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同人誌売上から読み解く男性オタクと女性オタクの嗜好と行動

明けましておめでとうございます。冬コミも過ぎ去り懐が寒い時期に入る方も多いと思います。それはさておきコミケが到来すると話題に上がるのが、同人誌は成人向けのいかがわしいものしかないとか、今年はどのジャンルが流行したという話。

オタクに支持されるジャンルに関して、ジャンル毎の参加しているサークル数から分析した記事は幾つか見てきましたが、それらはサークルという供給側の視点であり、需要側の視点は語られていませんでした。それではどの様な同人誌が売れているのかまでは分かりません。

そこで情報が無ければ自分で集めればいいじゃないと思い立ち、とらのあなの同人誌通販月間ランキングを参考に、同人誌の売れ方を様々な視点から考えてみました。これはあくまでとらのあなのデータの分析であり、これだけで同人誌市場全体の傾向を掴めるとは限りませんが、とらのあなは取り扱う同人誌が非常に多い企業、そこそこ信頼に値する結果は得られるはず。


女性向け同人誌月間ランキング100 人気ジャンルのランクイン作品数


女性向け同人誌市場の最大の特徴は一部のジャンルに買い手が集中する事です。同人誌通販月間ランキングの内訳を見ると1つのジャンルだけでランキングの80%を占める月もありました。「黒子のバスケ」がアニメ化した途端に「TIGER&BUNNY」が急に姿を消し、「進撃の巨人」がアニメ化した時には「黒子のバスケ」が今度は姿を消すという風に流行の変化が激しい。最近では「ユーリ!!! on ICE」がランキングの半分程度を占めています。男性オタクと比べて女性オタクの方が周囲に合わせる傾向があるらしく、仲間の間で話題であるとか好きなサークルが描き始めたという理由で作品を見て熱中することは多いみたいです。

ちなみにランキングに入らないだけで委託された同人誌の数はそこまで急激に減少している訳ではありません。下記の去年とらのあなに委託された同人誌の数を見ると何となく分かると思います。旬を過ぎてランキングでは完全に居場所を無くした「進撃の巨人」ですが、それでも委託された同人誌は軽く千を越えました。勿論流行のジャンルを描きたがる人も多いですけど、そうではない人の方が多そうな印象は受けますね。

女性オタクは飽きやすいと言われることもありますが、10年以上も同じジャンルで描き続ける人達も沢山います。女性オタクは絵を描ける割合が高い分だけ二次創作が盛んに行われ、公式から熱意を保つ為の燃料が無くても二次創作でそれを補えるので息は長い。男性向けでいうところの「東方」と似た様な終わる気配の無いジャンルがあちこちにあります。


腐女子に好まれるジャンルが売れる
何度もアニメ化した大人気の乙女ゲーム「薄桜鬼」と「うたの☆プリンスさまっ♪」は同人誌としてはいまいち人気が出ていません。恐らく作品に対して男女の恋愛しか求めていない層が多く、それらはゲームをプレイすれば大体は満たされてしまう為に、同人誌に手を出さない場合が多いのではないでしょうか。二次創作の原動力は公式が満たさない欲求を自分で埋めるところにあるので、消費者の期待に応えて複数の結末を用意しているギャルゲーや乙女ゲームの同人誌は求められない傾向が見られますね。

女性向けではそうした事情から主に恋愛と無縁の少年漫画を題材にしたBL同人誌が圧倒的に売れます。カップリングは主従や親友と関係が深いものほど人気が出ますが、作中でまともに言葉を交わさないキャラのカップリングも熱い。私とあなたは友達じゃないけど、私の友達とあなたは友達、大体そんな感じの関係でも盛り上がる時は盛り上がるものです。

グラフには入れませんでしたが、12年は「イナズマイレブン」と「うたの☆プリンスさまっ♪」、13年は「エヴァンゲリオン」と「K」が各々数冊、14年は「弱虫ペダル」と「鬼灯の冷徹」と「ハイキュー」、15年は「ジョジョの奇妙な冒険」と「血界戦線」が各々十数冊はランクインしていました。

「マギ」はアニメ化する以前から二次創作が盛んに行われていたジャンルなんですけど、不思議な事にアニメ化しても「ハイキュー」や「ジョジョの奇妙な冒険」の様に同人誌は売れなかったんですよね。これ以外にランキングで驚いた事というと「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の赤城×京介本がランクイン、「名探偵コナン」の赤井×安室本が大流行した事は印象に残りました。

去年男性オタクの世界では「君の名は。」と「この世界の片隅に」と「シン・ゴジラ」が話題の中心でしたが、女性オタクの世界ではそれらに加えて「名探偵コナン 純黒の悪夢」も大人気で二次創作が急増。この映画は面白いと評判なのでレンタル開始したら是非とも見て下さい。


プロに比肩する生産力を持つ同人作家
女性向けでは年間に描いたページ数が200を余裕で越える人達が沢山います。女性向けでそれだけの量を描ける人達が多い理由は、単純に同人誌を描ける画力を持つ人の割合が高いことや、頻繁に行われるイベントが創作意欲を維持するなどがあると思いますが、個人的にはキャラに対する愛情を込めた同人誌でも売れることも大きい気がしています。

男性向けはエロを目的に買う層が大半を占める為に、売れる同人誌はキャラの内面を排除して性欲を処理する道具としたものが中心となってしまい、キャラに対する愛情を込めたコメディやシリアスの同人誌ではあまり売れません。女性向けみたいに好きなキャラの心境を丁寧に描写する必要は特に無く、そこに力を入れる位ならエロにページを使う方が喜ばれます。

この作品を詳しく知らない人達でも描けそうな別の作品のキャラと置き換えても成立する内容の同人誌が売れる状況、それが作品への深い愛を持つ人達から創作意欲を失わせる面はある気がします。エロのみを描きたい人達は困らないですけど、それ以外も表現したい人達には辛いところ。同人誌は自己満足で出すものとはいえ、忙しい中で同人誌を出し続ける熱意を保つ為には、女性向けみたいに買い手に絵と話の両方が肯定される場所は必要なのではないでしょうか。

ちなみにランキングにおける18禁の割合は男性向けが80%以上、女性向けが40%から60%、男性オタクのエロに対する欲望は女性オタクのBLに対するそれと同じ位あります。男性オタクのエロさえあればいいみたいな雰囲気は悪い事の様に思えますが、そのおかげで女性オタクみたいに受けか攻めか解釈の違いからファンが対立する悲劇は少ないです。


女性向け同人誌の流行は遅れてやってくる
男性向けでは「ダンまち」のヘスティアがそうであった様に、話題を集めた瞬間から同人誌が次々に作られ売れていき、早ければアニメが終わる前に廃れてしまいますが、女性向けは同人誌の販売がイベントの時期に合わせて行われる為に、アニメが放送されてから数ヵ月後に全盛期を迎えます。

個人的に同人活動が活発化するまでの時間の差はイベントを重視する比率の問題の他に、男性オタクと女性オタクの欲望の方向性も影響している気はしています。女性オタクはキャラとキャラの濃密な関係を重視しますが、それは物語が進んで初めて生まれるものなので、アニメが放送されて間も無い頃には妄想も捗らない。それが同人誌に描き始める時期を遅らせている可能性はあるのではないかと。

現状は男性向けと比べると盛り上がる時期が随分と遅いですけれど、今後女性オタクが好きなアニメが何本も同時に放送され始めれば、女性向けの同人誌も流行と衰退の時期が早まるのではないでしょうか。


男性向け同人誌月間ランキング100 上位5作品


男性向け同人誌市場の特徴は男性オタクがエロを優先にするおかげで、「姉なるもの」や「月曜日のたわわ」など魅力的な女性さえ描ければ、二次創作ではないオリジナルでも十分に通用する事にあります。上記のデータの様に20冊前後のオリジナルがランクインするなんて女性向けでは有り得ません。

こちらも流行のジャンルを描けば売れやすいみたいですけど、同人誌の数も多く競争の厳しさ故に逆に売れない場合もあります。個人的には売りたいなら「ストライク・ザ・ブラッド」など男性オタクからエロ方面で人気はあるにも関わらず、同人誌が少ないジャンルで描いた方が売れる確率は高い気はします。男性オタクの大多数が絵を描けない為に、同人誌が片手で数えられる程しか描かれず、供給不足に陥るジャンルは山ほどありますから。


後から評価された「ラブライブ」と「ガルパン
大人気作品の「ラブライブ」と「ガルパン」は続編や映画が開始してからの方がランクインしています。ファンが増えた事は円盤の売上に表れていましたが、同人誌の売上にもそれは表れていたようですね。

それにしても「ラブライブ」が最初に放送された13年のランキングの上位を見ると影も形も無くて「ラブライブ」なんて本当に放送していたのかと疑問に思えてきます。一期の放送開始から放送終了までに委託された同人誌の数は10冊程度、当時は人気が出るとは考えられていなかったのでしょう。


同人誌は巨乳が受ける
同人誌において巨乳の需要は非常に高く「まおゆう」の魔王に「艦これ」の愛宕に「デレマス」の及川雫に「ダンまち」のヘスティア、普段は人気が微妙なキャラだとしても18禁の同人誌では人気を得る事はあります。

男性オタクの巨乳信仰は強力で18禁の同人誌になると胸が増量されるのは当たり前、中学生で胸が小さいはずのプリキュアもDカップやFカップにされたりするんですよね。胸囲が身長を上回る巨乳を越えた何かを描いた人や貧乳が個性のキャラを巨乳にする暴挙に出る人も稀にいます。


18禁の同人誌には男が欠かせない
女性オタクは親密な関係にある男同士を性的な意味で絡ませようとしますが、男性オタクは百合的な雰囲気を持つ女同士でも性的な意味で絡む展開を望みません。女同士の仲が良い「咲-Saki-」も男が絡む方が売れています。男性オタクは男の存在しない世界で女の子が戯れる方が好きと主張する割には、全体的に同性愛に対する免疫が無い気がしなくもない。

委託された同人誌における18禁の割合に関しては、人気のジャンルに限定すれば女性向けの方が高い傾向は見られますが、女性向けはエロとコメディとシリアスを兼ねる内容が多いので、完全にエロしか描かれない同人誌の場合は結果は変わると考えて下さい。男性向けは全年齢と18禁の境が明確で、18禁は内容がエロに特化していますね。

日常系のアニメは性的な目で見られていない
きらら系作品の「ご注文はうさぎですか?」や「ひだまりスケッチ」には癒しを求めている層が多いのか、これらは人気が高い割には18禁の同人誌が描かれないし売れないんですよね。女児向けアイドルアニメの「アイカツ」にも熱狂的なファンがいますが、きらら系作品と同様に同人誌の需要と供給に関しては小さい。

女児向けアニメの「プリキュア」とアイドルアニメの「ラブライブ」の同人誌が支持されているのであれば、その両方に該当する「アイカツ」も人気が出そうな気がするんですけど、ファン層が微妙に違うのかランキングには入らないです。アイカツおじさんはどうやら「プリキュア」を愛する大きなお友達とは、作品に向き合う姿勢が少々異なる様ですね。

集計したデータから読み取れる事柄は沢山あるので、興味があれば細かい数字も読んで見て下さい。個人的な見解も含まれる為に、記事の方は参考にならないかもしれませんが、データの方は嘘を付かないので役に立つと思います。私のことを嫌いになっても、データのことを嫌いにならないで下さい。

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