アニメごろごろ

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小説家になろう分析3 ネット小説を書籍化することで何を得られるか

作者のメリット
WEB小説がスカウトなり新人賞受賞で書籍化した場合、作者主導で作品を書きやすい事がメリットの一つです。出版社から本を出してもらうとなると、立場上編集者の意見も聞かなければならないので、趣味でやるのと違い自由に作品は書けません。編集者の意見のおかげでより良い作品に仕上がることもありますが、最悪の場合は作者が書きたいものとは全然違うものを書かされる可能性もあります。

何の実績もないような新人作家だけではなく、アニメ化作品がある人気作家であってもこうした縛りはあると思いますが、WEB小説が書籍化された場合にはこの縛りは比較的緩いと思います。WEB小説を書籍化することで出版社が得られるメリットは、WEB時代のファンが購入することである程度の売上が期待出来るところにあり、このメリットを活かす為には、購買層であるファンの機嫌を損ねないようにしなければなりません。

編集者が下手に口出しして内容を変えてしまうと、ファンは改悪されたと怒り購入しなくなる恐れがあるので。こうなっては書籍化する意味があまりないので、書籍版の付加価値として新たなエピソードを追加することはしても、ファンから反感を買いそうな改変は編集者もあまりやらないでしょう。なので基本的にはWEB時代のものに沿った形になり、作者の書きたかった作品が尊重されることになると思います。さすがに作者の意見が何でも通るなんてことはないと思いますが、売れていない普通の作家に比べれば意見は聞いてもらいやすいでしょうね。

ナイツ&マジック 3 (ヒーロー文庫)

ナイツ&マジック 3 (ヒーロー文庫)

もう1つのメリットは全十数巻にもなる作品や最初のエピソードが1巻で終わらない作品でも書籍になるところです。商業作品は売れなければ打ち切られてしまうので、売れるかどうか判明するまでは長い話は避けた方が無難。人気作品になれば全20巻にもなったり、1つのエピソードが3冊にも及んだりすることはありますが、最初からそれをやるような作品は出版社からあまりいい顔はされないと思います。出版社にとって巻数が長くて売れる作品は貴重な収入源なので必要ですが、売れるかどうかも分からないただ長いだけの作品は求められていません。

また作品が売れるかどうかは最初が肝心なので、1巻目で面白さが伝わらない作品はあまりいいとは言えません。読者の多くは続きを買うかどうかを一巻を読んで判断するので、出来ればその1冊の中で綺麗に話が纏まっていてなおかつ面白いことが求められます。もし10巻まで読み続ければ確実に面白いと思わせるだけのものがあっても、そこまで読者は待ってくれませんし出版社も待ってくれません。お金が絡んでいるのでそこの判断は出版社も読者も厳しいです。

けれどWEB小説の場合は本人の意欲があれば何文字でも書けますし、また無料で読めることもあり上で述べたような作品であっても人気になることがあります。「魔法科高校の劣等生」のように最初のエピソードが2冊になったり、「Re:ゼロから始める異世界生活」のように序盤から伏線だらけの作品であっても人気さえあれば書籍化される。新人賞からはこうした作品は出ることはまず無いでしょう。

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

出版社のメリット
最初の方で少し触れましたが、出版社にとってのメリットは売れる作品を簡単に手に入れられる事ですね。書籍化する前から数万人のファンがいる人気作品であれば、売上は発売初週で1万部を超えることが十分可能です。実際ヒーロー文庫ではスカウトした作品の半分以上が、発売から2週目で2万部前後売れているので。この数字の凄さが分からない人向けに説明すると、この数字をライトノベルの9割は出すことが出来ません。

他のレーベルでこれだけ売れればコミカライズは当然のようにされます。ヒーロー文庫以外から書籍化された作品にはそこまで成功しているものは少ないですが、それでもレーベル内での売上順位では大体上位にはきますね。出版社にとってこれだけおいしい話はそうはないと思います。ただスカウトをしすぎると希少価値も無くなりますし、長期的にはデメリットも多いと考えているのか大手レーベルは書籍化するものを厳選しているようです。