アニメごろごろ

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「アイカツスターズ」敗北と変革を繰り返す桜庭ローラの生き様を見よ


ブレこそ桜庭家の伝統
何代にも渡って歌舞伎役者を輩出した北大路家と違い、音楽に携わる一点を除けば三味線弾き、作曲家、バイオリニスト、アイドルと職業の選択が自由な桜庭家。

その名を誇りに思いながらも、家業の継承に固執して人生を捧げることなく、それぞれ自分の信じた道を進む事が桜庭家の伝統にあるようです。その自主性を重んじる方針は、桜庭七海がS4決定戦でローラに向けた台詞から窺えます。

ローラ「私の生き方が歌になる。ディスイズ桜庭ローラ」


七海「答えを見つけたようね。それでこそ桜庭家の娘ですよ。ローラ」

ローラの実力が桜庭家の名に恥じないものであることは、33話「迷子のローラ!?」の時点で七海も認めていました。しかし、技術面で優れているだけでは、桜庭家の一員として足りていなかったようです。

ローラがゆめに勝てない事に悩んだ末に「オンリーワン!自分しか歌えないうた」を見つけ、勝敗よりも大切な自分の想い全てを歌に込めて伝える。そこでようやくローラは桜庭家の一員として、七海から「それでこそ桜庭家の娘ですよ」と称賛を贈られます。自分で答えを出して道を進んでこそ桜庭家の一員。ゴーイングマイウェイ。

桜庭家の自分らしく新しい事に挑戦するスタイルは随所に感じられ、例えば桜子は日本を発つ人が少なかった明治時代にアメリカへ渡り、花子と太郎は子供に自分達と正反対の日本人らしからぬチェリーの名を与えています。極め付けは家の外装と内装に全く異なる建築様式を取り入れるセンス。


なんということでしょう。まるで家の中と外が別世界に思えてきます。家が大きいなんてありきたりな感想が、一瞬で吹き飛ぶインパクト。全く別の要素を取り入れて、オリジナリティ溢れる住み家にしてしまいました。

家はこうあるべきだという世間の常識に拘らず、好奇心に正直に生きて挑戦する姿勢が感じられますね。この古い考え方に縛られない思想は桜庭ローラにも受け継がれていました。

ローラ「色んなことにチャレンジして、新しいことを発見して、そして少しずつ変わっていく自分が楽しくて」

変わらなければ面白くない。永遠の挑戦者であるローラの言葉からは、変わり続ける人生に対する充実感が感じられますね。ローラの生き様はキラキラと輝いていて、自分も同じ様に生きてみたいと思えてきます。但し、ローラの挑戦が決して楽しいだけの生き方では無い事は、彼女のアイカツを見れば伝わってきます。本気の挑戦には苦悩が常に付いて回るもの。

記念受験的な気楽な気分で受けていれば失敗しても心に傷を負いませんが、負けず嫌いのローラはオーディションでも何でも最初から勝つ気で真剣に挑戦してきました。とはいえ精一杯の努力をしても勝てない時は勝てないもので、ライバルのゆめには何度も負けてきました。

それもCDデビューオーディションなど重要な場面、絶対の自信がある歌の勝負で敗北。それで負けて悔しくない訳がありません。基礎的な能力でゆめに劣っていないにも関わらず、ここぞという大一番で勝てない為にローラは深く悩んでしまいます。

ローラはそうやって悩んで道に迷うことはよくあるのですが、これまで道を大きく踏み外したことはありません。精神的に追い込まれて自分の殻に籠ることもなければ、勝利への執着からオーバーワークして倒れた描写も見られません。その点は立派な長所と言えます。

アイカツスターズ」にはゆめ、ひめ、夜空、真昼、リリィ、ゆず、あこと具合が悪くて倒れた経験を持つアイドルが大勢います。そんな中でローラは睡眠不足から目に隈を作るだけでした。全話通して健康な四ツ星学園のアイドルは、ローラとツバサくらいなものでしょう。

努力家のローラはゆめと小春が部屋で休んでいる夜も走る姿が描かれていましたが、それ程の過酷なトレーニングを己に課しても体調を崩してきませんでした。ローラは体も心も強いアイドル。


沢山の人達から学んだローラ
さて、ローラのエピソードの特徴には敗北と苦悩がありますが、その他に人から教わるというものがあります。担任のアンナ、歌組幹部のリリィ、ジュエルアイスクリームの社長、ロックスターの永吉、マラソンランナーの綾乃、母親の七海など沢山の人に導かれてきました。また真昼には特訓に付き合って貰い、小春にはドレスの作り方で世話になっています。

ローラは自分の信じた道を進むアイドルだからといって、昔の真昼やエルザと異なり孤高に生きて誰とも深く関わらないのではなく、むしろ積極的に人から学んで吸収してきました。

唯一無二の存在するのか分からない幻想の個性を求めず、ゴーイングマイウェイをリリィから教えられた時の様に、人と接して影響を受ける中で自分らしさを築き上げる。過去があるから今がある。

ヴィーナスウェーブではツバサから受け継いだブランドイメージがブレても気にしないという伝統の否定にも思える発言もしていますが、実際には人や物との巡り会いを大切にしてきたアイドルなんですよね。

その姿勢はキャンペーンガール用のめでたいやきを私物化する姿にも表れています。本来は幸花堂の仕事以外で着用する必要は有りません。それにも関わらず、ハロウィンパーティー等の幸花堂と無関係の場でも好んで使います。

今思えば、星のツバサを出現させたロックマイハートコーデのデザイン、既存曲の「Miracle Force Magic」を持ち歌にしていることにも、周囲の影響を受けるローラらしさが溢れていました。


1年以上も昔の話なので忘れられていそうですが、ローラには着てみたい衣装がありました。それは好きなバンドであるメタルドールズの衣装。ジュエルアイスクリームオーディションに頭を悩ませていた時に「こういうの着てみたくって」とゆめに話していました。

この時は普通の衣装でステージに上がり、伏線は回収されないまま終わります。その小さな夢はS4になるという大きな夢の影に何時しか隠れてしまいましたが、それでもローラの胸の奥に想いは残されていたのでしょう。

スパイスコードを愛する自身の原点に立ち返り、その愛をツバサに認められてブランドを受け継いだローラ。彼女が自分でデザインしたロックマイハートコーデ(ロックは私の心)には、赤紫と青紫のカラーリングに左右非対称のブーツなどメタルドールズの血が流れています。


化学反応ひとりじゃ到底生まれないミラク
アイカツスターズ」が2年目に突入してからのゆめ達は、新曲を歌い続けてきました。アイドルですから新曲発表は商業的に当然の行為ではあるでしょう。ところが、ローラだけは1年目の挿入歌に使用された「Miracle Force Magic」を歌い始めます。

何故わざわざ古い曲を歌うのか。ローラがこの曲を選んだ理由は、スパイスコードのミューズを務めたツバサの歌であることが真っ先に思い浮かびますが、それ以外にローラ自身が気に入っている点も理由に含まれていたのではないかと思います。

その根拠はツバサが歌う「Miracle Force Magic」を聞いた時の反応。ゆめと小春がS4による貴重な生演奏に目を奪われる中、ローラは純粋に音楽を楽しむ為に目を閉じ、耳に意識を集中して聴いていました。そこまでする程に自分と音楽の波長が合っていたでしょう。加えて言えば「Miracle Force Magic」の歌詞もローラと相性が非常に合うものでした。

「1+1が無限になってく」


「誰もが見たことのない光景、見にゆく仲間を募集中。きみの力が必要なんだよ、共にゆこう」

「Miracle Force Magic」の歌詞の特徴にある仲間と共に行くおかげで変われたという部分。その言葉が沢山の人達から学び、ライバルのゆめと共に競い合い、成長してきたローラの心を打つのかもしれません。

自分の生き様を歌うのでも無ければ、皆に力を与える為に歌うのでも無く、共に行く仲間に向けて歌われる「Miracle Force Magic」。この曲は進む道が違いながらも同じ志を持ち、励まし励まされて前に進んだローラと綾乃の関係にも通じています。

ローラのファンには以前から綾乃と同じ様に強気で上を目指そうとする女の子が沢山いました。それはローラの歌に込められた生き方が、彼女と同じ負けず嫌いな人達の心に響いたからなのかもしれません。勝負に負けても全力で挑む想いは届く人には届く。

綾乃「あえて逃げないことにした。私も負けず嫌いだからね。負けたくないの。弱い自分に」


女の子「ローラちゃんの歌が大好きで、お歌を習い始めたんだ。ファンだけど、ライバルだからね」

本気で歌ってきたからこそ、ブラックスターから世界に挑戦する機会を与えられ、その縁を掴んで更なる成長を遂げられる。

四ツ星学園から離れてしまいS4の座も諦めることになりましたが、他の人と違う道を突き進むところは実にローラらしく、その姿には「アイカツスターズ」のテーマと言える孤独を恐れない女の子の魅力が詰まっていました。こうして物語全体を通して見れば、ローラはあるべき最後を迎えられたのではないかなと思います。

taida5656.hatenablog.com
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