アニメごろごろ

楽しんで頂けたらツイートなどしてもらえると喜びます。

女性が主人公の面白い軍事漫画

軍事や戦争を題材にした漫画は絵柄がデフォルメされたものよりリアルに寄せたものが多い上に、戦場が舞台になると男性比率がどうしても高まり華が無く、昨今のアニメに見られる萌え系の絵柄に慣れ親しんでいると手に取りづらい方もいると思います。そんな方でも比較的読みやすいと思われる女性を主人公にした評判の高い漫画を幾つか紹介します。ネットで試し読みが可能なものはリンクも張りました。

Pumpkin Scissors(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

Pumpkin Scissors(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

パンプキン・シザーズ
最初の数巻は軍事面の描かれ方が「進撃の巨人」と同程度と青年漫画としては物足りなさもありますが、物語が進むにつれ語られる内容が加速度的に複雑さを増していき、最新刊では記事で紹介しているどの作品にも引けを取らない深さがあります。この作品の魅力は大人が楽しめる難しい話が繰り広げられる一方で、子供が楽しめる少年漫画的な熱さを決して失わないところ。

正しさが分からない世界の中で綺麗事と嘲笑されようとも理想を追い求めて正義であろうとする主人公、悪役を倒そうと奮闘する主人公達の姿に勇気を貰い立ち上がる民衆、巨大な武器を持ち戦車を破壊する巨漢の男とか細腕で強者を次々に倒す美少女といった絵的な派手さも忘れません。

この作品を語る上で絶対に外せないのが主人公のアリス・L・マルヴィンの生き方。貴族の誇りを失わずに民を守る者として尽力する道を選び、自分の幸福を求めずに危険な戦いに身を投じるアリスの生き方は「Fate/stay night」のセイバーと同系統なので、あの姿に惹かれた方ならば4巻まで読めば絶対に楽しめると思います。そこまで読めばアリスが理想ばかり口にして現実の見えないお嬢様ではない事が分かるはずです。大好きな作品なので語りたい事はまだまだ沢山あるのですが割愛します。


乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ
この作品は中央ヨーロッパで起きたフス戦争を題材にしていて、宗教対立や聖歌隊の役割の他にもマスケット銃が戦争に与えた影響と、歴史的に興味深い内容が多数盛り込まれています。「乙女戦争」を読むと信仰の為に命を捨てる覚悟を持つ信奉者、女子供でも扱える携帯可能な銃火器、優れた戦術家の組み合わせというものが、戦争においてどれだけ凄まじい戦果を挙げられるのかが分かると思います。

そうした知識を得られる以外に少女が男共に襲われるなど、男性読者が喜びそうな場面があるのも魅力的ですね。戦争を描いているので当然血生臭さと残酷さはあるので苦手な方もいると思いますが、そこは天使みたいに美しい心を持つ主人公のシャールカの存在が緩和しています。これと同じ様に宗教を描いた最近話題の漫画に「辺獄のシュヴェスタ」というものがあるのですが、そちらの主人公が復讐鬼と化しているのを見ていると、不幸な目に遭いながらも汚れないシャールカの天使っぷりを特に感じますね。

記事の主旨からは外れますが「辺獄のシュヴェスタ」も良質な漫画なのでお勧めします。隔離された空間で集団を飴と鞭を使い飼い馴らす方法が詳細に語られているところなんか面白いですよ。時間をかけて洗脳して復讐心すらも奪おうとする仕組みには背筋が凍ります。

乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ / 大西巷一 - ニコニコ静画 (マンガ)


GROUNDLESS
1巻は狙撃手として自警団に志願した主人公の復讐劇が描かれ、2巻からは自警団が深刻な人手不足の中で悪戦苦闘する話が始まります。影待蛍太先生は線画が独特なので多少読み手を選ぶかもしれませんが、空間の奥行きを表現するのは超絶上手いです。3巻では久しぶりに漫画という平面的な媒体の中に立体を感じました。

「乙女戦争」では命令に忠実な兵士が大勢いますが、こちらにいるのは指揮官の命令を聞かないとか殺す覚悟が無いとか、戦場で活躍するどころか足を引っ張りそうな兵士ばかり。思い通りに動かない連中と戦場に向かわければならない指揮官は戦死するより先にストレスで死ぬのではないかと心配になります。「GROUNDLESS」は人材にも物資にも恵まれない状態のまま戦う自警団が見所ですが、仲間を守る為に大勢を殺さなければならない狙撃手や革命を企てる解放軍の争いに巻き込まれる市民もまた見所。

解放軍が革命を成功させれば生活が豊かになると信じて協力する市民もいれば、解放軍を暴徒だと考えて自警団等に守られる事を望む市民もいます。この両者の境はとてもいい加減なものなので、何か問題が起きれば市民は簡単に反対側に転びます。相手を倒すには市民の被害を気にせず銃を連射したり建物を破壊すれば容易かもしれませんが、そんな真似をしたら未来がないのは目に見えています。

敵にも味方にも成り得る普通の市民をどう取り込んでいけばいいのか、自警団も解放軍もそうした市民の顔色を窺いながら行動を起こさなければなりません。戦闘に参加しない市民が戦況に与える影響がこれだけ明確に伝わる作品は貴重です。


まりんこゆみ(1) (星海社COMICS)

まりんこゆみ(1) (星海社COMICS)

まりんこゆみ
海兵隊員の過酷な訓練風景を可愛い女の子を通してコミカルに描いた作品。漫画は「SHIROBAKO」に登場する野亀武蔵先生のモデルとなった野上武志先生が担当、原案が海兵隊出身者だけあってマニアックでリアリティのある話がそこかしこに見られます。上官による厳しいしごきを受けて海兵隊員として成長した後は、沖縄基地という日本人と密接な関係のある場所を舞台に物語が展開されます。

ニュースでは沖縄基地の存在は悪い面ばかりが報道されていて、それ以外に何があるのかは積極的に情報を集めないと分からないのですが、この作品では地元住民との関わり方とか兵隊の生活が描写されているので無知な読者的には助かりました。もちろんフィクションですから鵜呑みには出来ませんが、沖縄基地を悪いものとする価値観から逃れる為の視点を得るには役に立つと思います。4コマ漫画なので基本的には軽い雰囲気で物語は進んでいきますが、私達の生きている現実と接続させて読むとちょっとした台詞にも重さを感じさせられます。

『まりんこゆみ / Marine Corps Yumi』著者:野上武志 原案:アナステーシア・モレノ | 最前線