アニメごろごろ

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「SHIROBAKO」が残した3つの功績

SHIROBAKO」の最終回見終わりました。アニメ業界を舞台に仕事に目標が無い宮森あおい、仕事を続ける自信が無い安原絵麻、望んでいない仕事をする藤堂美沙、仕事すら貰えない坂木しずか、学生でまだ仕事も始めていない今井みどり他大勢のキャラが繰り広げるドラマがこれで終わりだと思うと寂しいですね。
SHIROBAKO」はアニメ業界ものの物語として面白いのみならず、アニメ業界や私達視聴者に様々な影響を与えた作品だったと思います。


社会人が主人公でも売れる
日本のアニメはバトル、ロボット、ラブコメとあらゆるジャンルで中学生や高校生が主人公になっています。これが多い理由としてはその方が子供は親近感を抱きやすい、大人は学生の生活に懐かしさや憧れを感じる、文化祭に修学旅行に合宿やらイベントが多いから物語が作りやすい等々挙げられます。

簡単にまとめてしまえば、その方が視聴者を楽しませられる作品になるからです。もっと言えばそれが利益に繋がる為に主人公に学生が多いのではないかと。何千何億もの大金が動いているアニメでは売れる見込みの無い作品をそうは作れませんから無難な道を選びやすい。

そんな状況で社会人を主人公にした「SHIROBAKO」が成功したという事実は、今後社会人を主人公にした作品の企画の通過率にも影響するのではないでしょうか。まあ「SHIROBAKO」のヒットは題材がアニメである事が大きいので、これに続き第二第三の社会人ものが作られるのは難しいかもしれませんが、それでも少しは何かを変える切欠にはなると思います。


アニメ業界の闇を暴いた
歴史もの、スポーツもの、戦争ものといった現実と関わりのある分野では、その分野に精通している視聴者が作品に影響されて自分の経験や知識を語りたがるもの。「SHIROBAKO」の場合はアニメーターや製作進行や原作者といった立場の人達が反応し、仕事で出会った酷い人間の話、原作者は余計な口出しをして邪魔なだけといった話と様々な事柄がツイッターで語られました。普段であれば限られたフォロワーにしか興味を持たれず伝わらなかったであろうアニメ業界に関する呟きも「SHIROBAKO」放映中は関心を持たれ大勢に拡散される事になりました。

SHIROBAKO」で語られたアニメ業界の話は一部に過ぎませんが、それを観た業界関係者が語り出すという副次的な効果により、視聴者は良い情報も悪い情報も含め容易に摂取可能になりました。それらの情報は主観的なものなので虚実入り雑じっていますが、アニメ業界の事を知って貰うという意味では「SHIROBAKO」は十分成功したと言えるでしょう。


アニメ制作者の苦悩を教える
SHIROBAKO」では仕事の期限を守らないアニメーターがいたり、原作側からキャラデザの作り直しを要求されスケジュール通りに行かず何度も万策尽きかけますが、そんな中でも皆各々身を削りながらアニメを完成させます。そんなキャラの姿に感情移入した視聴者はアニメ制作の大変さを知り、今後安易に制作者を批判する事が多少なりとも減るのではないでしょうか。

現実のアニメ制作者も宮森や木下監督みたいに板挟みになり苦労はしていると思えば、批判するにしても謙虚さが僅かながら生まれるはずです。感情移入しやすいキャラを通じて自分とは別の立場の人間の心を理解する為の想像力を育てる。

例えば戦争映画なんかだと敵国や上層部や現場の兵士等の様々な視点から物事を描き、視聴者の視野を広げて悪い奴は誰だとかそんな単純な価値観では図れないものがある事を伝えます。教科書的に淡々と描かずに主人公等の感情移入しやすいキャラの視点を通じて、その事を体感的に教えられることこそ物語の持つ重要な機能であり、「SHIROBAKO」はそうした他者に対する想像力を育む役割を果たしていた事でしょう。