アニメごろごろ

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最近のアニメは質より量で視聴者の心を掴む


90年代から00年代のアニメには美少女が増えた以外にも、主人公やヒロインと同等の立場で物語を動かすキャラが増えたという特徴があります。恋愛ものでは主人公に惚れる女の子が次から次に現れて主人公争奪戦に加わり、アイドルものでは主人公が松田聖子みたいに単独で活動せずにAKB48みたいにグループを組んで活動して、ロボットものでは主人公だけが特別な機体を持つ事は減らされ敵も味方も量産機ではない専用機を持ち始め、魔法少女ものでは主人公以外にも魔法少女がいて競争や協力するのが当たり前。

色んなアニメを見ているとどうも作中に登場するヒロインやアイドルやロボットや魔法少女は増加傾向にあるんですよね。特権を与えられて活躍するのは主人公とヒロインだけの時代は終わりました。今はたった1クールか2クールしかない作品ばかりですから、普通なら時間が少ない分だけキャラを減らしていきそうですが、逆に色んなタイプのキャラを出して視聴者の多様な好みに対応します。この視聴者の好みに合う様々なタイプのキャラが現れた背景には価値観の多様化があります。

視聴者の価値観が多様化した理由は人権の尊重や娯楽が増えたなど幾つもあるのですが、個人的にはあらゆる価値観の人達と容易に接する機会を与えたネットの登場は当然として、世帯当たりのテレビの所有台数の増加とビデオテープレコーダーの普及の影響も意外とあるのではないかと考えています。これが無い時にはテレビの奪い合いが頻繁に起きて、子供が目にする番組も家族に合わせたものになりがちなんですけど、子供が家族の目を気にせずに何時でも好きな番組を見られる環境が整えば、自分の好みに合う番組を積極的に摂取する事が楽に行えるんですよね。

そこで見た番組が子供の好みにも影響を与え続けて、次第に家族や世間の好みから外れたものに変わります。これが極端に行き過ぎると簡単に言えば何かしらのオタクになるんですよね。あらゆる家庭でこうした事が起きると社会全体の価値観の多様性が急速に増して、大多数に支持される絶対的なものが失われるのだと思います。

そんな価値観が多様化した社会の中で何が受けるかは予測困難。多少の好みの違いなんてものを無視して視聴者を惹きつける圧倒的に質の高い作品を作るのが理想的ではありますが、それは時間と予算を考えると現実的にはまず無理な話ですから、次善策として色んなジャンルに手を出しながら受けそうなキャラを詰め込んだ作品が幾つも作られるのではないでしょうか。

これにはキャラの出番が分散されて下手をすると空気になるキャラが出てしまうという問題があるのですが、キャラが多い分だけグッズの種類を増やして利益に繋げやすいですし、上手にやれば出番の少なさが逆に二次創作を盛り上げる場合もあります。二次創作は原作に足りない部分を補う目的で行われる事もあるので、そういう時には原作で全てを語り過ぎずに想像の余地がある方が良い時もあるんですよね。

アイドルマスター」や「ガールズ&パンツァー」はそうした盛り上がりを見せてキャラが制作陣の手を離れて独り歩きしていると思います。それらの二次創作は個々に見れば原作ほどの魅力は無いのですが、それらの原作では語られない小さな物語が積み重なると物語世界に奥行きが感じられる。原作には存在しない妄想の産物なのでいい加減と言えば、確かにその通りなんですけど視聴者の中ではそれは本物に成り得ます。

昔みたいに4クールもの時間を割いてキャラの物語を丁寧に描けない代わりに、ネットの登場で活発に行われる二次創作を含めて視聴者を楽しませる。視聴者を巻き込む事を意識して二次創作がやりやすそうな遊び場を用意する作品は時々ありますよね。これもまた質より量で視聴者の心を掴む方法と言えるのではないかと思います。