アニメごろごろ

楽しんで頂けたらツイートなどしてもらえると喜びます。

売上が見込めない作品を贔屓するMF文庫Jの方針はもっと評価されてもいい

売れている作品と売りたい作品のどちらが大切なのか
Re:ゼロから始める異世界生活」と「エイルン・ラストコード」と「ようこそ実力至上主義の教室」を猛烈に宣伝しているMF文庫。「よう実」は発売前からCM用のスペシャルアニメが作られるなんて厚待遇を受けていました。売上の予測が困難な状況でこの宣伝の力の入れ方は凄いですね。ただこうしたMF文庫の売れている作品を差し置いて、売れていない作品を強引に宣伝する方針は一部の消費者から嫌われています。

宣伝の力を借りずに売れたという誰の目にも明らかな実績を残していないにも関わらず、出版社から優先的に売上を伸ばす為のCMをテレビで流してもらえるのですから、宣伝なんて全然されていない作品のファンなら文句を言いたい気持ちになるのは自然な事だと思います。宣伝の有無でアニメ化まで辿り着けるか打ち切りになるかも変わりますからね。

ちなみに「リゼロ」はアニメ放送前は新しい巻が出る度に売上が落ちていた為に「宣伝されている癖にその程度しか売れないのか」と批判されてファンとしては辛かったです。それはさておき打ち切られる程度の作品は宣伝をしても無駄と考える方もいると思いますが、そうではない事は打ち切られながら口コミでじわじわと評価され、奇跡的にアニメ化が決定したスニーカー文庫の「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」が証明しています。

この様に作品のその後に大きな影響を与える宣伝を行う基準が数字で表される売上ではなく、世間に認知されたら売れるに違いないという謎の基準で決められてしまう。優遇される理由が明確に分からないと不公平な感じがどうしてもありますよね。私自身このやり方には否定的な気持ちを抱いていたのですが、売上が見込めるランキング上位のなろう作品を大量に書籍化するレーベルを見ているうちに、流行から外れて売上の予測が困難だとしても、世の中に広めたいと思える作品に力を入れて宣伝するMF文庫が次第に好ましいと思えてきました。

人気のあるなろう作品を次々に書籍化して売れなければ、オーバーラップ文庫が「リーングラードの学び舎より」にしたみたいに数巻で打ち切る。代わりは幾らでも小説家になろうから生まれるので、駄目そうなら早々に切り捨てて成功したものだけを残す方が出版社にとっては利益になるのでしょうけれど、出版社の役割は売れた作品を残す事だけではないと思うんですよね。

実際の内情は知らないですけど、小説家になろうから新しい弾を容易に補充が行える所為で、編集者から作家と共に作品を一から育てる意欲が失われつつある気がします。規模が小さい体力の無いレーベルは、それらに頼らなければ生き残るのは難しいとは思いますが、適当に人気の高い作品を新たに書籍化するのではなく、今ある作品を売る為の策をもう少し考えて欲しいなと個人的には思います。

このまま出版社が作品を育てる努力も広める努力もしないで、売れ行きが悪ければ簡単に使い捨てにする情況が当たり前になると、そのうち作家がpixivやTwitterにいるイラストレーターに挿絵を直接依頼して、電子書籍自費出版した方がましという時代が来るかもしれません。

魔女の旅々 (GAノベル)

魔女の旅々 (GAノベル)

kindleで自費出版をしていたラノベ作家「白石定規」さんがkindleの個人出版について解説 | まとレーベル@ラノベ&なろう小説新刊情報まとめサイト


受けの電撃文庫と攻めのMF文庫
オーバーラップ文庫ファミ通文庫と違い、なろう作品に頼らない電撃文庫も最近は「SAOGGO」や「Fate/strange Fake」や「青春ブタ野郎」や「エロマンガ先生」や「絶対ナル孤独者」や「ドウルマスターズ」など人気作家の新作に助けられ、若手作家を頑張って売ろうという方向に中々動けていない印象を受けます。刊行される作品は多種多様ではあるのですが、若手作家が5巻以上書き続けられた例は殆んど見られず、電撃文庫の次の柱になれる作家はまだ育てられていません。電撃文庫の代わりにメディアワークス文庫の方は色々と動いてはいるみたいなんですけど。

現時点ではラノベレーベルの中ではトップの地位を維持しているとはいえ、人気作家の力を活かす安全策を選んで成長性に乏しいところがあるのは否めません。一方電撃文庫の次に売れているMF文庫は対照的に、実績の少ない作家の作品を売る為に全力で宣伝して攻めています。売れる保証が無いとしても売れると感じた作品を埋もれさせない為に全力で勧める。それは出版社だからこそ出来る大切な仕事。MF文庫も打ち切る事は多いですし、他所と同様に欠点は幾つも抱えていますが、成否が見えない中で積極的に挑戦する姿勢、その一点については凄いと認めざるを得ません。

エイルン・ラストコード」の様に宣伝しても思い通りに売れなければ、諦めて別の作品に力を入れたい気持ちになるものですが、そこで折れずにこの作品なら売れると信じるのは誰にでも出来る事では有りません。この戦略が今後数年でどんな結果を招き寄せるのかは読めませんが、自分の好みとしてはその様な覚悟を持ち大胆な戦略を取れるレーベルに成功して欲しいと思います。

さてここで注目して欲しいのはMF文庫が推している「Re:ゼロから始める異世界生活」と「エイルン・ラストコード」と「ようこそ実力至上主義の教室」の内容。これらの作品はどれもMF文庫の主流の学園を舞台にしたハーレムラブコメ、主人公が特別な力で敵を倒すファンタジーからは外れています。

「リゼロ」は主人公が弱すぎてそこらの主人公がラッキースケベに遭う頻度で死に戻るループもの、「エイルン・ラストコード」はラノベではヒットした例の少ないロボットもの、「よう実」はコメディ要素の薄い頭脳戦を取り入れたスクールカーストもの。

上記の流行に乗っていない作品を発売前から宣伝する点に、MF文庫の生まれ変わろうとする意志を感じます。この道が正解か不正解かを判断する為の試金石となるのが「学戦都市アスタリスク」と「リゼロ」のアニメなのではないでしょうか。

アスタリスク」は典型的な燃える学園異能バトルと萌えるハーレムラブコメを兼ね備えた作品。挿絵担当にあの「インフィニット・ストラトス」のokiuraさんが選ばれている事からもそれは言えると思います。レスターさんという謎のマッチョなツンデレキャラを除けば、目新しさを感じる部分は然程有りません。

この「アスタリスク」と「リゼロ」の両方に資金を投入して2クールで放送、そのどちらが成功するかで従来の売れ筋で攻めるか、これ迄には見られない異色の作品で攻めるか大枠の方向性を決める。個人的にはそんな気がしています。

安定して売れるのは男性の欲望に忠実な前者ですが、男女両方から支持されて大成功を狙えるのは後者なので、シェア拡大にはリスクを取って後者を中心に注力したいところでしょうね。「魔技科の剣士と召喚魔王」と「盟約のリヴァイアサン」は売上的に少し前のMF文庫なら絶対にアニメ化すると思うんですけど、最近の動きを見ているとされないかもしれません。


変化を続けるライトノベルのコミカライズ - アニメ見ながらごろごろしたい

改善されたライトノベルのタイトル - アニメ見ながらごろごろしたい