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「アイカツスターズ」エルザフォルテの歌に込められた慈愛

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道を照らす一番星と太陽

アイカツランキングを制する者はアイドルの頂点に立つ。決勝ステージでエルザフォルテが選んだ曲は「The only sun light」。対戦相手の虹野ゆめが歌った「MUSIC of DREAM」の対と言える曲であり、その歌詞にはエルザの生き様が表れていました。

MUSIC of DREAM 

「追いかけてくる光を導く人になれ」

The only sun light

「追いかけてきてもっともっとbabe 道を照らしてあげるわ」

ゆめもエルザも道を照らす光であることは変わりません。ただし、ゆめはまだ見ぬ私のことを信じてくれる人へ、エルザはbabeへ向けて歌います。

歌を届けたい世界中の人達をbabe(赤子)と表現することから窺える様に、エルザと彼等の関係は対等というよりも親子に近く、そこには上に立つ者として弱き者を庇護する意思が感じられます。

エルザはパーフェクトマザーのユキエを尊敬しており、自分にとっての母親が偉大な人物であるように、人々にとっての自分もそうでありたいと考えているのでしょう。

MUSIC of DREAM

「きれいな夢に疲れたなら思い切り声をあげて泣いてみようよ」

「間違いを知らなければ本当なんて見えない 弱さを隠す理性は捨ててしまえ」

1年生の頃は何度も涙を流していたゆめ。彼女の軌跡が語っているように、夢に向かって突き進むことは楽しいけれど、心が折れそうになる時もあります。

人によっては涙を流すことが、否定すべき弱い姿に映るかもしれません。しかし、ゆめにとってはそうではありません。彼女はライバルのローラと共に涙の数だけ成長してきました。

成功も失敗も、喜びも哀しみも、大好きも大嫌いも、全部を含めて本当の自分。不思議な力に頼ることなく、ありのままの自分を受け入れて一歩ずつ進んできました。

ひめ「泣いても笑ってもいい。沢山の経験をしてもっともっと輝いてね」

綺麗な夢に疲れて泣いたとしても、また立ち上がればいい。導いてくれる先生、共に戦ってくれる仲間、応援してくれるファンに支えられながら、いつか太陽に追い付き完璧へと辿り着こうとする。ゆめのアイカツは道に躓いても終わりません。f:id:taida5656:20180917192853j:plain

そんなゆめとは対照的に、完璧であろうとするエルザ。歌詞には枯れることなんてない、いつも変わらず、輝き続けると不変を意味する言葉が使われています。

The only sun light

「選ばれた笑顔でいつも変わらず立ち続けているから運命のステージ」

「Everybody hear me nowこの声で輝き続けるの」

パーフェクトエルザの名で呼ばれる彼女は、世界中の皆が憧れる存在である為に、決して立ち止まることなく、弱気も理性で隠し通します。

厳しすぎるアイドルこと如月ツバサと同じく、エルザも自分に対して厳しいアイドルであり、アイドルは1人でステージに立てなければならないという価値観の持ち主。迫ってくる孤独なんかじゃ止められない。

 

パーフェクトアイドルと完全無欠先輩

ところで、記事の本筋から逸れる話ではあるのですが、エルザと対比されるキャラと聞かれて誰を思い浮かべるでしょうか。主人公であるゆめを挙げる人もいるでしょうし、家族と擦れ違う真昼を挙げる人もいるでしょう。

そのどちらも正しい意見であると思いますが、個人的にはツバサもその中に含まれると思っています。スタッフが意図していたことではないかもしれませんが、エルザとツバサは似ている箇所が何点も見受けられます。

自分にも他人にも厳しく、孤独に耐え抜く力を与える為に、生徒達を指導する立場。たかがアイドルと思われないように、プロの意地を周囲に見せつけた者。

エルザのパーフェクトクイーンとツバサのスパイスコードは、どちらも強い心を持つ者が纏うブランドでした。ちなみにエルザとツバサの趣味や特技には、ダイビングとスカイダイビングがあります。 

エルザ「毅然とドレスを纏って突風に立ち向かい、荒波を乗り越えて自分を貫いて欲しい」

アンナ「スパイスコードというブランドは、芯があって何事にも動じず、責任感がある人間が務めるべきだ」

さて、次にエルザとツバサの相違点についてですが、勝負の結果と指導の方針が挙げられると思います。エルザが敗北を知らないアイドルであったのに対して、ツバサは敗北を幾度も味わってきたアイドル。S4になるまでに沢山の苦労を重ねてきました。

そうした両者の歩んだ道の差が、考え方にも影響しているのでしょう。エルザは結果を出せないアイドルに冷たく、チャンスは自分の力で奪い取れという強者の理論を掲げています。

一方のツバサは45話でも57話でも、わざわざ後輩の為にステージの機会を用意しています。自身がひめ達と比べて遅くに開いた花である故か、未熟な後輩の面倒を熱心に見ています。

赤のエルザと青のツバサの生徒に接する態度の差は、そのままヴィーナスアークと四ツ星学園の方針の差と言えるでしょう。アイドル育成を通して、作品の雰囲気に多大な影響を及ぼしたエルザとツバサ。その意味で彼女達は「アイカツスターズ」を代表するキャラであったと思います。

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それでは本題に戻りましょう。「The only sun light」の1番目の歌詞には、迫ってくる孤独に足を止めることなく、ひたすら強く在ろうとするエルザの想いが込められています。強くて厳しいエルザらしさが、見事に表現されている名曲ですね。

ただし「The only sun light」はこれだけで終わりません。後に続く2番目の歌詞では、エルザが手に入れた力で成すことが書き綴られています。

The only sun light

「うつむいてばかりのあなたに届けたいMessage 明日を怖がった今日に伝えきれないFeelings」

俯いてばかりのあなたに向けた深い愛。本編の描写では感じ取り難いですが、エルザが永遠に輝き続ける太陽であろうとするのは、そうした人達の道を照らす為にあります。

それもただ照らすだけではありません。普通なら太陽は夜に姿を消してしまい、朝が訪れるまで空は闇に包まれるものでしょう。けれどもエルザという太陽は、沈んだ後も月を輝かせることによって、人々の道を照らします。

The only sun light

「月のまなざし隠れないように永遠の炎で どこにいたって私がここにいる」

「あきらめないでずっとずっとbabe 朝を彩ってあげるわThe only sun light」

ここでは「明けない夜はない」や「陽はまた昇る」といったぬるい言葉は使われません。朝も昼も夜も何があろうとも、俯いて明日を怖がっている人達を見守ってくれる唯一の太陽。暗い夜にはエターナルクイーンコーデと言い換えられる永遠の炎で月を輝かせます。

相手がどこにいたとしても、エルザはそこにいてくれる。決して離れない様子は、まるで赤子の世話をする母親。歌詞からはエルザが経験した孤独を他の人に与えまいとする意思を感じます。

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本編では生徒を突き放すような独り善がりなシーンばかり目に付きますが、先述した弱い者を慈しむ姿は紛れもなくエルザの本質を捉えています。ヴィーナスウェーブ開催時の発言にもありますが、エルザの目的は人々の心に大きな波を起こしてパワーを与えること。

The only sun light

「Everybody hear me nowこの歌で輝かせたいから」

エルザ曰く、それを可能にするのは真に輝くアイドル。故にエルザはあらゆる仕事に妥協することなく取り組み、世界中の人々が憧れる強く紅い太陽であろうとしています。皆を輝かせたいからこそ、誰よりも眩しく輝こうとする。babeに追いかけてきてと言いながらも、追いつかれないように全力を尽くす。

その姿勢はラストステージとなる「Bon Bon Voyage!」の演出に表れています。サビに突入した直後のコンマ数秒間、エルザから放たれる太陽の形を模したオーラ。ゆめと競い合った後に手に入れたオーラの数々は、虹の色に彩られています。

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ゆめが沢山の人達の想いを受けて力に変えたように、エルザも敗北を乗り越えて己を磨いたのでしょう。言うなれば太陽のドレスを求めていた彼女自身が、ありのままの姿で皆の道を照らせる太陽になった証。

そしてレイ、きらら、アリアのオーラは消え去り、入れ替わりに太陽のオーラに照らされ黄金に輝くバラの花弁が、彼女達を優しく包み込みます。

ゆめとひめの様に共に輝くのではなく、最も強い輝きで皆を照らす姿は、まさにパーフェクトアイドル。脚本と演出が噛み合った最高のステージでした。


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