神話の終焉と宇宙の誕生
神話の要素を取り入れている本作品。その数は既に偶然とは言えない程になっており、スタッフが意識して入れたものと思われます。
女神ヴィーナスと縁の深いフィッティングルームの貝。
神城カレンが例え話に用いたイカロスの翼。
神話をモチーフにしている天翔ひびきのヘブンリーパフューム。
コノハナサクヤヒメに由来する「月見れば、さくやこの花、夢舞台」。
クラシカルアンジュ(格式ある天使)のドレスを身に纏うカレンの「愛で溢れている」。彼女のステージも空に浮かぶ岩など幻想的な神々の世界をイメージして造られています。
そして恐らく、湊みおがラブミーティア物語を読んで「ラブミーティアのドラマチック極まりない結成エピソードはもはや伝説、いえアイカツ界における神話とすらなっている」と語った訳も上の話と関わっているのでしょう。
神の手で創られたとでも言うべきラブミーティア物語。「アイカツフレンズ」において重要な役割を担っている本書の特徴は、カレンから素敵な嘘と称される虚構の物語にあります。
まるで真実であるかのように語る点で実に神話的。そこに記された素敵な嘘に騙されたピュアパレットは、101番勝負などのラブミーティアの嘘を越える偉業を成し遂げていきます。まさに事実は小説よりも奇なり。
フィクションのラブミーティア物語からノンフィクションのピュアパレット物語へ。1年目はピュアパレットがラブミーティアの神話の時代を終わらせる物語であったと言えるでしょう。
ジュエルの襲来とデザイナーの逆襲
そして続く2年目、ピュアパレットがビッグバンを起こして生まれた新世界では、ラブミーティア物語の代わりに宇宙から飛来したジュエルが物語の中心になります。
意思を持っているかのようにアイドルの側に現れ、黒い原石から輝く宝石に変化し、ステージ中にドレスに憑依して作り替えるジュエル。
「アイカツスターズ」の太陽のドレスと違って、ジュエリングドレスの原理は想像もつきません。「アイカツフレンズ」には以前から幽霊などはいましたが、それ以上の神秘が現れるとは思いませんでした。
個人的にジュエルが寄生生物である可能性を疑っていますが、そこは深く考えないようにしておきます。多分、物語的に重要な部分ではないのでしょう。それよりも気に掛かるのは、ジュエリングドレスにアイドル達が夢中になっている点について。
エマ「ハニーキャットのジュエルゲット大作戦、いざ開始だね」
デザイナーがアイドルを輝かせる為に苦労して作り上げたドレスは、謎の石が生み出したドレスより格下。販促的に自然な展開ではあるとはいえ、これではデザイナーの立場が無いですよね。
ファン「スカートがピアノの鍵盤みたい。シュガーメロディらしいドレスね」
ドレスに取り付いてブランドの個性を取り込むジュエルの前では、デザイナーはジュエルを成長させる糧に過ぎない。このままではラブミーティアにもリフレクトムーンにも使われなかった悲しきブリリアントドレスと同じ道を辿るでしょう。それだけは絶対に避けて欲しいところ。
DCDの展開から想像すると半年で7つのジュエルが揃った後、レインボークリスタルドレスあたりが誕生しそうな気配を感じますが、そこから先は果たしてどうなるでしょうか。
ジュエルのような神秘的な存在に惹かれる子供は多いかもしれませんが、アイドルとデザイナーの関係性を丁寧に描いてきたアイカツシリーズが好きなファンとしては「それがアイカツ」と言う気にはあまりなれません。
ノア「ドレスでもっともっと舞花の魅力を引き出したいんだけど」
千春「ダイヤモンドドレスも本当に素敵。私もいつかあんなドレスをデザインできるようになりたい」
「アイカツフレンズ」の魅力は人の絆、人の力。ラブミーティアの神話をピュアパレットのトモダチカラで終わらせたように、ジュエリングドレスという神秘がデザイナーに解き明かされ乗り越えられる日が訪れることを信じています。