メディアミックスが盛んに行われるライトノベル。テレビアニメを放送して円盤を売る以外にも、販路拡大の為にOVAを書籍と併せて販売したり、劇場版を制作して来場者特典を付けたりと色んな試みが行われています。コミカライズの方もアニメと同様に時代の流れに合わせて様々な取り組みを行ってきました。
コミカライズを他社に委託
コミカライズは自社の漫画雑誌に掲載するのが通例でしたが、電撃文庫の「とある魔術の禁書目録」が2007年にスクエニの月刊少年ガンガンで連載開始した頃から次第に変わり始めます。角川系のレーベルも以前よりも互いに歩み寄り、富士見ファンタジア文庫はドラゴンマガジン、MF文庫はアライヴ、スニーカー文庫はエース以外の雑誌に載せる事が増えました。
様々なレーベルが他社にコミカライズを委託する中で、独力で何とかする集英社のスーパーダッシュ文庫とダッシュエックス文庫。集英社には小畑健先生や矢吹健太朗先生や山本ヤマト先生などの優秀な漫画家がいますが、肝心のラノベの人気が低い為にその強みは大して活かされていない様に思います。集英社といい講談社といい漫画事業が強い出版社は逆にラノベ事業は弱い印象を受けます。
電撃文庫はスクエニがお気に入りなのか「禁書」に「デュラララ」に「魔法科高校の劣等生」と看板作品のコミカライズを任せる場合が多いです。これにはコミカライズの売上の大半がスクエニの取り分になるデメリットがありますが、ラノベ好きばかりが読んでいる電撃大王や電撃マオウに掲載するよりも読者層を広げられるメリットがあります。
「禁書」のコミカライズが開始した当時のガンガンは「鋼の錬金術師」と「ソウルイーター」が連載中で大勢の読者がいましたから、ガンガンに漫画を載せる事の宣伝効果はかなりものであったのではないでしょうか。
この様に看板作品のコミカライズをスクエニに委託して読者を増やしておいて、電撃大王から出しているスピンオフの「とある科学の超電磁砲」や「魔法科高校の優等生」の売上を伸ばして儲ける商売上手なだけに、「SAO」のアインクラッド編のコミカライズがああなったのは不思議で仕方ありません。
コミカライズを同時並行で進める
漫画は小説よりも執筆に時間が掛かり物語の進行が遅い事もあって、原作小説の最後まで描かれる事はまずありません。原作小説数巻分まで描いたところで原作自体の人気が落ち、その影響で漫画が打ち切られるなんて光景が頻繁に見られます。
最近はこれを避ける為に複数の漫画家を用いてコミカライズを同時並行して行い、短期間で原作小説数巻分まで進めようとする作品も増えてきました。それによってアニメ化の熱が冷めないうちに幾つも出ている漫画を大量に売ろうとする。「ソードアート・オンライン」に「魔法科高校の劣等生」に「Re:ゼロから始める異世界生活」と出版社が相当力を入れている作品はこのやり方を選んでいますね。
あらゆるレーベルと手を組むスクエニ
5年位前からスクエニは他社のラノベのコミカライズを積極的に引き受け、今では電撃文庫にガガガ文庫に富士見ファンタジア文庫にGA文庫にオーバーラップ文庫と多数のレーベルと手を組んでいます。漫画雑誌を持たないGA文庫なんかは結構な数のコミカライズをスクエニに頼んでいますね。ガンガンオンラインにはGA文庫の小説も掲載されています。
近年人気作品を生み出せずにいるスクエニにとって、人気作品のコミカライズは貴重な収入源になっているのではないでしょうか。「ダンまち」で勢いのついているGA文庫との関係の維持が今後重要になるかもしれません。
小説家になろうのコミカライズは良作揃い
ラノベのコミカライズは質が低いと言われる事もありますが、小説になろうのコミカライズは良作率が高めで、「無職転生」と「リゼロ 第二章 屋敷の一週間編」と「盾の勇者の成り上がり」と「ありふれた職業で世界最強 」は必見の価値あり。
小説家になろうから生まれたこれらの小説はネットを使えば未だに無料で読めてしまうせいで、付加価値がほぼ挿絵しかない書籍版は購入されづらいところがあります。そんなネットで読んで満足してしまい書籍版を購入しようと考えない層も付加価値の高い漫画となると購買意欲は湧きます。
無料で読めるおかげで読者はそこらのラノベよりも圧倒的に多いですから、これのコミカライズは普通のラノベのものよりも購買層は厚いはずなんですよね。そうした事情もあって小説家になろうのコミカライズには上手い漫画家が選ばれやすい気がしています。