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「魔法少女育成計画」密度の濃いストーリーをさらに圧縮する無理難題をこなした江戸屋ぽち先生

魔法少女育成計画 無料漫画詳細 - 無料コミック ComicWalker


漫画版は某所のレビューでは評価がいまいちでしたが、個人的には読んでいて泣きそうになる位に楽しめました。正直に言うとあれだけ画力も構成も上手な漫画版が低評価なのは腑に落ちない。とはいえ原作の完全再現を求めるファンからは不評になるのは非常に分かります。原作小説がルーラ死亡までに100pを消費しているのに対して、漫画は編集者の指示でルーラ死亡までをわずか50pで進めていますからね。

原作小説が本筋には影響しないコメディを途中で何度も挟む作風や風景の描写に何行も費やす作風なら、漫画版はそれらを省略して綺麗に収める事も可能だったのでしょうけれど、残念ながら原作小説は描写が淡泊でウィンタープリズンとクラムベリーの激闘にも4pしか使わない冗長とは縁の無い作風。16人の魔法少女の境遇を描きつつ、6回を超える戦闘を描いているだけあって、平均的なラノベと比較すると圧倒的に展開が速い。

漫画なら3巻を超えて当然の内容を2巻に詰め込めば、ファンから不満が出るのは火を見るよりも明らか。あの密度の濃い物語を2巻で完結させろなんて出版社からの無茶な要求に応えた江戸屋ぽち先生には尊敬の念を抱きます。

江戸屋ぽち先生は実力が高い上に趣味で「魔法少女育成計画」の絵を投稿する作品愛を持っていますし、こういう漫画家に描いて貰えると本当に嬉しい。それだけに2巻で完結したのが悲しい。アニメ化まで行ける人気の作品と実力も熱意もある漫画家、その組み合わせで3巻を出さないのは商売的に勿体無いなあ。

ちなみに漫画版は急激な圧縮に伴う変更点が多い事に加えて、漫画に適した見せ方にする為に改変した場面、原作小説には見られないオリジナルの展開が多数含まれています。ハードゴア・アリスが窮地に立たされる場面とスイムスイムとミナエルの相手を捕まえる技には唸らされました。原作小説を読んだ時にはスイムスイムとミナエルの魔法は自分が逃げる事と隠れる事に適してはいるものの、仲間に肉の壁の役割を求めるルーラの期待には応えられない類の魔法に感じていましたが、ああいう使い道が可能ならルーラの目の前の相手に言う事を聞かせる魔法が輝ける時代もあったかもしれません。まあ実際にはルーラは早々に脱落しましたが。

こうしたオリジナルの要素は読者によって好き嫌いが分かれる部分ではあると思いますが、個人的にはこうした漫画家の個性が出る方向性の方が好きですね。原作の再現を目的にした漫画に価値がある事は疑う余地が無いとはいえ、その手の漫画はアニメが傑作になると存在価値が下がる問題を抱えています。

漫画にはコマの形状変化による緩急の付け方など独特の魅力がありますが、単純に考えてアニメの方が色に音に動きと情報量が多いですからね。集団の力で作られたアニメと個の力で作られた漫画、作り手が原作の再現を重視して個性を消せば、数の力でアニメの方が魅力的に見えてしまいやすい。個人的に「涼宮ハルヒの憂鬱」と「ソードアート・オンライン」はアニメを見れば漫画は要らないと感じるんですよね。そういう事もあるのですが「魔法少女育成計画」の漫画はアニメの良し悪しによってその価値は揺らぎません。

漫画版は巻数の少なさ故に描写が不足して性格が伝わらない魔法少女も何名もいますし、情報量は原作小説と比較して物足りなさはあるでしょう。けれどその代わりにスノーホワイトリップルの心理描写は丁寧に描かれ、原作小説では淡々と描かれた魔法少女の散り際もドラマチックに演出されています。終盤のスノーホワイトリップルの会話の演出は素敵なので、漫画を読もうかどうか悩んでいる方には是非とも読んで欲しい。

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