アニメごろごろ

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「まおゆう」のメイド長のやり方が気に入らない


まおゆう魔王勇者」のメイド長に対しては初登場に悪印象を抱いていたんですが、それは原作を読み終えてアニメを見始めた今でも変わりません。逃亡してきた農奴の事を通報して引き取りに来て貰うというメイド長の対応は、付近の有力者との関係を壊さないためには必要なので、その対応自体が悪いとは思いませんが虫けらだの何だのと罵るのはどう考えてもやりすぎ。

純粋に自分の運命を掴めない虫けらにどうすれば人間になれるかを諭そうとしているのなら受け入れられたんですが、メイド長の場合は農奴みたいな自分では何も出来ない愚かな連中が許せないから罵倒しているんですよね。メイド長が罵倒したおかげで魔王が農奴に同情して、その後の農奴を雇う提案を即許可した部分はもしかしたらあるかもしれませんが、仮にそうだとしてもそれはあの場にいる全員に不快感を与えてまでする事ではないですよね。

あの場面は自分の意思を持たない虫けらでいた経験があるメイド長が、かつての惨めな自分と重なる農奴に嫌悪感を抱いていた為に、攻撃的な態度を取らずにはいられなかったという風にしか見えませんでした。メイド長の過去話を聞いてから、あそこの会話を見返せば彼女の怒りがそこにある事が分かります。

メイド長の粋な計らいでメイド姉妹が雇われる事になったから結果的にメイド長が根は善い人に見えますが、もしメイド姉の察しが悪く「わたしたちを人間にして下さい」と言っていなければ、メイド長は彼女達を虫けらだと軽蔑して追い返していたでしょう。実際メイド長は過去に何度も農奴を追い返しているそうなので、その可能性は高かったと思います。

この自分の運命を自分で掴める優秀な者だけを人間と認めるメイド長の態度はエリート主義的で個人的には好きになれませんね。奴隷や農奴の様に教育も碌に受けていない人達の中には、自分がどうしたら精神的に自立して生きられるのかが分らない人達が沢山います。

そんな人達に「自分の運命を掴む能力がない虫けらは軽蔑する」なんて言っていたら世界は何時まで経っても変わらないわけで、メイド姉が演説していた時の様に誰にでも伝わる言葉で真摯に訴えるか、魔王の様に地道に教育する仕組みを作るのが力を持つ者の在るべき姿だと思います。

かつての惨めな自分を嫌うのは本人の自由ですから好きにすればいいですけど、自分と同じ境遇にいる者を許せないのは精神的に未熟です。そんな他者を許せない不寛容な思想の持ち主が大勢いるから魔王と勇者が殺し合いを続ける世界にしてしまう。

負の連鎖を裁ち切り正の連鎖を起こせなければ、世界は停滞して同じところを周り続け、あの丘の向こうには辿り着けません。最低でも魔王が昔のメイド長に接した時の優しさで、農奴に救いの手を差し伸べなければ話にならないです。その程度の事はメイド長にやる気があれば、いとも簡単に行えるはずですよね。世界を変える為にはそうした自分に出来る事を精一杯やる姿勢が大切だという事が分からないから、メイド長は魔王の意志をメイド姉の様に継げないのでしょうね。