まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」
- 作者: 橙乃ままれ,toi8
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2010/12/29
- メディア: 単行本
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そういう意見もあるので出版社によってはネットに載せている作品を削除させることもありますが、エンターブレインはそれをしませんでした。この戦略が成功したのかは分かりませんが、業界の常識に捉われないこの発想は素晴らしかったと思います。
無料公開して知名度を高めることを重視
ネット上での口コミによる宣伝効果というものは侮れません。例えばアニメ化した「男子高校生の日常」と「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」ですが、これが大人気になったきっかけはどちらも匿名掲示板で話題になったからです。
この2作品はガンガンONLINEで無料配信されているWEB漫画なので、ネットさえあれば金も手間もかけずにすぐ読むことが出来ます。この手軽さが読者数の増加にかなり貢献しました。もしこれが普通の雑誌に載っているとなると、書店に行ったり購入する手間があるので読者数の増加にはあまり繋がらなかったでしょう。
「まおゆう」も「ログホライズン」もこれと同じようにネットで無料公開していることが、読者数の増加に貢献していると思います。娯楽作品が溢れている日本では面白い作品はごまんとあるので、面白いかどうかも分からない作品を買いたいと思う人達はそんなに沢山はいないものです。そうした状況では買わせることよりも、まず知ってもらうことの方が大切な場合もあります。もし無料公開する事で読者数が100倍に膨れ上がり、その内の1割が購入するのであれば、無料公開による利益は単純計算で10倍になりますからね。
とはいっても現実はこう都合良くは行きません。無料のものを読んだ上で買う層は1割もいないでしょうし、無料公開した方が売上は下がるという可能性も十分あります。少しでも売れるように書籍版にはWEB版にはない付加価値をつけたりしますが、これをやっても売上を伸ばすことは容易ではないでしょう。そこでエンターブレインはどうしたかというと、コミカライズ作品等を増やすことで利益を上げることを選びました。
ログ・ホライズン 西風の旅団 1 (ドラゴンコミックスエイジ)
- 作者: こゆき,ハラカズヒロ,橙乃ままれ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2013/02/08
- メディア: コミック
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まおゆう魔王勇者 外伝 まどろみの女魔法使い(3) (シリウスKC)
- 作者: 川上泰樹,橙乃ままれ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/01/09
- メディア: コミック
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原作小説で知名度を上げてコミカライズやスピンオフで稼ぐ
「まおゆう」と「ログホライズン」にはコミカライズ作品やスピンオフ作品が幾つもあります。原作ファンであれば出来の良いコミカライズ作品は買いたくなりますし、スピンオフ作品も当然買いたくなるでしょう。こうした消費者の心理を予想した上で、エンターブレインは戦略を立てていると思います。
無料公開することにより知名度を上げて読者を増やし大勢のファンを獲得しておけば、無料公開されている原作小説の売上が低くなる恐れはあるものの、ファンが関連商品を購入するおかげで作品全体として利益を十分確保出来るようになります。これがエンターブレインの狙いではないでしょうか。
石田版「まおゆう」なんかは発売から1週間で4万部以上売れていますからね。漫画市場では4万部はそこまで大した数字ではありませんが、ライトノベル市場では「俺ガイル」や「アクセルワールド」並ではないと到達出来ません。無料公開のせいで多少原作小説が売れないとしても漫画がそれだけ売れれば成功と呼べるでしょう。
コミカライズ等は手間も費用もかかるので全ての作品に対して行うにはリスクが高すぎる戦略ですが、売れそうな作品にだけ行うのであればその見返りは大きいです。世の中には小説には全然興味ないけど漫画は読むという層もいるので、コミカライズは新たなファンの獲得にもなりますから。
「まおゆう」と「ログホライズン」があれだけ多角的な展開をして貰えているのは、これは売れるとエンターブレインに思わせるだけの何かがきっとあったからなんでしょうね。