アニメごろごろ

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「クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険」感想

劇場映画シリーズ第4作目
監督 本郷みつる


劇場版の中でも最高のセンスオブワンダーを与える傑作
「ヘンダーランド」にはアクション、ギャグ、ホラーといった「クレヨンしんちゃん」のアニメが得意としている要素が沢山詰め込まれていました。オカマ魔女との追いかけっこ、世界の命運を懸けたババ抜き、ス・ノーマン・パーの策略は大勢のファンの記憶に残っているみたいで「クレしん」の思い出を語る場では頻繁に触れられていますね。有名になり過ぎた「オトナ帝国」と「戦国アッパレ」の評価の高さには及びませんが、それを除けば劇場版の中でもトップクラスの作品でしょうね。

上記した場面以外の見所を挙げるのであれば、画像にあるヘンダーランドを独りで探索している場面がお勧めです。目に映る風景自体は現実にありそうな場所なのに妙に現実感の無い不思議な空間。「クレヨンしんちゃん」は色遣いや構図やBGMにより此処では無い何処かに視聴者を誘い、非日常の幻想的な空気を感じさせるのが巧いんですよね。「ハイグレ魔王」の駄菓子屋とか「カスカベボーイズ」のカスカベ座とか、あれは書き込みが細かいだけでは表現出来ないでしょうね。塗り方も上手で「ヘンダーランド」では日中と早朝の風景の光の射し込み方の微妙な差違を色で見事に表現していました。


男の子の成長物語
「ヘンダーランド」のしんのすけの行動には他作品に見られない特徴があります。それは人並に臆病であるという事です。他作品のしんのすけは銃を持った敵にも恐れを一切感じず普段通りにおふざけをしたり、問題が起きれば解決しようと積極的に行動するキャラとして描かれますが、この作品のしんのすけは悪者と戦うことを恐れ平穏な日常に逃げることを一度は選びます。

作品によってキャラがぶれることは多少ありますが、これだけ違うのは非常に珍しいですね。女の子に助けを求められたとしても狼男や魔法使いを相手に戦うのは普通は怖いと感じますし、自分がわざわざ戦わなければならない理由も無いのでしんのすけは拒否します。そんなしんのすけですが自分の大切な家族が誘拐され平穏な日常が壊されるとなれば話は別です。戦う事が怖かったとしても大切なものを守る為には戦わなければならない時がある。

戦う事を決意したしんのすけは魔法のカードを即座に使える様に練習を行い、自分で朝食を摂り電車に乗りヒッチハイクをしてヘンダーランドに向かいます。これは5歳児には結構大変な事なのではないでしょうか。やっている事自体はぶっちゃけ地味ですが、ここには確実にしんのすけの成長が表れていました。この様に「ヘンダーランド」は特別では無い怖がりもする普通の子供が、恐怖を乗り越えて勇気を手にする成長物語になっているところも特徴と言えますね。

日常が侵食される恐怖
オカマ魔女を倒して欲しいというトッペマの頼みを断り、一度は普段と変わらない日常の世界に戻ったしんのすけ。ここから始まる敵の刺客ス・ノーマン・パーの暗躍がトラウマになる程に怖い。先生という肩書きを得て幼稚園に現れたス・ノーマンは最初のうちは親しげに話しかけるので、しんのすけも好意を抱いていましたがカードのことを聞き出そうとする姿を見て怪しいと感じ始めます。

そう感じたしんのすけがス・ノーマンは本当は悪い奴だと友達に話しても、マサオ以外からは嘘だと思われてしまいます。ス・ノーマンの存在に不安を感じながら家に帰ると、そこにはみさえと話し込むス・ノーマンの姿があります。ひろしもみさえもス・ノーマンとすっかり打ち解け合い、悪い奴だなんて微塵も感じていない為にしんのすけの言葉には耳を傾けません。しんのすけの言葉が友達や家族に信用されていないのに対し、ス・ノーマンの方は信頼を得てしんのすけの自宅という心休まるはずの居場所に平然と入ります。平穏な日常が明らかに狂い始めているのに周りはそれを疑いもしない。その自分と周囲の認識のずれが状況の異常性を際立たせ不気味さが増していました。