が悔し涙を流した後にどう立ち向かっていくのかまでは具体的に描写されませんでしたが、「アイカツスターズ」では序盤から終盤まで本気で努力しても敵わない場面が何度も訪れます。
失意の底からどのように立ち上がるのか、勝ち目が薄い中で挑戦する意味はあるのか、挑み続けた先に何を得るのか。主人公のライバルである桜庭ローラを通して、それらの問いに対する答えが描かれていました。
彼女の勇姿は視聴者の心に残り、そして勇気を与えてくれたと思います。「アイカツアカデミー」の和央パリンさんもその一人でした。
ローラ「負ける度に涙を流す度に私は強くなれた気がする!そうやって少しずつ弱い自分にさよならが出来れば」
上記以外の「アイカツスターズ」になってから描写された要素としては、登場人物の精神的な未熟さが挙げられます。
主人公に対する結城すばるや早乙女あこの態度を見ても分かりますが、他人を揶揄ったり妬んだりと精神的に年相応の子達が多く、人間関係も最初から良好とは言えません。メインターゲットの子供達と一緒ですね。
視聴者の中には登場人物の幼い振る舞いにストレスを感じる人もいるでしょう。けれどもそれだけで終わらせる作品ではありません。一方的に主人公と対立する側を悪く見せることは少なく、嫌な人にも良い面があることを描いてきました。
あこ「あの子ちゃんと準備してたんだ…それに比べて私は」
苦手な相手の全部を否定するのではなく、分かり合えないとしても努力しているなど認めるところは認める。他人を引き摺り落とすより、未熟な自分を受け入れて成長の糧にする。自分の中にある綺麗な物だけ見るんじゃなくて全部抱き締める。
あこに限らず同様の描写は幾度もされています。知り合って間も無い頃の気が合わないゆめとローラ、エルザやきららもそうでした。このようにストレスに思える話の中には、社会を生きる上で大切な話が詰まっています。
弱い人に向けた物語
精神的に未熟であることは成長する余地があること。「アイカツスターズ」はパーフェクトではない主人公達が変わる姿を見せてくれる作品でした。
自己中心的で好きな人しか見ていなかったあこは、自分が成長する機会よりもファンとの約束を優先するようになり、きららにはファンの存在がどれほど大切であるのかを伝えられるようになりました。
姉に対するコンプレックスから自分を厳しく追い込んで孤立していた真昼は、姉と和解してからは他者に目を向ける余裕が生まれ、彼女を慕う舎弟の他にレイとアリアの二人にまで影響を与えるようになりました。
このように清く正しく生きられない人の心の弱さを描いてきた「アイカツスターズ」の世界は、見る人によっては厳しいものに映るかもしれません。
しかし視聴者と同じ心の弱さを持っている彼女達だから伝えられるメッセージがあり、それらは厳しさとは反対の視聴者の心を支えようとする制作陣の優しさから生まれたものであったと思いますし、実際それに近い話はトークイベント等で語られています。
たとえ前作のファンから反発されようとも独自の路線を最後まで貫き通した「アイカツスターズ」。その個性は私にとって他の星にも負けないくらい輝いて見えました。