アニメごろごろ

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「アイカツフレンズ」の物語は何を描いてきたのか

フレンズという友達や恋人と類似したアイドル達の関係性を描いた「アイカツフレンズ」。歴史あるアイカツシリーズの中で他と何が異なるのか、本稿では作品の特徴について考えたいと思います。

 

不完全な人と人の支え合い

前作の「アイカツスターズ」では「アイカツ」と比べて未熟なアイドルが多く描かれており、完璧を求めるエルザや病状なリリィを通して人間は不完全であってもいいということが語られていました。

アイカツフレンズ」もそうした作風を受け継いでいるのか、主人公達が性格的に嫌な子に見えないように工夫されていますが、それ以外の部分では欠点が幾つも与えられていました。

コミュニケーションが下手であったり、お化けを怖がったり、急に眠ってしまったり、占いが苦手であったり、生のトマトが食べられなかったりと表現は様々。

勿論「アイカツ」でもスミレやひなき等の欠点が描かれるキャラもいますが、初登場してから数話で克服して頼もしくなってしまう為、欠点に見えづらくありました。ユニットも各々が自身の問題を解決した後に組む傾向でした。

一方「アイカツフレンズ」では初登場から半年が経っても苦手が克服されないままということは珍しく無く、みおはブリリアントフレンズカップに出場する段階になってもあいねと分かり合えず、白百合姉妹は高校生になっても初対面の相手との付き合い方に悩みます。

トップアイドルのカレンとミライですらも物語の終盤に椎茸やブラックコーヒーに苦戦します。ひびきとアリシアのコミュニケーションを見ても感じるかと思いますが、基本的に問題の解決を急ぎません。

そこにしかないもの

「ゆっくり行こう ちょっとくらい回り道 そこにしかない未来」

欠点は改善すべきという考え方もありますが、パートナーであるフレンズは相手の欠点も含めて受け入れます。

例えばあいねには周囲に相談もしないままソルベット王国に同行するなどの厄介事を引き受ける癖がありますが、巻き込まれるみおはそれが彼女の魅力でもあるとして一緒に手伝ってあげます。

他の例を挙げるとさくやは仕事中に眠ってしまうような困った子ですが、妹のかぐやは彼女の面倒を喜んで見ます。そんなさくやが欠点を克服する回があるのですが、ここで注目して欲しい点は欠点を克服する動機。

これまでの作品に散見された自身の成長の為ではなく、妹が安心して海外に留学できるようにする為なんですよね。主人公のあいねもそうなのですが、好きな人の力になりたいからこそ頑張れる。そうした他者を思いやる姿が「アイカツフレンズ」の魅力であったと思います。

 

嘘を越えた奇跡を起こす物語

最初に述べたようにフレンズの関係性が主軸ではあるのですが、全話視聴した後から振り返ってみると「アイカツフレンズ」は嘘、神話といった作り話を中心に物語が展開されていたように思います。

みおが愛読して目標としているラブミーティア物語は真実のみが記されているのではなく、明確に真実と異なる話も記されており、ラブミーティア自身も把握しています。

かぐやは占い中に困った時は適当な嘘を吐き、ひびきは番組を盛り上げる為にドッキリで嘘を吐き、わかばはオーディションで別人に成り済ましており、メインのアイドルで嘘を吐かなかった人は皆無です。

ちなみにあいねも下記の嘘を吐いているのですが、その後に直ぐばらす姿に彼女の優しい性格が感じ取れますね。

あいね「その石、手に入れた人にどこまでもついて行くっていう呪いの石かも。」

神話の例としてはさくやと木花咲耶姫、かぐやとかぐや姫、カレンとイカロスを結び付けるような話がされています。物語の舞台は天乃川市という七夕伝説で織姫と彦星を引き離す川の名になっており、街には天の川を表しているかのような大きな川が流れています。

そしてブリザードに立ち向かうソルベット王国編に関しては、まるで天岩戸神話をなぞるかのような物語を展開しています。

天岩戸神話では天照大御神が天岩戸に閉じ籠ることで世界が闇に包まれますが、外で踊り騒ぐことによって天照大御神に興味を持たせ、外を覗こうとしたところを引っ張り出して闇を払います。

ソルベット王国編でアリシアをキスイダツカイア等の嘘で騙して踊らせる行為は卑怯に感じられますが、何故その様な話になっているのかと言えば、天岩戸神話の騙し討ちのような話を元に作られている為と考えられます。

さて、ここまで述べた通り「アイカツフレンズ」では作り話が多く取り入れられている訳ですが、それらを通して何を描きたかったのでしょうか。

インタビューで語られていないことから想像する他にありませんが、作り話を越えてしまうような奇跡を起こす話を描きたかったのではないかと私は思います。実際にそうした話が多く描かれています。

例えばメチャウマイダケ。その始まりはエマの吐いた嘘でしたが、その話を信じたみおが図鑑で詳しく調べる過程でメチャノドニキクダケの存在を知り、それが後に喉を痛めたあいねを救うことになります。

かぐやの世紀の大発見も始まりはその場を逃れる為の嘘であり、そこから更に嘘を重ねて紆余曲折を経た後、本当に歴史的な宝を見つけることになります。

そして物語で重要な役割を持つラブミーティア物語。そこで語られるエピソードはみおの行動に影響を及ぼしているのですが、ご存知の通りラブミーティア物語には作り話が書かれています。

そのことに気が付かないまま捏造されたエピソードを道標にした結果、みおは衝撃的な告白やクリスマスプレゼントを送るなどラブミーティア以上の伝説を残すことになります。

トップアイドルの背中を追う話は過去作品と共通していますが、虚実混交のトップアイドルという一種の幻影を追っているという点では異なると言えるでしょう。

視聴者視点では作り話を信じるみおの行動は滑稽に映るかも知れません。けれども真か嘘か関係なく、純粋に信じて前に進み続ける姿勢は称賛されるべきものでしょう。ラブミーティア物語に背中を押された彼女は、長年の夢であったダイヤモンドフレンズの座を掴み取ります。

 

人の心を動かす作り話

たとえ作り話であったとしても人の力になる。ラブミーティア物語が担っていた役割は上記の内容になりますが、それは子供に夢を与えてきたアイカツシリーズというフィクションに当てはまる話でもありますよね。

アイカツフレンズ」が作り話を描いてきた理由は最後まで不明でしたが、カレンの台詞で表現されているように作り話の持つ力を肯定的に描写する作風は「アイカツ」や「アイカツスターズ」を含めた数多の物語の肯定になっていたと思います。

カレン「こういう素敵な嘘は大好きですよ。」

 

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