最後に主人公とヒロインが運命的な再会するところがこれまでの新海作品と違うなんて言われていますが、糸守町が失われたままで終わるあたり喪失感を描き出すいつもの新海作品と変わらない。別に糸森町が滅ぶ展開が気に入らない訳では無いのですが、問題なのは三葉にとってそれが都合が良い風に見える点。ティアマト彗星が糸森町を壊したおかげで、娯楽の無い退屈な生活から出られ、口噛み酒なんて恥ずかしいものを作らずに済んで、同級生に陰口を叩かれず、瀧と運命的な再会も果たせる。
結果だけ見るとティアマト彗星が落ちて良かったとしか思えないので、それは震災に影響を受けた作品としてはどうなのでしょうか。どう考えても穿ち過ぎな見方ではあるのですが、新海監督は閉鎖的な田舎なんて滅んでしまえばいいと考えている様に思えるんですよね。新海監督と同じ建設会社社長の息子である勅使河原が、糸森町を乗り気で爆破するのも新海監督の気持ちを代弁していると特にそう思えます。なのでそう思わせない為に三葉が糸森町に愛着ある描写を入れて欲しかった。細田守監督や宮崎駿監督ならそれを絶対に入れたはず。
サマーウォーズ スタンダード・エディション [Blu-ray]
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こんな風に都会と田舎では都会の方に魅力を感じている新海監督には、糸森町は瀧と三葉を繋げる切欠を作る場所で、その役目を終えた後も守り続けたいと思える場所では無いのかもしれません。まあ遅かれ早かれ糸森町みたいな地域は、都市部に人口が集中する時代では消えてしまうものですからね。そうした寂しい最後を迎える前に、災害の脅威や幻想的な光景を人々の記憶に残せたと思えば、糸森町が消滅するのも悪い事だけではないと言えそうです。