- 作者: ヤマグチノボル,兎塚エイジ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/02/25
- メディア: 文庫
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無知な主人公に対する説明が読者への説明にもなる
才能が開花した主人公の大活躍による爽快感
動機を持たない主人公は読者に親近感を持たせる
個人的にはこの辺が巻き込まれ系主人公の利点にあると思います。これで主張したいことの大部分は言い終えてしまいましたが、これだけでは伝わらない人もいるはずなので無駄に長いかも知れませんが、一応上記の内容に関する説明も書き残しておきます。
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- 出版社/メーカー: DefSTAR RECORDS
- 発売日: 2015/06/03
- メディア: CD
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戦闘中に何故か自分の能力の説明を親切に始める悪役の違和感しかない説明と違い、こちらは最初から説明を目的とした説明なので読んでいて自然に受け入れられますね。最初から主人公が非日常の世界を生きている作品の場合、この無知なキャラへの説明を行うことによる読者への説明という手法が使い難いので、作家に構成力が無ければ非日常の世界の説明が不足して読者を置いていきかねません。
その問題を防止する巻き込まれ系主人公は創作に慣れない初心者にも扱いやすく、これが小説家になろうで異世界転生や異世界転移が流行した一因にもなっていると思います。主人公を異世界に転移させた理由が流行に飛び付く読者に受けるからだとか、主人公が異世界の常識を学ぶ姿から始めた方が世界観を伝えやすいからという作品は少なくありません。
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- アーティスト: KOTOKO × ALTIMA
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レベル1から2に上がる時とレベル10から20に上がる時、成長率は同じに見えても到達する難易度は全く別。物語が幕を開ける前から高いレベルまで鍛えてきた主人公が手軽に成長してしまえるのであれば、それ迄の主人公は全力を出さないで遊んでいたのかなんて思われてしまいます。
物語なのでそこまで現実的に考えることはありませんが、ある程度は主人公が成長した理由に説得力を持たせる必要はあるでしょう。幾つか例を挙げると「ハイキュー」の日向翔陽は高校入学までは練習の相手が少なく有意義な経験を積めなかった、「ドラゴンボール」のサイヤ人には死の淵から復活すると強くなる設定が与えられていました。
さて話を戻すと巻き込まれ系主人公の場合は特に何もしないで生きていたりもするので、その才能は未知数であり急激に成長する可能性は十分に考えられます。未成熟な主人公の隠れていた才能が発揮されて、経験を積む度に凄まじい速度で成長する姿は見ていて心が踊りますよね。
仮に主人公が修行の末に辿り着いた地点が序盤から登場していた仲間と大差が無いとしても、周囲を驚かせる成長の速度は読者を惹き付ける物語になる。それは「SLAM DUNK」の桜木花道や「アクセルワールド」のシルバークロウを見ていれば恐らく分かると思います。この魅力は主人公の種類と無関係に生み出せますが、レベル1から始められる巻き込まれ系主人公の方が適してはいるでしょうね。
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ある意味で読者の代表と言える平凡な主人公の活躍は、機会さえあれば自分も同様に輝けるのだという希望を読者に与える効果も持ちます。自己実現を求めて前に進む主人公ばかりだと無気力な読者的に辛いものがあるので、「GANTZ」の玄野計など普段は冴えないけど事件に巻き込まれた時だけ妙に活躍する主人公は常に一定の需要があるんですよね。
ちなみにこれを努力しない読者の脆弱な心を癒すだけのものとする見方もあるでしょうが、巻き込まれ系主人公の大半は遅かれ早かれ厳しい現実に直面して、それでも命を懸けて戦う覚悟があるのかを問われます。最初は他者に巻き込まれて仕方が無く戦う場合でも、仲間と絆を深める内に自分の意思で戦う道を選択するようになるんですよね。
何の取り柄も無い主人公がヒロインと出会い、特別な力を手に入れて敵を楽々と倒すだけで終わる作品は商業では少数派。読者に都合の良い夢を見せるように思えるだけで、読者の心を抉る作品はこちらの方が多い気がします。その代表格の「マブラヴ」は典型的な巻き込まれ系主人公の弱い心を糾弾することで間接的にプレイヤーに説教する作風でした。
自分で道を切り開く超人と他者に巻き込まれる凡人の主人公では、後者の方が読者と立場が近い為に主人公の苦悩等は読者から他人事に思われ難く、その主人公を媒介や緩衝材に使えば効率よく読者にメッセージを届けられます。これは巻き込まれ系主人公の使い易い点として外せないですね。
無駄に長い気がしてなりませんが、これで言いたいことは伝えられたと思います。本当は巻き込まれ系主人公にも「エヴァンゲリオン」の碇シンジや「コードギアス」のルルーシュなど保守派と革新派があり、それら複数の系統に分類して論じるべきなんですけど、そこまでする体力が不足しているので適当に想像で補いつつ流して下さい。