アニメごろごろ

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大沼心の対になる映像表現

シャフトらしい演出といえば映像に実写を入れたり、毛髪や衣服の影を簡略化して単色で塗り潰したり、ある人物や物体の持つ本来の色彩で塗らなかったり、意味不明なオブジェを入れるといったものがあります。

シャフトで長年働いていた大沼心さんの演出にもそうしたシャフトらしさが表れているのですが、これ以外の大沼心さん特有の演出としてOPやEDにおける対比構造があります。これは絵コンテとして直接的に関わることもあれば、OPディレクターという何をしているのか謎な役割であったりと作品によって様々なのですが、大沼さんが関与しているものには対比構造が時々見られます。

化物語」と「囮物語

化物語」では千石撫子は前を向き進み、阿良々木暦の隣を一緒に歩き、昼間は一生懸命勉強。これが千石撫子がラスボスに変貌する「囮物語」では下を向き後ろに戻り、阿良々木暦とは反対の道を進み、昼間から勉強もせずに寝たりと、現実に対する拒絶と諦念が現われています。

何故その様な映像になるのかは本編を観れば理解出来ると思うので、ここでは説明を省かせてもらいます。演出の話ではありませんが「恋愛サーキュレーション」の歌詞で「神様ありがとう」と歌っていた撫子が「囮物語」において神様になるのは偶然にしては出来過ぎですね。


「C3 シーキューブ

雪が降り積もる冬の夜景色と桜舞い散る春の昼景色。OP開始から1分辺りの映像では登場人物を中心として背景を回転させるところや、またコンマ5秒にも満たない素早い画面切り替えの連続して行うところも共通しています。

1番目のOP「Endless Story」がひたすらヒロインの姿を映すだけのものであるのに対して、2番目のOP「紋」では敵とのバトルが中心という風に方向性が全然違います。それでありながら細部の演出は非常に似通っている何とも不思議なOP。

「C3」は1クールしか無かったというのにOPを二つも作り、大沼監督自ら絵コンテも演出も行っていたのですが、何故そこまで意欲的だったのでしょうか。ちなみに「紋」はイントロの雰囲気がとても良いのでお勧めです。


バカとテストと召喚獣

男子達が描かれる1番目のEDの「バカ・ゴー・ホーム」は大沼心さんは直接関与はしていませんが、女子達が描かれる二番目のEDの「晴れときどき笑顔」では絵コンテを担当しています。

確か最終回だったと思いますが、上記の二つの映像を組み合わせて男子と女子の両方が並んで描かれる特殊EDがあるんですよね。それぞれ独立していたEDの映像が合わさり、それまでとは別の意味を持つ映像になるのは初めて見た時は感動しました。


「ef a tale of memories.」

最終回までのOPではヒロインが泡の様に消失し、鎖と共に身体が砕けてしまいます。それが最終回になると孤独だったヒロインの側に男性が現われ一緒に去り、鎖だけが砕け散りヒロインは解放されます。

大沼心さんがこの様なそれまでの映像と対になるものを創りたがる理由は分かりませんが、こうした演出は視聴者の記憶に残りやすいのではないでしょうか。それまでの映像とは全然違うものを流すと新鮮さは感じますが、初めて見るものなので細部まで記憶するのは困難です。

これが対になっているものだと新しい映像を見慣れてきた映像と比較しながら見るので、既に記憶された情報と新しい情報が脳内で結び付けて覚えるので自然と記憶に残ります。また最終回などの見せ場で「ef a tale of memories.」の様に意味のある変化させると、視聴者に感動を与えてより強固な記憶にする効果もあるでしょうね。大沼心さんの手掛けたOPやEDが話題になりやすいのはクオリティの高さもありますが、こうした仕組みも僅かではありますが影響しているのかもしれません。