アニメごろごろ

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「落第騎士の英雄譚」最強のヒロインでライバルのステラ・ヴァーミリオン

ヒロインとしての努力も怠らない
落第騎士の英雄譚」の最新刊まで読み終えました。この作品はメインヒロインのステラの存在感が圧倒的。現在も刊行が続いている話題のライトノベルの中でメインヒロインのヒロイン力があれだけ高いのは「落第騎士の英雄譚」と「東京レイヴンズ」しかないのではないでしょうか。

近年は多様化した読者の好みに合わせて色んなタイプのヒロインを主人公と絡ませる傾向にありますが、この作品は主人公の一輝に惚れているのはメインヒロインのステラと一輝の妹の珠雫だけなんですよね。珠雫と一輝は血縁関係的に結ばれませんから、ヒロインはステラしかいないようなもの。

複数のヒロインを用意しない作風ではメインヒロインが読者に嫌われると作品の評価が大幅に低下する危険を孕んでいるのですが、アニメ化までしているところを見るとステラはとても魅力的だと大多数の読者には思われているのでしょうね。個人的にもステラはとても素敵なヒロインだと思いますね。

あれだけヒロインとしての風格の高さを感じさせるのは、複数のヒロインに見せ場を与えるハーレムものには容易に真似は出来ない。あまり抽象的な話ばかりしてもステラの何が良いのか伝わらないので、具体的にどこが素敵なのかを作品の内容に踏み込んで話していきますね。

ステラは強さを手に入れる為には死ぬ気で特訓したりと妥協しない性格ですが、それは恋愛面にも当て嵌まり一輝と付き合い始めた後も好かれる努力をしています。一輝の優しさに触れた女性が好意を持つのはある意味当然なのだから、一輝に言い寄る女性が現れる事なんかにいちいち腹を立てたり、恋人は自分なのだと騒ぎ立てるのは美しいとは言えない。そんな事をするよりも恋人という立場に甘えずに一輝に誰よりも愛される自分であろうとする。

主人公を好きだという自分の気持ちを認めずに冷たい態度を取るヒロイン、主人公が女性と仲良さそうにしていると不機嫌になるヒロインが大勢いる中で、ステラみたいな誰かを愛する事に真剣なヒロインは珍しいですよね。愛して愛される為には自分はどうあらねばならないのと考えて、恋愛関係を持続させる努力を欠かさないのは大したものだと思います。


他者に対する思い遣り
あとステラが素敵だなと思うところは珠雫に対する優しさ。
短編集にはステラが一輝の伴侶になるのに相応しい女性か確かめる試験を行い、その合否でステラと一輝の関係を珠雫が認めるかどうか決める話があります。ステラはそこで反則染みた珠雫の卑怯な妨害に耐えて見事合格。翌日試験の結果をアリスに聞かれた珠雫は嫌々ながらステラが合格したと口にする直前、ステラの方が横から入り込み自分から不合格だったと嘘の報告をするんですよね。

何故ステラはそんな自分の損になる事をしたのかというと、試験の夜に悔しさで寝ながら涙を流す程に兄を愛する珠雫の姿を目にして、自分と一輝が恋人になる事を認めるのは珠雫にとって辛いだろうと考えたから。こんな風に自分を嫌う珠雫にも気を遣えるステラは器がとても大きいですね。ステラが自分の事ばかり考えずに周りに目を向けられるのは両親の教育のおかげもあるんだろうと思います。


本気を出さない強者の余裕
ヒロインとしてのステラについては書き終えたので、ライバルとしてのステラについて書き始めます。七星剣武祭の頂点を目指して切磋琢磨してきた一輝とステラが挑む七星剣武祭決勝戦を盛り上げるには、主人公の一輝のライバルであるステラをどこまで強敵に演出するのかが鍵。

そこそこ強いだけでは一輝がそれまで相手をしてきた昨年度優勝者の諸星雄大、世界最強の剣士のコピーさえ描き出せるサラ・ブラッドリリー、望みを何でも叶える能力で不戦勝すら引き起こせる紫乃宮天音に見劣りするので、そうならない為にもステラを強者に見せる工夫が凝らされています。

七星剣武祭編は主に一輝の試合とステラの試合のパートに別れていて、前者では対戦相手の物語を通じて一輝の抱える家族の問題や過去を掘り下げ、後者ではひたすらステラのラスボスとしての風格を高めていきます。非常に面白いなと思ったのはステラの初戦。本来なら1対1で行われるところをステラは試合に遅れた罰として自ら1対4の変則的な試合を提案します。1対1で強敵を倒す以外にもこういう魅せ方があるんですね。とりわけ上手いなと感じたのはステラはただ罰を受けるつもりであんな事を言い出した訳ではないところ。

普通に勝ち進むだけでは七星剣武祭前に学校の仲間を強襲した暁学園の連中をぶちのめせないから、罰を受ける名目で対戦相手の巨門学園の鶴屋美琴と暁学園の3人をまとめて相手にする。勝利さえすればいい暁学園の選手はその提案を断る理由がないからステラの思惑通りに誘いに乗り、協力してステラを真っ先に叩き潰そうとしてきますが、ステラは修行で得た圧倒的な力で返り討ちにする。

この時の戦い方がまた無茶苦茶なんですよね。相手の力量を測る為にあえて攻撃を受け止め、何段階力を落とせば殺さずに済むのかを確かめる。多々良幽衣に攻撃を反射されて腕が粉々に折られるも、そのまま折れた腕を強引で殴り倒し、使い物にならない腕は能力の炎で溶接して治療。本気を出せばそんな事をせずとも暴竜の咆哮で会場ごと相手を吹き飛ばせますが、大会運営者がその攻撃から観客を守れるか確証を得られるまでは控えていました。1対4の不利な試合でもステラには苦戦するどころかそんな余裕すらあります。


一輝との試合に懸ける想いの強さ
準決勝で学生最強と思われていた黒鉄王馬を相手にした時には、試合の中で剣を自分の肉体に取り込み発動する新技で圧勝。恐ろしいのは王馬に圧勝した事よりも剣を取り込む動きが本当は必要ない事にあります。それが必要だと見せかければ騙された一輝は決勝戦でその隙を必ずを狙うはずなので、ステラにとっては一輝にカウンターを決める絶好の機会になる。

準決勝を決勝戦で一輝に勝利する為の布石にされたら、ステラをライバル視していた王馬の立場はないですよね。ステラにとって決勝戦以外は一輝と戦う前の準備運動に等しい。試合に常に全力で挑んでいた一輝とは対称的。ステータスでは一輝を圧倒的に上回るにも関わらず、慢心の欠片も持たずに虚をついた戦略まで立て、殺す気で襲い掛かるステラはまさに最強のライバルと呼ぶに値する化物。


「たぶん次の一合がアタシたちの最後の勝負になる。だから今、誓うわ」

「たとえこの一合で貴方の命が終わっても、アタシは生涯、貴方だけを愛し続けると」


これはもう一輝の方も優勝しなければ卒業認定を受けられないとかそんな次元にいませんね。最愛の少女に殺されて彼女を不幸な未亡人にしてしまうわけにいかないから打ち破るとか一般人の理解の範疇を超えています。愛する者に躊躇わずに剣を向けて本気で騎士の高みを目指す一輝とステラ、それ程の強い意志を持つ者だからこそ互いに惚れたのでしょうね。

薬師キリコから強い相手と誇り高い勝負をしたいなんておめでたい事を言っているうちは悲愴なまでの義務感で戦う諸星には絶対に勝てないと言われながら、一輝が意外と余裕で諸星に勝利してしまえた事に最初は疑問を抱いていましたが、ステラとの試合に懸ける想いの強さを見れば答えは語るまでもありませんね。

「落第騎士の英雄譚」の絶妙に改変された脚本はアニメ化の理想形 - アニメ見ながらごろごろしたい