アニメごろごろ

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間桐慎二の目から見た衛宮士郎は酷い奴


劇場版を観てから早くも数週間が経ちましたが、間桐慎二の存在が今も忘れられません。以前は慎二を小者で嫌味な奴くらいにしか思いませんでしたが、劇場版を鑑賞してからは本当に慎二がそれだけのキャラなのだろうかと疑問に思い始め、その答えを得る為にゲームをプレイして慎二の言動を振り返ることにしました。

さて、そんなこんなで久しぶりにプレイしたのですが、やってみると慎二と会話する時の士郎の態度が意外と悪く、これは慎二だけが一方的に悪い奴とは言えないなと思えてきました。

それについて考える大前提として覚えておきたいのは、士郎は桜に怪我を負わせた慎二を殴り、それが原因で物語開始時点の慎二と士郎は疎遠になっていること。ちなみにこれだけやらかして、疎遠になってしまったという自覚を持ちながらも、士郎は慎二と違って喧嘩したとは微塵も感じていません。

この士郎と慎二の認識の祖語を押さえておかなければ、慎二が会う度に士郎に突っかかる理由も分からなくなります。それではまずプロローグの士郎と慎二のやり取りを見ていきましょう。


士郎「よ。弓道部は落ち着いているか、慎二」

慎二「と、当然だろう…!部外者に話してもしょうがないけど、目立ちたがり屋が一人減ったんで平和になったんだ。次の大会だっていいところまで行くさ!」

士郎「そうか。美綴も頑張ってるんだな」

慎二「はあ?なに見当違いなコト言ってんの?弓道部が記録を伸ばしているのは僕がいるからに決まってるじゃんか」


弓道部は男女合同で練習していますが、大会はテニス部やバスケ部と同様に男女に別れています。慎二が大会でいいところまで行くと言えば、常識的に考えて男子の話をしていると考えますよね。

それなのに士郎は何故か女子の美綴の名前を挙げて、弓道部のエースである慎二を眼中に入れていません。慎二の腕が立つことを知っているはずなのに、弓道部がいいところまで行けるのは美綴の功績なんて返すのは嫌味としか思えません。

まあ慎二の態度も負けず劣らず悪いのですが、慎二は士郎が弓道部をあっさり辞めたことに不満を抱いていますし、殴られてから関係を修復していないので、多少あれなことについては目を瞑りましょう。


士郎「手伝える事があったら手伝う。弦張りとか弓の直し、慎二は苦手だったろ」

慎二「そう、サンキュ。何か雑用があったら声をかけるよ。ま、そんなコトはないだろうけどさ」

士郎「ああ、それがいい。雑用を残しているようなヤツは主将失格だからな」


最後の一言は本当に必要だったのでしょうか。慎二が弓の直しなどの雑用を残していたら、それは主将失格だと中々に辛辣な言葉をかける部外者の士郎。顧問の先生が釘を刺す意味で言うなら兎も角、まさか雑用があれば引き受けると提案した側から、こんな言葉が出てくるとは。ここで士郎に雑用を頼んでいたら、慎二は士郎から内心で主将失格と思われてしまうのでしょうか。

雑用を残している奴は主将失格と考えている人から、手を貸すような雑用が残されているのか聞かれてしまう。これは遠回しに馬鹿にされていると捉えられてもおかしくないですよね。日頃から不真面目な態度が目に付く慎二に対して、雑用を残さない方が良いと助言するにしても、士郎はもう少し言い方を考えてもいい気がします。こういう余計な一言がついてくるあたり、士郎はやっぱりアーチャーと同一人物なんだなと思わざるを得ない。

ちなみに上記の様な発言が慎二の神経を逆なでしていることは、慎二の表情にはっきりと表れています。何というか士郎が無自覚にイラっとさせるジャブを打つ為に、慎二が不快に感じて距離を縮められないところはあるのではないでしょうか。上記の会話で慎二は自分に気を遣う士郎に一応礼を言ってはいますし、士郎が上手に歩み寄れば分かり合えそうな気はしなくもない。


慎二「やる事もないクセにまだ残ってたの?ああそうか、また生徒会にごますってたワケね。いいねえ衛宮は、部活なんてやんなくても内申稼げるんだからさ」

士郎「生徒会の手伝いじゃないぞ。学校の備品を直すのは生徒として当たり前だろ。使ってるのは俺たちなんだから」

慎二「ハ、よく言うよ。衛宮に言わせれば何だって当たり前だからね。そういういい子ぶりが癪に障るって前に言わなかったっけ?」

士郎「すまん、よく覚えていない。それ慎二の口癖だと思ってたから、どうも聞き流してたみたいだ」


生活費を稼ぐ為のアルバイトを理由に弓道部から離れた人間が、早朝も放課後も学校の備品を直したり生徒会から頼まれた仕事ばかりしている。この会話をしている日も士郎は午前授業を終えてからの数時間、日が暮れるまで一成の仕事をしていました。

弓道部にぽつんと取り残された慎二からしたら、生徒会にごまをするような士郎の行動は特に癪に障るでしょう。生徒会にそこまで手を貸す暇があるなら弓道部を続けて欲しいところ。

士郎は一成が友人だから手を貸しているのですが、それにしても一成から生徒会の仕事を任され過ぎな気はします。士郎を便利屋として利用している点では、慎二よりも一成の方が遥かに酷いんですよね。いくら友人でも一成はもうちょっと遠慮するべきというか、友人だからこそ一線を越えないように相手に気を遣うべきでしょう。

もしも一成みたいな友人が士郎の側に何人かいた場合、各々が少しずつ士郎に頼み事をしたつもりであっても塵も積もれば山となり、それらを引き受けてしまうであろう士郎の身体は、皆が知らないところでぼろぼろになるかもしれません。士郎は頼まれたら風邪を引いていても店番を請け負う男ですから、士郎の人間性を知る者はそれを計算に入れて遠慮することを忘れてはなりません。

その点、人手不足の状況で士郎に3時間も重労働をさせたお詫びに、3万円もの仕事分以上の報酬を渡したバイト先のおじさんは大人。何でも言う事を聞いてくれる便利な相手の好意に甘えません。

自分が本当に大変な時に手を貸して貰えた時には、相手が求める求めないは別として、それに釣り合う対価は感謝の言葉の他に形として返す。金銭で解決すれば済む話ではないものの、この様な思い遣りは社会を生きる上で大切ですから、一成は金銭を払わない代わりにせめて身体で返す位はした方がいいと思います。

閑話休題、ここまで述べた士郎と慎二の会話を見ていると、結構な頻度で士郎も慎二に腹の立つ言葉を返していることが分かります。士郎の感覚では友人ならではの冗談も含んでいるつもりなのかもしれませんが、桜の件で士郎を色々と恨んでいる慎二としては面白くないでしょう。

以前の記事にも書きましたが、慎二は家の事で相当なストレスが溜まっていますから。そんな時に挑発と取れる言葉を返され続けていれば、慎二の不満が溜まり士郎に嫌味を言ってしまうのも仕方が無い面はあります。

まあ基本的に慎二が悪いのは変わらないんですけどね。ただし慎二が士郎を退部に追い込んだという噂話に関しては、完全に周囲が誤解しているだけですから、それについては慎二も気の毒だなとは思います。士郎自身は慎二の言葉で傷ついたなんて全く思わず、身の振り方を考える切欠くらいにしか思っていないので。

ちなみに士郎は慎二との仲を心配する桜に対しては誤解を解いていますが、一成に対しては真相を何も話していません。一成が慎二に対して誤解していることを知っているにも関わらず、それに触れて慎二の名誉を回復させない士郎はコミュ力に問題がある気がしなくもない。

それにしても劇場版は本当に良かったですね。あれが無ければ慎二に改めて興味なんか持たず、一生嫌な奴として捉えていたままだったでしょう。キャラの事を理解する切欠を与えてくれた須藤友徳監督に感謝。

大半のアニメは鑑賞しても感動するかしないかだけで、原作の理解を深める意味では大して役に立たないのですが、須藤友徳監督の劇場版はそれらとは全く異なり、他者の考察や批評と同等の理解度を深める効果を持っていました。アニメ化は一種の祭を作り出して売上を伸ばすだけと言われることもありますが、そうではなくて原作の魅力を再発見させる場でもある。その事を劇場版で強く感じさせられました。

taida5656.hatenablog.com
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