アニメごろごろ

楽しんで頂けたらツイートなどしてもらえると喜びます。

「ダンス・マカブル 西洋暗黒小史」歴史上の人物から学ぶ拷問器具と処刑法


中世ヨーロッパの人物や拷問器具や処刑法について解説している堅苦しい書物は沢山世に出ていますが、「ダンスマカブル」みたいにその両方を描いた漫画となると滅多に見られるものではありません。この作品は絵も綺麗で読みやすいですし、歴史上の人物と拷問器具と処刑法についての多少の知識も得られて、物語的にも普通に面白いと思えるものなので、エロやグロに抵抗さえなければ読んで損はないです。

読者は拷問や処刑を受けた経験が無い為にそれらがどの様なものなのか、教科書的に文字で説明されるだけではその惨たらしさがいまいち分からないものですが、感情移入しやすい物語形式でそれらを受けて苦しむ人達の姿が描かれるとその痛みを多少なりとも想像する事が出来ます。専門書と比較すれば内容的には薄いのですが、この効果を持つのは漫画ならではの強みですね。

1巻はジャンヌ・ダルクとカリグラとエリザベート・バートリーとイエス・キリスト、2巻はジル・ド・レとシャルル・アンリ・サンソンが登場する短編集となっているので、どちらを先に読んでも楽しめる作りになっています。個人的には読むのであれば2巻から手に取る事をお薦めします。

2巻はエピソード数が少ない代わりに1つのエピソードに割かれているページ数も増えているので、その分だけ心理描写等が丁寧なものになって物語の深みが1巻の頃よりも数段上がっています。死刑執行人という汚れ仕事をさせられ差別的な扱いも受けたサンソンの苦悩が語られている場面は読んでいて胸が痛い。死刑執行に罪の意識を感じられるサンソンはこの作品の良心。

作中に登場するのが殺し合いを見世物にする、村娘を勝手に魔女だと決め付け退治する見返りに金銭を要求する、ジャンヌに似ている少年を殺して凌辱するなど、残虐で狂気しか感じられない頭がおかしい連中ばかりなのに対して、死刑にされる女性にも気遣いを忘れず紳士的に接するサンソンには癒されました。

大西巷一先生は拷問と処刑を題材にした「ダンスマカブル」といいフス戦争を題材にした「乙女戦争」といい、他の漫画家があまり手を出していない分野を掘り出して、誰にでも分かる様な取っ付きやすい形にして広める稀有な才能の持ち主。大西先生の作品は過激な描写もあるから小学生に読ませるのは躊躇してしまいますが、内容的にはためになりますから歴史を学ぶ導入書として後世に残したいと思えますね。

歴史が学べるエロくないエロ漫画「快楽ヒストリエ」 - アニメ見ながらごろごろしたい

「辺獄のシュヴェスタ」残酷な世界で問われる人間らしい生き方 - アニメ見ながらごろごろしたい