アニメごろごろ

楽しんで頂けたらツイートなどしてもらえると喜びます。

「魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」最強に対抗した所為で起きた悲劇

SPEED STAR(期間生産限定アニメ盤)(DVD付)

SPEED STAR(期間生産限定アニメ盤)(DVD付)

魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」を観て来ました。舞台挨拶ではエリカとレオの戦闘でアドリブを入れた、入浴シーンはアフレコ時に乳首が描かれていたなどの裏話が聞けて楽しめました。キャストのトークを聞いて改めて感じたことは、アニメは「さすおに」推しで作られていたということ。ファンからの質問に答えるコーナーでも選ばれたのも「誰が最強か」とか「さすがですと思えた話」とかそういう方向。司波達也は深雪役の早見沙織さん以外からも「お兄様」と呼ばれていましたし、作品の見所の大部分は「さすおに」で言い表せる空気を感じました。

舞台挨拶で印象に残る出来事と言えば、リーナ役の日笠陽子さんのポジティブトーク日笠陽子さんと中村悠一さんとの掛け合いで会場は笑いに包まれていました。日笠陽子さんは声優や視聴者から評判が良い方だと聞いていましたが、トークが上手な上に性格も良さそうなのは舞台挨拶を見ただけでも伝わってきました。九亜役で新人声優の小原好美さんが緊張して上手に喋れない時もフォローされていましたし、ブレイクしてからも仕事を安定して貰える理由が分かった気がします。

強大な力が招く軍拡競争
佐島先生の作品は過剰な説明が見所であり、そこを抜いたらSFとしての魅力も弱くなるので、尺の短い劇場版がどうなるのか鑑賞前は不安を抱いていました。鎌池先生はスケールの大きな物語も1巻で綺麗に纏める優れた構成力を持ち、川原先生も「SAO」では1巻で完結した大傑作のアインクラッド編やマザーズロザリオ編があるので、劇場版の脚本も書ける技量は供えていると分かっていましたが、佐島先生は上下巻での構成が非常に多くて脚本を書けるのか分かりませんでした。

結論から言えば心配は杞憂に終わり、ジャンプアニメによくあるオリジナルストーリーの劇場版と比べれば、ファンが安心して観れる水準には達していたと思います。全体の構成も入学編や横浜騒乱編と変わらず、物語の中盤まで会話を中心に進められ、戦闘に移行しても達也が動けば事態は早期に収束します。予想はされていましたが、最強の達也と最強のリーナが激突する様な宣伝に反し、リーナは協力的で問題の解決は穏やかに進みました。

悪く言えばエンターテイメントとしての盛り上がりに欠けており、序盤、中盤、終盤と各々に大きな戦闘を組み込んだ「禁書」と「SAO」とは進め方が異なる。作画に関しては上記作品に匹敵する派手さはありませんが、キャラの仕草は丁寧で美少女を綺麗に魅せる意図を感じる映像でした。細部への拘り方が見事で九亜を除いた深雪やリーナを含めた女性陣は、女性特有のセクシーな雰囲気を出す為に下唇がうっすらとピンクに染められていました。九亜はかなりアップで映されていた場面でもピンクに塗られていないので、そこは塗らないようにとの指示が出されていたのでしょう。研究道具の九亜が女の子らしさとは無縁の生活を送らされていたことがデザインから窺えます。


「星を呼ぶ少女」は映画単体で評価した場合は、説明や感動が不足していると思わないでもありませんが、原作を読んでいる身としては皆が一緒にいる姿を見られて嬉しいですね。原作の方は既に達也とエリカや十文字との間に溝が生まれ、立場的に下手を打てば敵対する危険も孕んでいるので、それを読んだ後だと「星を呼ぶ少女」で達也が仲間と協力する姿は胸が熱くて痛い。

この作品は骨子に致命的な欠点は見られません。ただし傑作と断じるには惜しいところが色々と目に付いてしまうんですよね。せめてこれの上映時間が「SAO」と同じ位であれば、情報量の増加に併せていまいち何がしたいのか掴めない兼丸所長の動機も理解が出来、わたつみシリーズへの思い入れも生まれたのではないかなと。個人的には九亜がエリカ達に自分の境遇を話している際に、九亜に名前が付けられる前の使い潰された調整体の描写を回想シーンとして入れて欲しかったですね。

ところで劇場版の事件は社会的にどの様に処理されるのでしょうか。日本政府としては取り上げられると恥では済まない問題ですし、表沙汰にはしたくないでしょうけれどヘビィ・メタル・バーストが使用され戦闘の痕跡が残されている以上、火山の噴火が起きたなどの適当な説明では恐らく世間に通らない。責任を誰に押し付けるのかは置いといて、少なくとも海軍が陸軍の使用したマテリアル・バーストに対抗する目的で始めた研究が、軍内部における海軍の立場を悪くすることは言えるでしょう。戦略級魔法師である達也の存在が自国を多国から守るどころか、国内に余計な火種を蒔いてしまう。この力を持つ者への恐れが新たな災いを呼ぶことは「魔法科高校の劣等生」が今後も向き合う重要なテーマ。

パンフレットでも触れられていましたが、わたつみシリーズについては魔法を起動させるパーツに過ぎず、無知で全員が揃おうともミーティアライト・フォールを使えないおかげで、危険性は低く命を狙われる心配は無いと思われます。佐島先生は物語の背景を細部まで作り込んでいますし、その辺の話も頭の中には絶対にあるはずなので、わたつみシリーズの後日談は特典小説として出ないかなと期待しています。

「ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」忘れ去られた弱き者の悲痛な叫び - アニメ見ながらごろごろしたい