アニメごろごろ

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「アイカツスターズ」早乙女あこは誰よりもアイドルらしいアイドル


誰の為にアイドルをするのか
登場して間も無い頃の早乙女あこは、M4の結城すばるの言葉を借りて言えば「アイドル失格」でした。すばるの大大大ファンであるあこは、彼に会う為に四ツ星学園に入学。アイドルになりたい動機が自分が輝く為でも無ければ、沢山の人達を笑顔にしたい訳でも無い。アイドルに憧れる大半の生徒とは考え方が異なりました。

バラエティ番組でM4と共演した時はすばるの事しか頭に無く、番組の都合を無視してすばるに関係するトークばかりを繰り返す有り様。大切な観客を喜ばせる意識が欠落していたあこは、アイドルとして他の人より劣っていたと言えるでしょう。加えて言えばゆめに嫉妬して攻撃的な態度を取るなど、人としても未熟な点が多く見られました。

ちなみにあこは仕事に対する姿勢には問題があるのですが、すばるへの愛を原動力に磨かれた技は本物であり、組み分けオーディションではトップ合格、選抜ステージでは同期と比較にならない成績を残しています。

あこが劇組を選んだ訳は特に触れられていませんが、劇組は女優としての仕事の比重が重く、男性と共演する確率が最も高い組なので、もしかするとすばると親しくなりたい一心で、ダンスの舞組より演技の劇組を選んだのかもしれません。

さて、アイドル失格な行動が目に付くあこではありますが、何時までもそのままということはありません。自身の欠点をかなたから指摘され、すばるの為だけにアイドルをしていいのかと問われ、ゆめの真剣に仕事に取り組む姿に影響されて変わります。最初がダメダメである分だけ成長した時の伸び率は大きく、1年目中盤以降の活躍は目を見張るものがありました。

あこは不思議な力の暴走と小春の件で落ち込んでいたゆめを励まし、真昼が高校生に絡まれた時は勇気を出して助ける為に動きます。最初は我儘で自分勝手な行動が目立ったあこですが、成長してからは今迄と反対に仲間を大切に想う姿が多いんですよね。

かなた「そんな事よりフェスに出たのって、やっぱすばるに近付きたいから?」


あこ「それだけじゃありませんわ」


かなた「俺の分析によると、あの子を元気づける為にユニットを組んだ。当たり?」


あこ「そんなことあるわけないでしょ」

例を挙げると、あこはゆめと同様に香澄家に興味津々でありながら、家族の団欒を楽しむ真昼の都合を考えて、皆で香澄家に遊びに行くことを一度は止めています。その日の夕方にきららが仕事に遅刻して困ることになっても、真昼には救援を依頼していません。ローラには「あこから元気をとったら何が残るの」なんて言われましたが、ご覧の通り相手を思い遣る心は残ります。

またあこは率先して後輩の指導を行う生徒会長の如月ツバサの背中を側で見ていた為か、四ツ星学園への帰属意識と責任感は特に強く、S4決定戦でも優勝したい動機に四ツ星学園や先輩の事を考える側面が感じ取れました。

卒業する3年生に敗北してS4の座を譲られるより、勝利してS4の座を己の手で奪い取る。四ツ星の名を汚さない立派な後輩の姿を見せることで、3年生には安心して卒業してもらい、世間には自分達が空白の世代で無いことを証明する。

仲間達がトップアイドルを目標に尊敬する先輩を超えたいと思う中で、あこだけは明確に後輩としての使命を感じる姿が描かれています。そんな先の事まで視野に入れる頼もしい後輩ですが、残念ながら先輩の意地を見せたツバサに負ける形でS4になってしまいます。

後述しますが、あこはゆめやローラと異なり万全の状態で勝負に挑めていないので、敗北は全力を出し切れた彼女達とは違う点で無念であったはず。全力を出せていたら勝てたかもしれない、それを思うと余計に悔しくなるでしょう。しかし人前では決して落ち込んだ姿は見せず、S4としての自覚を持って毅然と振る舞います。これにはあこさんカッコイイと言うしかありません。



夢の実現とファンの笑顔を天秤にかける時
あこの仕事に取り組む姿勢が決定付けられた回、それはS4決定戦直前の45話「あこ、まっしぐら!」。作中で彼女はグレードアップグリッターを求めて奔走します。

手に入れる方法は大きなステージを成功させること。あこは幸運にもツバサに誘われて大勢の観客が集まる舞台に立つ機会を得ますが、不運にもその日はデパートの屋上でライブをすると子供達に約束した日でした。

S4決定戦に全力で挑むのであれば、グレードアップグリッターは欠かせない。そしてそれはデパート屋上で数十人の観客に向けてライブをするだけでは手に入らない。自分を成長させる為のステージ、ファンを喜ばせる為のステージ。あこはどちらを選ぶのか悩んだ末にツバサに誘われた仕事に出演する決心をして、デパート屋上の仕事を断る為に足を運びます。

あこ「私にとって次のステージこそが、特別なグレードアップグリッターを手に入れるラストチャンス。だからツバサ先輩のステージに出ますわ」


あこ「約束を破るのは心苦しいけど、事情を話せば分かってくれますわ。だってあの子達は私のファンですもの」

しかし、決心はライブを楽しみにしている子供達の笑顔を目の前にして揺れ動きます。自分がすばるのライブを楽しみにしているように、子供達も自分のライブを心から楽しみにしている。それに気が付いたあこは、自身がアイドルとして成長するよりも、自分を応援するファンを喜ばせる道を選びました。

誰の為にアイドルをするのか。17話「本気のスイッチ!」でかなたにアイドルをする意味を問われてから、約半年の時を経て遂にファンの為にアイドルをするのだと胸を張れる答えを出したあこ。

彼女の決断は立派ではありました。けれども現実は厳しく善い行いが報われるとは限りません。残念ながらファンの笑顔と引き換えに、グレードアップグリッターを獲得する機会は失われ、その所為で普通のドレスを身に纏いS4決定戦に挑むことになりました。ロボットアニメで例えるなら専用機を操るエースパイロットを相手に量産機で戦うようなもの。これが夢を叶える為に不利になるであることは想像に難くないでしょう。

アイドルは知名度や肩書も重視される職業。S4になるのとならないのでは仕事量に大幅な差が付き、それはゆめとローラの活躍を比べると嫌でも分かります。2年目になってからのローラが仕事に励む姿はゆめと比べて明らかに少なく、作中で描写された仕事もゆめの友人やリリィの付き添いなど、人気アイドルのおまけとしての仕事が目に付き、桜庭ローラというアイドルが単独で指名された仕事は殆んど描かれていません。

実力的にゆめとローラはほぼ互角でも扱い方は随分と変わってしまいました。仕事が仕事を呼ぶアイドル界において、一度でも大きく差を着けられてしまうと縮めるのは難しいんですよね。それを避ける為にも夢を叶えるチャンスは絶対に逃してはなりません。

あこが夢を掴む為に本気でS4に選ばれたいのであれば、勝負で有利に働くグレードアップグリッターの獲得を優先するべきでしたが、その機会を自分の大ファンと言ってくれた子供達の期待に応える為に蹴ってしまいました。それはもしかすると馬鹿な真似かもしれませんが、そこまでしたからこそ「アイドル合格」と好きな人に認めて貰えるようになります。



人から人へ受け継がれる想い
早乙女あこは何よりもファンを大切にして仕事に取り組むアイドル。これ以上にアイドルらしいアイドルの在り方があるでしょうか。2年目のあこはブランドをきららに奪われ、S4で唯一星のツバサが生えていないことから、一部の視聴者に不遇ではないかと思われていますが、それは彼女が選んだ道を思えば些細な問題。ブランドも星のツバサも自分が輝く為の道具であり、今いるファンを喜ばせる際には無くても困らないもの。

以前のあこならブランドや星のツバサを所持する仲間に嫉妬していたでしょうが、今はその程度の出来事に心を惑わされません。最初はきららに横から奪われたフワフワドリームを取り戻す為にヴィーナスアークへの潜入活動など画策していましたが、きららの実力と人柄を知る内に彼女をフワフワドリームのミューズと認めて、次第にフワフワドリームを取り戻す気を無くしていきます。きららよりもフワフワドリームを愛していると語る割に行動は大人しい。

あこがブランドの奪還に固執しない理由は、女優業での活躍を目標にしている点も関係しているのでしょうが、何の為にアイドルをするのか立脚点が決まっているところも大きいでしょう。成長志向が強く星のツバサや太陽のドレスを求めるゆめや、ファンが愛するスパイスコードのイメージがぶれる危険を恐れずに自身を変革させるローラとは、アイドルとして目に映る景色が少し違います。1年目の自分の都合しか考えていない姿は既に欠片も見えません。

そんなあこの魅力の全てが詰め込まれた84話。この回できららはあこをパートナーに誘ってユニットカップに出場し、勝ち残ることでエルザに褒められようとします。好きな人を振り向かせたい一心で努力するきらら、それはすばるしか見えていなかった去年のあこでもあります。

あこはきららにかつての自分を重ねて合わせ、それ故に仕事で忙しい中でもきららを放っておけなくなるのですが、同時に自分と同じ道を歩むきららが行き着く先も見えてしまう。努力して勝って勝って勝ち続けても、好きな人が自分の方を向いてくれるとは言い切れません。誰もが真昼と夜空の様に相思相愛で分かり合える日が来る訳ではない。それはあこ自身が誰よりも分かっています。

あこ「本気で見てほしいなら、全力で振り向かせてみせなさいな」


きらら「いっぱい頑張ったら、エルザ様見てくれるかな」


あこ「ええ、きっとね」

きららにかける言葉も頭の隅では信じていないかもしれません。本当はそれを心から信じたいのですが、あこはそうはいかない現実も痛い位に知っています。現に才能に恵まれて世界中の人達から愛されるきららですら、ユニットカップでエルザからまるで相手にされていませんでした。この出来事はあこが努力して大女優になったとしても、好きな人に相手にされない可能性を意味します。

努力が報われて欲しいと強く願うあこからしたら、きららの置かれた状況は見ていて悔しいでしょうね。世界にはどれほど手を伸ばしても届かないものはある。現実は残酷で思い通りになりませんが、それでもあこはきららの様に立ち止まることなく、自分を支えるファンの期待に応えてきました。

好きな人の為にアイドルをするだけが全てではない。あこは今迄のアイカツで学んだ大切なことをきららに伝えて、自分達を応援してくれるファンを喜ばせる為に共にステージに立ちます。

あこからきららへ受け継がれる想い。過去に何度も作られてきた早乙女あこのメイン回の中で、84話は考える暇も無く過去最高と断言してしまえる素晴らしい物語でした。もう10回以上は繰り返し見ていますが、まだまだ飽きる気がしません。これだから「アイカツスターズ」の視聴は止められないですね。

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