アニメごろごろ

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ジャンルの境界線を越えて様々な作品と出会う契機を与える虚淵玄

物語の価値は何か。物語は時に新しい知識を身に付けさせ、時に他者の気持ちを考える力を育て、時に退屈な日々に刺激を与える役割を担います。「魔法少女まどかマギカ」で知られる虚淵玄さんの価値は何か、それは新たな物語に出会える切欠を作る事にあります。

世の中にはSFにミステリにホラー、漫画に映画にドラマと娯楽作品が沢山存在しますが、大半の人達はその一部にしか接する事はありません。それらに実際に触れて見れば面白いと感じられるかもしれませんが、機会が無ければ自分の好きなジャンル以外には手を伸ばせないものです。エロゲにアニメに特撮に小説に人形劇まである虚淵作品は、そんな人達が新しいジャンルに接する為の入口として役に立ちます。

虚淵作品を通して様々なジャンルに対する距離を縮めて、それまで避けていたものに手を出せるようになれば傑作に出会える確率も上昇しますし、もしかしたらそれで人生が変わる程の出会いがあるかもしれません。それまで縁の無いジャンルに出会わせる事が出来る作家は傑作を生み出す作家以上に稀有な存在ではないでしょうか。

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実体験として虚淵作品はオタク的なものに関心の薄い層にアニメや特撮を勧める時には非常に便利で、アニメも漫画も殆んど見ない40代にも受け入れられました。まず最初に勧めるのは超有名作品「踊る大捜査線」で監督を務めた本広克行さんと虚淵さんが組んだ「PSYCHO-PASS サイコパス 」。圧倒的な知名度を持つ「踊る大捜査線」の存在がアニメを子供やオタクの娯楽と感じている層の偏見を破るのに効果的。

グロがある点で見る人を選んでしまいますが、「コードギアス」や「涼宮ハルヒの憂鬱」みたいなオタクが好む萌え要素が無いおかげで、アニメを殆んど見ない初心者にも勧めやすいです。「攻殻機動隊」の様に難解で気楽に見たい視聴者を置いていかない点も好印象。

そこからアニメに少しずつ慣れさせる為に「翠星のガルガンティア」や「Fate/zero」、虚淵作品以外も幾つか紹介して受けが良ければ「魔法少女まどかマギカ」に挑戦させてみます。「まどマギ」は題材が小さな女の子が見るような魔法少女もの、顔の輪郭がホームベースと揶揄される癖の強いキャラデザ。

アニメ初心者には拒絶反応が出そうな作品なんですが、これを虚淵作品では最も人気だからと説得して見せる事が出来れば、現在の主流でオタクが好んで見る類のアニメにも耐性が付けられます。「まどマギ」を見る中で絵柄や題材だけでは中身までは分からないという風に価値観を変えさせると、オタクに媚びた作風ではあるものの評価は高い「ひぐらしのなく頃に」などを紹介する時の難易度も数段下がるんですよね。

まどマギ」でループに惹かれた場合は「STEINS;GATE」や「紫色のクオリア」といったループを題材にした作品を読んで、その次に「紫色のクオリア」の元ネタと言われる「虎よ、虎よ!」を手に取り、ラノベやノベルゲームではない普通の小説に慣れると楽しめる作品の幅はかなり広がると思います。

基本的に子供に向けて作られている特撮は、アニメ以上に勧める事が難しいですが、それも虚淵作品を通せば幾分か楽になります。虚淵さんが脚本を担当した「仮面ライダー鎧武」から入る道が一般的だと思いますが、「Fate/zero」から「Fate/stay night」に進んでバトルロイヤルと自己犠牲型主人公に興味を持たせたところで、その要素を取り入れた「龍騎」と「オーズ」に入る道もあります。

虚淵さんがシリーズ構成で参加した「ブラスレイター」の脚本を担当した小林靖子さん。彼女が「龍騎」と「オーズ」の脚本を主に書いているので、その情報も合わせると関心を抱かせやすいのではないでしょうか。個人的には「鎧武」は劇場版の評判があれなので「龍騎」から入る方を勧めますね。

エロゲに関しては数時間で終わる「沙耶の唄」か「Fate/stay night」をプレイしてもらうのが成功率が高いでしょう。それにしても虚淵さんは本当に幅広い分野で活躍していますよね。好き嫌いの別れるバッドエンドを好むエロゲライターなんて評価をされていた時代があった事が信じられないです。今度は劇場用アニメのゴジラにも参加するそうですし、数年後に朝ドラの脚本を書かされる事になったとしても驚きません。