青髪のヒロインは不遇で幸が薄い。ネットではそんな風に囁かれています。この間も田中将賀さんがキャラデザを担当した青い子は、恋が実らない可哀想なキャラしかいないのかと言われていました。そうではない例を挙げれば枚挙に暇がありませんが、火の無い所に煙は立たぬもの。青髪のヒロインには幸が薄いというイメージを抱かれるだけの敗北の歴史があります。
青の行く手を遮るピンク
メインヒロインのイメージカラーはピンク系統、サブヒロインのイメージカラーは青系統。それはラブコメや魔法少女におけるお約束的なデザイン。ピンクと青の元祖は突き止められていませんが、85年に放送した「ハイスクール!奇面組」と「ダーティペア」では、その存在が確認されています。
これより前の作品になると74年の「「魔女っ子メグちゃん」のメグとノンになるでしょうか。思い切って戦前まで遡れば一応「泣いた赤鬼」の赤鬼と青鬼がいますね。
赤鬼を人間と仲良くさせる為に、憎まれ役を演じる頭の切れる青鬼。メインヒロインの引き立て役に選ばれるサブヒロインと似た所はあるかもしれません。
ピンクと青は男が絡まない作品では仲の良いコンビになれるのですが、男が絡む作品では恋人の座を奪い合うライバルとなり、その場合はサブヒロインに選ばれる青が必然的に苦渋を味わいます。これこそが青髪のヒロインが不遇と呼ばれる最大の要因。
「新妹魔王の契約者」の野中柚希も「学戦都市アスタリスク」の沙々宮紗夜も主人公の幼馴染と元々は恵まれた立場にいましたが、物語開始と同時に現れたピンクな女に主人公を奪い取られます。
「ハヤテのごとく!」の桂ヒナギクや「ななか6/17」の雨宮ゆり子など、サブヒロインに使われる機会が皆無ではないとはいえ、未だにメインヒロインのカラーとして強い力を持つピンク。ヒナギクと雨宮は髪色がピンクだからという訳では無いのでしょうけれど、一般的なサブヒロインと比べるとヒロインの格は群を抜いて高く、雨宮はメインヒロインを差し置いて恋人同然の関係まで築きました。
やはりサブヒロインと言えどもピンクは油断ならないですね。青が勝率を上げる為には強敵のピンクが出て来る作品に顔を出さないこと。十中八九負けるので淫乱なピンクを相手に真正面から挑んではなりません。
ピンクが青より上に立つ理由
ピンクはメインヒロインに選ばれるから強い色。その様に言い続けてきましたが、そもそもどうしてピンクがメインヒロインの色として使われるのか。その答えは女の子の好きな色ということに尽きるでしょう。企業等の研究によると幼稚園児位の女の子が好きな色の1位はピンク、2位は水色と言われています。ちなみに年齢が上がるとピンクの人気は落ちてきます。
女の子にとって好きな色は自分が身に纏う服やアクセサリーに用いる武装色の認識が強く、ピンクや水色が好きと答える小さな女の子は、その色を取り込んだファッションを好みます。上記の研究結果を受けて「ハートキャッチプリキュア」のようなキッズアニメは、メインキャラの女の子の髪や服にピンクや水色を使用する傾向が見られます。
「魔法のプリンセスミンキーモモ」のミンキーモモは髪がピンク、服が水色。反対に「魔法の妖精ペルシャ」のペルシャは髪が水色、服がピンク。上記の作品群がピンクと水色は女の子っぽいというイメージをさらに強く固め、そのイメージが世間に広まることで男性に向けたラブコメのヒロインにも適用されることになる。
話は逸れますが、男の子にとって好きな色は、女の子と異なり自分を飾る為の道具な訳ではありません。例えば小学生の男の子の好きな色に金色があって、それは金色の折り紙や金色のロボットに対する関心に表れていますが、好きな色だからといって着る服まで金色にするかといえば違いますよね。
男の子はどこぞのギルガメッシュみたいに全身を金ピカにしようとはしません。大雑把に言えば好きな色を女の子は自分の外見に合うかどうか、男の子は強そうかどうかで決めている節があるようです。
その表情を曇らせたい
青髪のヒロインが酷い目に遭わされる理由。青がサブヒロインのカラーである以外に、酷い目に遭わせた時の反応の良さも挙げられます。寒色系の青は落ち着いた印象を与えることから、青髪は赤髪や金髪と比べて理知的、温和、優等生のイメージを持たれており、「美少女戦士セーラームーン」の水野亜美の様に主に頭の回転が速いキャラに使われます。
青髪のヒロインは知的と言えば聞こえはいいのですが、彼女達は頭の良さ故に悩み過ぎるきらいがあるんですよね。俯瞰的に物事を把握する意識が高い為に、自分の中に潜む醜い心にも気が付いて自己嫌悪に陥り、自分の行動が何を招いてしまうのか予想が付くから逆に動けなくなる。
真面目で大人の言う事を聞いたりする良い子な反面、自分の意見を押し殺して胸の内に負の感情を溜め込みやすい。暖色系の髪色のキャラが「考えてもどうにもならないことは気にしない」といった具合で易々と乗り越える逆境も青髪は深刻に受け止めてしまう。
試練を与えて苦しめる程に濃密な物語が展開する性格。作者が精神的に追い詰めたいと思える性格のキャラの髪色に青が選ばれやすい傾向が、青髪のヒロインが不幸と言われる要因にあるでしょう。さらに加えて言えば青はサブヒロインとして登場する割合が高く、主人公補正が効かない所為で与えられる試練の難易度に上限は設けられず、それが不幸度に拍車を掛けます。メインヒロインならどんなに酷い目に遭わされても、最後はハッピーエンドで終わる様な力が働きますが、残念ながらサブヒロインにはそうした安全の保証は有りません。
不幸な青髪のヒロインは恵まれている
世の中には悲劇的な結末しか見ないで「このキャラは作者に愛されていない」と思い込む人がいますが、実際のところ作者の愛故に酷い目に遭わされているキャラは少なくありません。本当に愛されていないキャラであれば、そもそも酷い目に遭う出番すら与えられません。
物語的に報われないポジションのキャラをどうにかしたいけれども、主人公やメインヒロインを蔑ろにして、御都合主義的に話を進めるのは消費者が許さない。悲劇的な結末は作者がキャラと同様に、主人公補正の効かない思い通りにならない世界に真剣に向き合い抗った末に、導き出した答えであったりするものです。時に主人公やメインヒロインより思い入れのあるキャラになっている場合もあります。それは作者だけではなく消費者にも当て嵌まる話。
物語の主人公になれない消費者には、不幸な青髪のヒロインは共感の対象。楽観的に希望に満ちた未来を信じる程の眩しい心を持たず、悲観的に物事を深く考えて自分を嫌いになりながらも、それでも現実から逃げずに前に進み続ける。
そうした過酷な運命を背負わされる青髪のヒロインに惹かれる人は常にいます。ある意味で誰よりも人間的なキャラとして描写される彼女達の魅力は、複雑かつ多面的で本気で語ろうとすれば日が暮れる。アオいいよね。
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