アニメごろごろ

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ストーリーもバトルもキャラも魅力的な「仮面ライダーOOO」

平成仮面ライダーシリーズは同族の殺し合いや騙し合いが頻繁に起きる「龍騎」や「555」等の暗い作品もあれば、戦闘の最中でも笑いが起きる「電王」や「W」といった明るい作品もあります。魅力が作品毎に変わる為に評価が困難な平成仮面ライダーシリーズですが、その中から最も好きな作品を挙げるとしたら「仮面ライダーオーズ」を選びます。

必殺技やデザインだけなら他の作品の方が好みですが、物語の構成や挿入歌の使い方や俳優の演技等を総合的に評価すると「オーズ」を超える作品は現時点では無い。当然この意見に賛同しない方も大勢いると思いますが、この評価は自分の中では放送終了から数年経過しても変わりません。



最強フォームに頼らない
物語が進行するに連れて主人公には強敵を倒せる強大な力が必要とされ、新たな玩具を売り出す大人の事情も絡んで、強化されたフォームや新しい武器が必ず登場してきます。新しいフォームや武器を活躍させる方が玩具の売れ行きも伸びるので、それまでのフォームが途中から一切使われない展開は珍しい光景ではありません。

「キバ」なんかは最強フォームにあたるエンペラーフォームが中盤と歴代と比べて早い段階で登場した事に加え、使用条件が緩い為に殆んどの戦闘をエンペラーフォームに任せてしまい、ガルルフォームとバッシャーフォームとドッガフォームは無用の長物になりました。ガルルとバッシャーとドッガはフォームチェンジアイテムとしての職を失い、最終的にはエンペラーフォームのキバが扱うザンバットソードの砥石にされる始末。「キバ」はシュードランとかフェイクフエッスルとかブロンブースターとか作中で殆んど使われずに消えるアイテムが多いんですよね。

S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーオーズ プトティラ コンボ

S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーオーズ プトティラ コンボ

それに対して「オーズ」は強化フォームがどれも使用者の肉体に負担がかかり、特に最強フォームのプトティラコンボは使う度に主人公の火野映司のグリード化が進行する極めて危険な代物なので、そればかりに頼れない状況に置かれていました。

オーズの強化フォームにあたるコンボはクワガタ、カマキリ、バッタやライオン、トラ、チーターといった同系統のコアメダルを3種類揃えると使用可能なのですが、このコアメダルは敵となるグリードの魂や核の様な大切な存在である為に、戦闘中は互いに必死になりコアメダルを奪い合います。コアメダルをオーズが奪われれば強化フォームは当然使えません。「オーズ」ではこれにより特定のフォームだけ使われる展開を阻止。

変身アイテムが奪われて戦えない展開は「剣」にもありますが、この作品では変身アイテムのカードは敵が所持しても意味が無く、死ぬ気で奪う利点が相手が持たない事から強化フォームを封じられる機会は少ない。「オーズ」な変身アイテムが変身する為だけのものにならず、物語の展開に密接に関わる点が好印象。



コンボを使わずとも戦いを有利に進められる
クウガ」の様に状況に応じて各種フォームを使い分ける点も「オーズ」の魅力。例えば突風を起こす敵相手にはタコメダルの吸盤を使い踏ん張ったり、水属性の敵にはライオンメダルの放射熱を使ったりと、コンボにならない時のコアメダルにもこんな風に使い道があります。

個人的に一押しなのは空を飛ぶ敵を地上に落とす時の戦術。コアメダルの少ない序盤はバッタメダルの跳躍力とカマキリメダルの切断力を活かし、空を飛ぶ敵を捕まえて羽を斬り落とそうとしますが、後半になりメダルが増え始めると遠距離攻撃が可能なウナギメダルの鞭を使えば楽に落とせる。

戦闘中に何のメダルを使い戦いを有利に進めるのか判断するのは相棒のアンクの役割。終盤にアンクが消えた時には戦いながら自分で戦術を立てる破目になり、思い通りに事が運ばずに映司はアンクが側にいた事の意味を痛感します。映司とアンクの関係性の深さをこうした形で表現するのには思わず感心させられました。



濃密な火野映司の物語
面白い物語を作るには中心人物である主人公を魅力的に描かなければならず、主人公の内包する物語がどの程度まで展開されるかが重要な要素となります。「オーズ」の映司はその点はどうかというと歴代でもかなり密度の濃い物語が描かれた主人公。

初登場時は明日のパンツとちょっとのお金さえあればいいという信条の元に生きている変わり者にしか見えませんでしたが、物語が進むと自分を犠牲にしてでも誰かを救おうとする「Fate/stay night」の衛宮士郎と同類型の心が壊れた人物であると明かされます。旅先で内戦に巻き込まれた映司は村で知り合いになった女の子を助けようとしますが目の前で失い、他にも大勢の死者が出ていますが映司だけは親の払う身代金のおかげで解放され生き延びる。

これだけでも相当心に深い傷を残す出来事ですが、酷い事に政治家の親と兄弟は映司の村を救おうとした部分だけを取り上げ、悲劇を美談に作り変えて自分達の人気取りに利用してしまいます。映司はこれが原因で妙に心が乾いてしまい、自分の命に価値を感じられずに死を恐れずに、目の前で助けを求める人達に手を伸ばし始める。

自分の欲望を優先せず他者を優先する生物として壊れた映司の回復、この映司の物語を魅せる為に対となるキャラが登場します。自己中心的で他者を利用して蹴落としてでもコアメダルを揃えて完全体を目指すグリードのアンク、世界平和を望むなど理想と自尊心は高いが実力不足で現実が見えていない後藤慎太郎、医者として大勢を救う為にも自分の身を守る事を忘れない現実と理想の両方が見えている伊達明。

キャラの作り方が非常に上手いですよね。それぞれのキャラの物語を描いていけば自然と映司の抱える問題を浮き彫りになるわけですから。ちなみにこの中で最も人間的に安定していて大人だなと思えるのは伊達さん。

Fate」で例えると映司が士郎なら伊達さんは凛の様なキャラ。自分の限界を超えて無茶をしないところ、自己犠牲主人公の危うさを指摘するところ、頭脳労働者なのに肉体を鍛えているところ、機械の使い方に疎いところ、戦闘する度にお金がかかるところとか大体一緒。



子供向けの番組に相応しい内容
強い欲望は自分の身を滅ぼし他者も不幸にするが、何かを求める欲望は生きる力を与えて、自分を成長させる原動力にもなる。自分の力だけでは実現不可能な大きな目的でも、仲間の力を借りれば成し遂げられる。物語のテーマに関する結論は簡単に纏めればこうなります。

「オーズ」は「Fate」や「寄生獣」にも見られる絶対的な正義が不明な複雑な世界を舞台に、己の目的の為に他者を排除する怪物を主人公の相棒に配置したりと、子供向けとしては問題がありそうな展開にしながら、上記の子供向けの番組に相応しい教育的に大切なメッセージが込められているところが素晴らしい。

仮面ライダー龍騎 Blu‐ray BOX 1 [Blu-ray]

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龍騎」と「555」には勧善懲悪を否定した世界が描かれ大人も楽しめる深さがあるのですが、願いを叶える為には殺し合いすら厭わない人間や自分の嫌いな相手を執拗に攻撃する人間が目立ち、心を入れ替えたりもしないので積極的に子供に見せたい内容なのかと聞かれると答えに詰まります。

「オーズ」は「龍騎」のテーマを受け継ぎ欲深い人間の闇を描いていますが、こちらは罪を犯すのは人間の欲望から生まれたヤミーであり、ヤミーの悪行を目の当たりにした人間は殆んどが改心していきます。アンクは映司と対立して殺し合いますが、最後の最後に映司を殺せずに助ける道を選びます。裏切りやら何やら紆余曲折ありながらも結末はきちんと正の方向に向けられ、見事に大人にも子供にも見せられる物語のバランスが取れていました。


他者との繋がりが世界を変える
長い間独りで何でも背負い込もうとしていた映司が、最終回で助けを求めて掴んだ手は仲間達のもの。最初に手を取り合う相手が自分の知り合いというのは、映司の過去にしてきた事からすれば正しい形だと思います。それ以外の手を安易に借りると平和の為に使われると考えていた寄付金が、自分に知らない間に内戦の資金源にされた時と同じ事が繰り返されるかもしれませんからね。

善意が悪意に利用される事態を減らすには、信頼の置ける知り合いを頼るところから始めて、それでも力が足りないなら知り合いがさらに知り合いを頼ればいい。困難に立ち向かう時には周囲の人達を頼れという結論だけを語ると陳腐なものではありますが、そこに到達するまでに映司が歩んできた壮絶な人生の事を思えば、陳腐の一言では片付けられない重みが感じられます。余談ですが過去作品と比較すると「オーズ」はメインキャラの同級生や仕事仲間等の知り合いの登場回数が多いんですよね。

独りで戦う事を止めて他者を受け入れたのは映司だけではありません。掲げる目標は立派でも行動が伴わず失敗ばかりしていた後藤さんもまた出会いにより変わりました。最初は誰かの手を借りる事に抵抗感を抱いていた後藤さんですが、目の前の事に必死な映司や自分より高みにいる伊達さんの姿に影響を受けて何の役にも立たないプライドなんか捨て去り、目的達成に必要とあれば弟子入りでも地道な特訓でも土下座でも何でもするようになります。「オーズ」の物語で描かれた他者の手を借りる事と欲望を前に進む力に変換する事の大切さを忘れずに実践してきた後藤さんも映司と並ぶ物語を支える大きな柱となるキャラと言えそうです。