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「プロメア」誰にも背中を押されなかったクレイ・フォーサイト

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燃えていいのは魂だけ、消していいのは炎だけ。「グレンラガン」は敵味方共に数多の命が消える物語でしたが、今回の「プロメア」は消えゆく命を救い出す物語でした。

主人公であるガロのレスキュー対象には、本作品の悪役であるクレイ・フォーサイトも含まれています。

 

バカになれないクレイの限界

クレイは「グレンラガン」で言うところのロシウ。フォーサイト(先見)の名前が表している通り、物事の先まで読んで行動する人物。

クレイはバーニッシュを切り捨てる非情な側面を持つものの、ロシウがそうであったように人類を救済したい意志は本物であり、単純に悪い人とは言い切れません。

それではクレイの何処に問題があるのかと言えば、個人的にはバカになれなかった点にあると思います。頭が良い為に不可能に挑戦することなく、現実的な策を選んでしまう。

 

ガロ達にも指摘されていましたが、クレイは地球を救えたかもしれない力を持ちながら、その夢は叶わないと早い内から諦めてしまい、限界まで粘らない人なんですよね。

プロメティックエンジンの件は言うに及ばず、絶対零度宇宙熱死砲も地球の中心まで届かないという欠点がありましたが、改良を重ねてワープの技術を併用すれば克服する可能性はゼロではないでしょう。そうした最後の一歩が足りませんでした。

 

仮にクレイにもカミナにとってのシモンのような自分を慕い、背中を押してくれる大切な相手がいれば、結末は今と違っていたかもしれません。一応、ガロから敬意を込めて「旦那」と呼ばれていたとはいえ、その言葉はシモンがカミナに向ける「アニキ」とは真逆で、力を与えるどころか苦しめるばかり。

バーニッシュとして暴走した過去を思い出させるガロから無邪気に英雄視されることは、プロメアの奴隷として放火で人を殺めた罪悪感を強めたことでしょう。

デウス博士やバーニッシュの死と異なり、ガロの家族の死は人類の救済と関係ない無意味な死。クレイの様な英雄願望を抱く者には許されない過ちであり、記憶から消し去りたい出来事。

クレイが己の罪に全く心を痛めない人間であれば、ガロに誤解から好意を向けられて「旦那」と呼ばれたところで何も感じないでしょうが、英雄に憧れる彼の心はそこまで冷えてはいませんでした。

 

クレイの醜く憎い左腕

バーニッシュの力が最初に暴走した忌々しい左腕。バーニッシュとしてのクレイは、基本的に己の罪を象徴する左腕で戦います。

火炎竜と化したリオを待ち構える時、その後にリオを捕まえる時、最後にガロと対決する時、上記のシーンで使われる腕は全て左。作中では左手が塞がっている状況以外に、バーニッシュの力を右腕で発動させることはありません。

 

全身をバーニッシュの力で覆い尽くすリオ達と違い、まるでプロメアを身体から少しでも遠ざるように力を左腕に集中させていました。それ程までにクレイのプロメアに対する嫌悪感は強い。

クレイの左腕が火事で喪われた後、バーニッシュの力で勝手に再生することなく、義手になっていることも上記と関係しているのでしょう。

 

クレイに与えられた罰

再生しない左腕。「プロメア」がギリシャ神話になぞらえているのであれば、左腕の喪失は彼に与えられた罰ではないかと考えています。

ゼウスから火を盗んで人に与えたプロメテウス。デウス博士から悪魔の研究を盗んで世間に公表したクレイ。

火を盗んだ罰としてゼウスの手で山に磔にされ、オオワシに内臓を啄まれたプロメテウス。彼は不死であるが故に死なず、肉を引き裂かれる苦痛を何度も与えられました。

クレイも同じ様に本能的に焼失と再生を繰り返すバーニッシュの力を抑えなければならない罰を与えられました。

デウス博士殺害と左腕暴走の順番は置いておくとして、この文脈に沿って読み解けばバーニッシュのクレイに生えた炎の翼、それはプロメテウスを苦しめたオオワシと言えるでしょう。

そして、このオオワシであるところのバーニッシュの力はガロデリオンの手で消され、クレイは左腕が無限に再生する苦痛から解放されます。デウス博士がガロ達に与えた発明によってクレイが救済される。その構造はデウス博士に罪が許されたかのようで美しい。

 

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