アニメごろごろ

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時代の空気を読んでスカートめくりをしなくなった男性主人公達

 

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槇村香「時代の空気読まんかい!」

セクハラに対して世間の目が厳しくなった平成の時代。「シティーハンター」の連載が開始した昭和の時代と比べて、女性を不快にさせる性的な表現は抑えられてきました。

 

子供の下着は下着にあらず

上の話を聞いて、まだまだ不快な描写は沢山あると思う方も当然いるでしょうが、80年代には「マジカルエミ」や「パステルユーミ」等の女の子をメインターゲットにしたアニメにもパンチラが描かれていました。これ、今ではちょっと考えられないですよね。

昔は小さな女の子のパンツは見えたところでどうということはなく、それをいやらしいと大袈裟に騒ぎ立てる方が変態。72年の「パンダコパンダ」でも、スカートを履いた女子小学生に倒立をさせてパンツを堂々と映していました。それらの時代を基準に考えれば、随分と表現に配慮しているとは思います。

今は深夜アニメが増えて住み分けが進んできたこともあり、「ドラえもん」など昔から続いているものを除けば、キッズアニメでパンチラを目撃する機会は滅多に無くなりました。

女性の入浴シーンなんかもカットされるようになってきたなと「プリティーリズムレインボーライブ」を見ていると思います。それに対して男性の入浴シーンはどうかと言えば、一部の女性視聴者が喜びますし、男性視聴者もネタ的に楽しめているみたいなので、当分の間はカットされなさそうですね。

 

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スカートめくりからラッキースケベ

セクハラは許されないという空気が浸透してきた日本社会。そこに住む人々の認識の変化を受けて、物語も表現が変わってきました。その変化は男性キャラの女性キャラに対する態度にはっきりと現れています。

69年の「ハレンチ学園」、78年の「うる星やつら」、80年の「まいっちんぐマチコ先生」、91年の「GS美神」。この頃は女性に対して故意にセクハラを働こうとする男性が何人も登場しました。

ハレンチ学園」が広めたエッチなイタズラの代表格であるスカートめくりは、エロコメディだけではなく「DEAR BOYS」や「幽遊白書」や「金田一少年の事件簿」といった90年代のシリアスなストーリーものにも使われていました。それもスケベな脇役ではなく、読者に愛されるべき主人公の行為として。

 

昨今の少年漫画ではそれらのサービスシーンは、女性読者を中心に反感を買ってしまうリスクが高い為か少なくなりましたよね。個人的な感覚で申し訳ないのですが、90年代までは女性にちょっかいを出すまではいかなくても、女性に興味を持っている主人公は全体的に多かった印象は受けます。

スポーツ漫画でも「柔道部物語」や「しゃにむにGO」や「SLAM DUNK」等、女の子にモテたいであるとか好きな子に近付きたいといった不純な動機でスポーツを始める主人公がいました。

それでいいのかという気もしますが、スポーツが「巨人の星」や「ドカベン」的な貧乏な生活から抜け出すチャンスになっていないところは、日本全体が裕福になった影響を受けたと言えなくもありませんし、そこはまあポジティブに捉えることにしましょう。

 

さて、00年代に入る頃から主人公は肉食系から草食系となり、積極的に女性にセクハラする場面も減少してきました。しかしながら、消費者のエロを求める心は失われるものではありません。

時代に合わせてクリエイターが自主的な規制を求められる中、エロの需要に応える為にどうするべきなのか。サービスシーンを入れる抜け道を考えた末、多用されることになった表現が不慮の事故によりセクハラをしてしまうラッキースケベでした。

うっかり服を脱いでいる女性の部屋を開けてしまうのみならず、足を滑らせるだけで女性の股間に頭を押し付けるなど、現実では絶対に有り得ない現象まで引き起こす。因果の逆転、主人公はエッチなハプニングから逃れられない運命。

このラッキースケベの発展系として、ラノベでは主人公がヒロインの下着姿を見てしまい、怒り狂うヒロインが決闘を申し込むというお約束も生まれましたよね。

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ところでラッキースケベは表現的に妥協の側面が大きいと思いますが、「To LOVEる」の矢吹健太朗先生といった一部のクリエイターはそうした意識で終わることなく、あらゆる状況からラッキースケベに繋げること自体に情熱を注ぐようになりました。

表現の規制が厳しくなる状況に反発するだけにならず、与えられたルールの中で最善の手を探して楽しめる。エロコメということで低く見られがちですが、矢吹健太朗先生の創作に対する姿勢は素晴らしいと思います。

あの女性の股間を蛇口に反射させ、間接的に描写する等の変態的なテクニックの数々は、後世に伝えていきたいですね。

 

ラッキースケベの罪は裁かれるべきか

ハーレムラブコメを中心に活躍する女性に優しい男性主人公達。女性に不快感を与えない彼等の増加は良い事に思えますが、一方で主人公のラッキースケベに対するヒロインの報復が不快に見えてしまう問題も発生しました。

主人公がスカートめくりをしていた時代であれば、ヒロインが100トンハンマーで思いっきり殴ったとしても、それはまあ主人公の自業自得という風に軽く流せます。

けれども、ラッキースケベの場合は主人公に悪気が無い訳ですから、そこでヒロインが怒り狂って殴り掛かれば、ヒロインの方が逆に悪者に見えかねません。

 

ヒロインが主人公に守られる非力な存在である時は、理不尽な暴力も愛らしく思えるかもしれませんが、近年は主人公と同程度の戦闘力を有しているヒロインが増加傾向。そんな人達から攻撃されるとシャレにならないですよね。

どこぞの時代劇に登場する気の短い侍ではあるまいし、裸を見られた位で即座に斬り殺すような真似は止めて頂きたい。数十年前は主人公のセクハラへの制裁であった暴力も、今ではヒロインに対する不快感を無駄に上げるばかり。男女平等と体罰禁止の意識が高まる時代に合わなくなってきたように思います。

その空気をクリエイターも感じ取っているのでしょう。ヒロイン達の暴力や暴言で注目を集めていた「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の伏見つかさ先生は、新作「エロマンガ先生」ではヒロイン達の言動を柔らかくしました。

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ジャンプで連載中の「ゆらぎ荘の幽奈さん」でも「ぼくたちは勉強ができない」でも、暴力的な女の子がメインヒロインの座から外されているあたり、流行の変化を感じますね。

ゆらぎ荘の幽奈さん」の湯ノ花幽奈の場合は、ラッキースケベされて動揺するとポルターガイストを起こして暴れる設定。本人に敵意は全く無い上にポルターガイストで主人公を攻撃してしまったことに対して逆に謝ります。本当に優しくて良い子ですよね。

個人的には安易に暴力を振るわないヒロインの方が好きなので、この傾向は嬉しく思っていますが、そのうち振り子の様に反動が来そうな予感。

主人公のラッキースケベを裁く者がいなくなり、ただただラッキーな目に遭うだけになれば、あまりにも男性に都合が良すぎます。それは許されないという空気になれば、ラッキースケベまで禁止される日が訪れるかもしれません。

そうなった時にクリエイターは、一体どの様な手段でサービスシーンを入れていくのでしょうか。エロは表現の自由と規制の対立の最前線に立っている分野、どこに向かっていくのか注目しています。

 

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