最初の風を忘れたスミレ
氷上スミレのフィーバーアピールはどうして成功しなかったのでしょうか。一般論として挑戦には失敗がつきものという考え方があります。
けれども一番の理由はフォロワーさんも言及していたように、スミレが最初の風を忘れてしまったことにあるのではないかと個人的には思います。
スミレ「あかりちゃんたちと出会って競うことで新しい自分に近づけることが分かったの。それが私に吹いた最初の風。」
スミレ「あの風が吹いて私はアイドルとして歌でトップを目指せたらいいなって。」
最初の風が吹いて生まれた歌の力でトップアイドルになりたいというイメージ。それをカタチにすることがスミレのスターライトクイーンカップに参加する動機であり、魔夜がブルーエンプレスコーデをスミレに譲渡した理由もそこにありました。
ちなみに補足説明をしておくと「最初の風」という表現は、あかりからスミレに向けた歌として書かれている「START DASH SENSATION」の歌詞にあり、また「フォトカツ」のブルーエンプレスコーデのメッセージにも記載されています。
魔夜「歌一つで自分に厳しくアイドルの道を切り開いていこうとする君に惹かれたんだ。」
大切なのはダンスでもルックスでもなく歌。スミレにとって「大好きで育てなくちゃ」いけないことは歌であるはずなのですが、どういう訳か最後に練習していたのはダンスなんですよね。
もしもダンスのキレに不安を抱いていたとしても、圧倒的な歌唱力で会場を盛り上げてしまえばいい。そうした茨の道を進むべきところですが、ご覧の通りスミレはダンスに意識が向いていました。
スミレ「歌とダンスで会場を最高に盛り上げないと」
アイドルであるならばダンスも上手な方が好ましいとはいえ、非常に厳しい言い方をしてしまえば、このダンスの練習は自身の歌を信じきれていないスミレの逃げであると言えなくもないでしょう。
そんな風に茨の道を避けていては、魔夜が与えてくれたドレスの魅力を引き出すことは難しい気がします。もっと言えば練習そのものがいらなかったのではないかと考えています。
あかりとひなきが練習を終えてゆっくりと体も心も休ませていたように、スミレもそれまでの日々の努力で培われた力を信じて、最後の最後は頑張るための休息(それもひとつの準備)をすればよかった。
ちなみにスミレのダンスは凛が助言する必要が無い程に優れていることが語られているので、前日の練習は体力を使うばかりで効果は低い気がしています。
ＳＡランクのフィーバーアピールに挑戦する姿勢は素晴らしくはあるものの、やはり練習に力を入れすぎる挑み方は正しいものではなかったように思います。
その所為かスミレのオーラ発生時間は１６６話で披露された「いばらの女王」の頃と変わらず、ステージ演出的にはまどかと凛と同様に成長が表現されていません。
同級生の珠璃、のの、ひなき、あかりがオーラ発生時間の自己記録を大会中に更新していることからも、スミレには何かしら足りない点があったことは明白です。
恐らくスミレが他の人と同じくＡランクのフィーバーアピールを成功させたとしても良くて３位か４位、わずか数秒でオーラを発生させたひなきとあかりには敵わなかったものと思われます。
残念ながら、スターライトクイーンになるという目的を達成する一点において、スミレの挑戦は無意味であったかもしれません。ただし物語上は無意味ではありませんでした。それはあかりのステージを見れば分かります。
スミレに見せたい今
すれ違う時にほんの一瞬だけスミレの手を優しく握るあかり。まるで「未来向きの今をキミに見せるね」と語りかけるように、スミレの方を振り返ることなく前だけを見つめてステージに向かいます。
そして、あかりはスミレに最初の風を吹かせた「共に競い合える相手」として、未だ誰も成功させたことのないＳＡランクのフィーバーアピールに挑戦して見事に決めました。
作中で明言はされていませんが、あかりが挑戦した理由はただ勝つ為ではなく、スミレの為でもあったことでしょう。
START DASH SENSATION
「キミが見つけた最初の風をいつか見失いそうな時は一緒にさがせるようなわたしになっていたいな」
いいこと占い的にポジティブに解釈した場合、スミレの挑戦があかりをスターライトクイーンの座へ導き、あかりの成功がスミレの失敗を価値あるものへ変えてくれたのだと思います。
大空あかりという大切な親友。未来向きの今を見せてくれた彼女が側にいてくれたおかげでスミレは再び立ち直り、「凜として未来を描く」女王として前より輝ける。その時こそ「未来向きの今をキミと走ろう」とあかりに思われる人になるのかもしれません。そのように私は思います。
スミレのオーラ発生時間は２０数秒もありますが、それは裏を返せばまだまだ伸び代があるということ。今後の成長に期待が出来ますね。
