アニメごろごろ

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「アイカツスターズ」世界をリアルに映し出す伊藤良太演出回

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アイカツスターズ」では21話、37話、49話、88話の絵コンテと演出を担当した伊藤良太さん。その演出の特徴として、世界の隅々まで丁寧に描写することが挙げられます。

一般的にアニメは主人公の物語を切り取って見せる為、それ以外の脇役の活躍は溢れ落ちやすいものであり、風景の一部の様に扱われることもあります。

但し、脇役の物語はアニメで描かれていないだけであって、作品世界に存在していない訳ではありません。そういった普段は見えない所に目を向ける点が、伊藤良太演出回の魅力にあります。

 

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主人公になれない脇役の物語

49話のBパートにあるS4戦後の日常を切り取ったシーン。ゆめ達の台詞が流れる中、歯みがき、朝食、ストレッチ、ランニングをする生徒達が止め絵で描かれます。新たなスタートを迎えるのは、ゆめ達だけではないことが伝わってきますね。

主人公であるゆめ達の姿が眩しい為に霞んでしまうけれども、四ツ星学園にはまだまだ沢山の星がいる。その事実を視聴者に思い出させてくれる演出でした。

Aパートにあるひめ先輩のステージ中、ゆめを含めた歌組の生徒達が次々に映される演出に関しても、上記と同様の意図が込められていることが言えるでしょう。

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ひめ先輩の「スタートライン」に込められた想い。それはメインキャラであるゆめ、ローラ、リリィに留まらず、名も無き歌組の1年生達にも向けられています。

「スタートライン」が彼女達の胸に刺さる様子を映してこそ、ステージ前にひめ先輩が誓った「皆に道を示せるように、今日は私が一番輝く星になる」の意味も強まります。

伊藤さんは「アイカツスターズ」の初演出回が、1年生のCDデビューを賭けた21話でしたので、そうした事情で彼女達の出番を増やしてあげたかった側面はあるのかもしれません。

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先程まではアイドルに話を絞りましたが、伊藤さんが目を向ける対象は一般人も含まれています。37話のステージ後に映されているのは、仕事が大変で外に出る暇も無く、カップ麺で食事を済ませる女性の姿。

相当疲れていたらしく、クリスマスライブをパソコンの画面に映したまま眠ってしまいました。彼女は最後まで視聴が出来ませんでしたが、疲れた心をリフレッシュする時間位は得られたことでしょう。

クリスマスライブの目的であった「お店や会社で働いている人達にも楽しんでもらいたいんです」が、少しだけ叶えられた名シーン。こちらは琴線に触れた大人も多かったのではないでしょうか。

 

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映像で表現された無音のドラマ
あこがボケ、真昼がツッコミ、ローラが笑う。49話の愉しげな声が聞こえそうなシーン。ローラ達は口を動かしていますが、実際にはゆめの独り言が聴こえるのみで、他の人は一言も台詞を発していません。要するに脚本に存在しない会話なんですよね。

同様の演出はクリスマスライブ後のゆめとすばるの会話中にもあり、そこでは脚本上の台詞は与えられていないものの、かなたの発言に不満を口にするあこの姿が描かれていました。

物語的にはあってもなくても支障が出ないシーンであり、絵を動かす分だけ仕事は増えますが、そうした個性を表現した描写が積み重ねられるおかげで、視聴者はキャラをよりリアルに感じられるようになります。

この様な華やかな世界の裏に隠れてしまう日常を拾い上げ、視聴者に可視化してくれることが、伊藤良太演出回の魅力にあると思っています。

 

さて、そんな伊藤良太さんが冬コミで頒布された「曇りノチ、シダイニ晴れ」。有莉のCDデビューの裏で何が起きていたのか、アニメの空白を埋めてくれる最高の有莉リリ本となっています。書店委託を予定されているそうなので、幹部ファンは手に入れることをオススメします。

 

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