アニメごろごろ

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男女平等思想の浸透が戦闘美少女ものを増やす

オリジナル新シリーズ ダーティペア VOL.4 [DVD]

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戦闘美少女ものの類型
戦闘美少女ものは日本では常に新しい作品が作られる大人気のジャンル。
少年同様に戦いに興味を持つ少女の需要を掘り起こした「美少女戦士セーラームーン」と「カードキャプターさくら」と「ふたりはプリキュア」。男性向けに作られたセクシーな女性主人公達が活躍する「ダーティペア」と「爆裂天使」と「ヴァルキリードライヴマーメイド」。

美少女が少年に守られる立場から共に戦う立場になる「新世紀エヴァンゲリオン」と「魔法先生ネギま」と「灼眼のシャナ」。少女向けのはずなのに大きなお友達に受けた魔法少女ものを下地に作られた「魔法少女リリカルなのは」と「ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」と「魔法少女まどかマギカ」。

BLEACH  2 (ジャンプ・コミックス)

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こうした美少女が戦う作品は90年代から増え始めて、00年代には浸透した印象があります。少年漫画では90年代前半は「るろうに剣心」とか「幽遊白書」とか戦闘は主人公となる男性の役割で美少女は主人公の無事を祈るだけみたいな作品がありましたが、90年代後半になると「烈火の炎」とか「東京アンダーグラウンド」とか脇役の男勝りな美少女が仲間として戦う作品が作られるようになり、00年代になると「BLEACH」とか「武装錬金」とかメインヒロインとなる美少女が主人公と共に戦うようになりました。

これは男女平等化が進む社会が美少女を守られるだけのキャラにせず、男性と同じ様に活躍させるようにしたのもあると思いますが、その他にも男性が美少女に守られたいという願望も影響しているのかもしれません。余談になりますが特撮でも女性が活躍していて95年前後の「ウルトラマンティガ」と「忍者戦隊カクレンジャー」ではリーダーが初めて女性になりました。


戦わされる人生に疲れた男性達
さて「デビルマン」にしても「ドラゴンボール」にしても「ダイの大冒険」にしても、旧世代の作品に登場する男性主人公は、あまり戦う事に悩まず前に突き進める性格ばかりでした。そうした強い生き方を見せられると読者は惹かれもしますが、そればかり見せられるのはそれはそれで辛いんですよね。

主人公と異なり読者は弱いので厳しい現実に直面すると心が折れそうになり、自分で決めた目的の為でもそんなに頑張れませんから、彼らの眩し過ぎる姿を見ると時に自分の弱さに少し落ち込みそうになります。弱い生き方も認められても良いのではないかと考えて、それを肯定するような物語を期待するようになる。

経済が伸び悩んでいるとはいえ豊かな社会が国民に無理をして努力する意味を薄れさせ、個性が大事であるとか個人の権利が尊重される社会が甘えた考えを許す余裕が生まれると、英雄にはなれない生き方を肯定されたいという空気が作られます。そんな空気の中で少年漫画やアニメを高校生や大人になっても楽しむ層が増えて、作り手が小学生に向けた子供騙しの幻想だけを見せ続ける必要が消えると、作品の対象年齢が上がりますから主人公の複雑な内面も描けるようになります。主人公が戦いから逃げて悩み続けた「エヴァ」という当時の流行から外れた斬新な作品が生まれた背景にはこれがあると思います。

そうした作品が受け入れられると従来の熱血漢の英雄的な主人公を作ろうとする圧力が弱まり、「未来日記」や「惑星のさみだれ」みたいに消極的な巻き込まれ型主人公を増やします。ヒロインはそんな消極的な主人公を事件に巻き込み戦う動機を与える役割を担うわけですが、男女平等を目指す社会では巻き込まれた主人公だけに戦わせるのはあまりにも酷い話なので、ヒロインの方も命を懸けて戦わされ主人公と対等な立場になります。美少女が戦う機会が増えたのには、こうした流れがあるのではないかと。

らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)

らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)

90年代から00年代にかけてはアニメの転換期なのか色んな作品が誕生したと思います。美少女が戦闘に積極的に参加したり、ハーレムラブコメが作られたり、それらがバトルと組み合わさりライトノベルの定番となる。あの時代にオタク向けの作品を広めた功労者と言える赤松健先生の「ラブひな」と「ネギま」の源流にあるのが「めぞん一刻」と「うる星やつら」と「らんま1/2」にあると思うと、それらを作り上げた高橋留美子先生の功績は恐ろしい程に大きいですね。アニメの対象年齢が上がり始めた事から悪役側にも自分なりの正義があったり悲しい過去があったりと共感や同情する部分がある作品もありふれたものになりました。

アニメではありませんが「仮面ライダー龍騎」や「テイルズオブファンタジア」もそうした作風。そんな善と悪の境が曖昧な物語を小さい頃から摂取してきたおかげで主人公が悪役の様に殺生も厭わない「デスノート」や「コードギアス」が倫理的に駄目だと批判されず大勢に好まれるのではないかなと思います。あの時代にはこれまでの常識を破る傑作が生まれた反面、新しいものを作ろうとしたのか迷走して最終回をぶん投げた作品もあった気がしないでもない。

後世の作品に与えた影響は少ないので語られる事は少ないのですが、2000年前後のアニメを語る上で欠かせないのはモンスターを題材にした作品。「遊戯王デュエルモンスターズ」に「モンスターファーム」に「デジタルモンスター」に「ポケットモンスター」に「真・女神転生デビルチルドレン」に「六門天外モンコレナイト」。アニメにはなりませんでしたが「ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド」と「サモンナイト」もありますし、日本史上最もモンスターが脚光を浴びた時代でした。