アニメごろごろ

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「Re:ゼロから始める異世界生活」のここが魅力

前回書くと宣言していた作品の魅力についての記事です。「Re:ゼロから始める異世界生活」について既存のループもので例えるとするなら、テーマは「マブラヴオルタネイティヴ」、ループの使い方は「ひぐらしのなく頃に」。

主人公スバルが困難にぶつかり何度も打ちのめされながら精神的に成長していき、様々な人達と出会い支えられながらヒロインであるエミリアを守る為に戦う。ループを用いて登場人物達が凄惨な最後を迎える姿を何度も何度も見せて、読者に衝撃を与えると同時に謎解きの手掛かりを少しずつ残していきます。グロと欝展開に謎解きも入れた主人公達の成長物語。「Re:ゼロから始める異世界生活」の作風について簡単に説明するなら大体そんな感じです。

マブラヴ・オルタネイティヴ(通常版) - PS3

マブラヴ・オルタネイティヴ(通常版) - PS3

ループもので描けるものを可能な限り取り入れる
最初の方で述べた事と関係しますが主人公やヒロインが惨い死に方をするといった演出は、死を無かった事に出来るループものならではのものですよね。あらゆる出来事をループで消してしまえるからこそ、取り返しのつかないような過激な展開を幾らでも入れられる。「リゼロ」ではその特性を活かして大切な相手が自分の所為で死ぬとか、好意を抱いていた相手から殺されるといった展開が結構多いです。

作者の鼠色猫さんはそうした悲惨な死を描いてスバルに絶望感を与えるだけでなく、ループする中でスバルに己の無力さを嫌という程実感させたりと様々な方法でスバルを追い詰めます。本当にありとあらゆる方法でスバルを追い詰めて叩き潰そうとするので、読んでいて暗い気持ちになることは間違いない。

時間を戻す為のトリガーが自身の死という設定の時点で大分重いですからね。そのうちスバルが守りたいものが本当はエミリアではなく嫉妬の魔女だったとか、全ての元凶はスバルだったとかそれくらいの絶望感を与えてきそう。

少し話が逸れましたがそうした過激さだけが売りではなく、前に進む為に何度も死んでいるスバルならではの価値観が台詞や行動に表れている部分も見所。死に戻りをすれば何とか出来ると考えているので、顔見知りが死んでもそこまでショックを受けないとかですね。

他にも死に戻りをする前提で行動すると決めていても大切な人は可能な限り傷つけたくないと思うなど、ループしている者ならではの行動が描かれているのが素晴らしいです。これは非常に大事なところだと思います。展開的にはベタなものであっても、そこにそのキャラならではの行動がちょっとあるだけで面白さは全然違ってくるので。

ループを繰り返し何十回と悲劇を経験しているという事実のみをただ書くのは簡単ですが、それをキャラの思考や発言にまで組み込むのは作者にかなりの技量が求められるでしょうね。こういうキャラの経験が行動に反映されることの積み重ねが、キャラを生き生きとさせて実在感やオリジナリティを作り出すのかもしれません。


文脈不明の台詞と魅せる文章
この作品の特徴として構成がしっかりと練られているからこそ、初見では意味が分からない台詞が沢山あります。どういうことかと言うと、ある台詞を読んだだけでは大した情報は得られないのですが、その後の展開やらを知った上で読むと得られる情報量が変わるということです。物語が進んでいきキャラの持つ過去と背景が明かされて、初めて台詞に込められた真意が見えるなんてのも珍しくありません。

「リゼロ」ではキャラ設定がかなり細かいところまで作られていて、そのキャラが作中でどういう役割になるかも恐らく考えられています。そうやって作りこまれているキャラの台詞の中には、何気ない一言であってもそのキャラならではの深い意味が込められている場合もあるので、本当に理解する為には読み返すことは必須です。ベアトリス関連は読み返すと印象が違ってきます。事情を知らなかったからとはいえ今見ると結構酷い事をスバルはベアトリスに言っていたりしますね。

「リゼロ」の文章は小説家になろうの中ではかなり凝っていて、文章表現で魅せようという意志が感じられます。小説家になろうではそれまで小説をまともに書いたことがない利用者も多いからか、初心者でも比較的簡単に書ける地の文が口語体の作品が数多く見られます。

主人公の主観で書かれたこの手の作品は、読み易い代わりに表現自体はそこまで魅力的ではありません。「物語シリーズ」の西尾維新のように言葉遊びが凝っていたりすれば別ですが。まぁそれは置いといて、とにかく小説家になろうでは台詞や展開で魅せる作者は多いのですが、地の文で魅せる作者はかなり少ないです。

こうなるのは作者の筆力の問題だけでなく、読者の多くがそこに興味を持たないというのが要因にあるのでしょう。そんな中で鼠色猫さんはやたらと凝った文章を書いています。人によっては冗長と感じるかもしれませんが、自分の好みと合致した時の物語へと惹き込む力は凄まじいものになります。
個人的には「第三章60 ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア」や「第四章65 雪の中の熱情」あたりが好きです。


結構頑張って書きましたが、こんなのを一体何人位が読みますかね。余談ですがスコッパー速報の記事を見ていたら「書籍化するならスバルの性格と物語が長過ぎるのを何とかした方がいい」という意見が幾つもあって成程なと思いました。その2つで挫折する読者は無料で読める現時点でも結構いるらしいので、商業作品として出すなら変えてくるのかもしれません。