エルザ「勝ちなさい、以上。」
モナコ公国の王女であり、アイドル学校のオーナーであり、著名なデザイナーであり、ハリウッド映画の主演女優でもあるエルザフォルテ。
「アイカツオンパレード」のトップアイドル組の中では、仕事中に失踪も遅刻も乱入も無茶ぶりもしない意外と良識あるパーフェクトアイドル。
音楽用語で「強く」を意味する「フォルテ」の名に相応しく、設定上では恐ろしい程に強くはあるのですが、その一方で人格面では不完全なものとして描かれていました。その所為か非常に賛否の分かれるキャラであったと思います。
オーラを感じさせないアイドルに興味を持たず、草花を剪定するように人気最下位の生徒を退学させる。そうした非情な一面を持っていますが、冷たいだけの人ではありません。
基本的に厳しく接する相手は、自分と対等な立場であるプロのアイドルであり、スカウト前のきららに代表される社会的な弱者には優しく手を差し伸べています。
きらら「きらら、変なんだって…。」
エルザ「私は大好きよ。あなたのその変、それは花園きららという宝石にしか放てない。」
世の中の埋もれていた才を拾い上げ、美しく咲ける場を与えてきたエルザ。彼女は何気ない毎日が空っぽのような気がしていたレイやきららの扉を開けて、次のエントランスへと導いてきました。
弱者に優しいエルザフォルテ
恐らくエルザの根底にはノブレス・オブリージュの精神に近いものがあるのでしょう。力ある者はそれを最大限に発揮して、社会に貢献する義務がある。
その様に考えている為にアイドル学校に通える程の恵まれた人には相応の実力を求め、才能を秘めている人にはその開花を促すのではないかと思います。
上に立つ者としてアリシア王女が臣下に支えられながら自分の手で民を守ろうとするタイプであるなら、エルザ王女は自分が育てた臣下に民を守らせるタイプと言えるでしょう。
そうして何十人ものアイドルをキラキラと輝かせることによって、それを越える無数の人々の心を動かしていることは、彼女が主催するヴィーナスウェーブを見れば伝わってきます。
エルザ「真に輝くアイドルは見る者の心を打ち、パワーを与えるもの。私は星の様に輝くアイドルを見つけ、皆さんの心に大きなウェーブを起こしたい。」
会場にきららファンの子供が多く招かれ、中継に目を輝かせる子供も描かれていたヴィーナスウェーブ。その勝負の内容はゴージャスと無縁な誰でも楽しめるTシャツのアレンジ。
尊敬する母親が慈善活動に取り組んでいることもあり、エルザが持たざる者にも目を向けている部分は少なからずあると思われます。
生徒の個性を愛する女王の教室
元ネタとされるグレースケリーが植物を愛したように船内で植物を育てるエルザ。多種多様な植物を置いている姿は、ジャスミンやデイジー等の花の名が付けられた生徒に向ける感情にも通じるところがあるでしょう。
エルザの教育は生徒の個性を潰しているといった意見が真昼から出ていますが、実際は生徒の個性について考えており、スクールドレスは生徒一人一人に合わせて彼女がデザインしていることが「フォトカツ」で明かされています。
エルザ「ドレスが私を強くする」
ドレスがアイドルの魅力を引き出す大切な装飾品であることを語り続けたエルザが、それを与える意味を考えると生徒への愛情を感じずにはいられません。
地元では浮いていたきららが自分を好きでいられる訳も、有象無象の言葉をはねのける力を持つエルザが個性を認めてあげていたおかげでもあります。
トップアイドルの地位を維持しながら、ここまで他人を輝かせる為に動けるアイドルは他に見られません。ヴィーナスアーク解散宣言で冷たく突き放したこともありますが、それは自分の夢に皆を付き合わせない為でした。
詳細は語られていませんが、解散を決意した背景には太陽のドレスが手に入らない時、ストレスからレイに冷たくしてしまったこともあるのかもしれません。自分に厳しい人であるからこそ、指導者として未熟な自分を受け入れられない。
エルザ「行き先の定まらない船は危険すぎる。下手をすれば沈んでしまうことも…これ以上、皆に迷惑を掛けることは出来ないわ。」
エルザが嫌われ役を演じてまで捨てようとした花。その花は一度は船を降りることを考えますが、生け花を趣味に持つレイの手で繋ぎ止められ、エルザという太陽の光を再び求めるようになりました。
パーフェクトではない自分を受け入れてくれた生徒の前で涙を流すエルザ。それまで完璧であろうとする為に涙を堪え、母の前でも他の人には涙が見えないように顔を伏せていた人が、顔を背けることなく涙を見せる。それはきっと心を開いた証なのでしょう。
今度は自分の夢の為ではなく、生徒の道を照らす為に輝く。そして、その太陽に育てられた花の力は「ドリームストーリー」で試されることになります。
学園最強が不参加という飛車角が落ちた状態で、星々やダイヤモンドと競い合うネオヴィーナスアーク。圧倒的に不利であろうとも勝つ事を諦めない彼女達が、大会でどこまで美しく咲き誇るのか。先が楽しみです、以上。