アニメごろごろ

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「風立ちぬ」堀越二郎とカプローニの固有結界

風立ちぬ」では現実には起こり得ない不思議な世界が描かれます。それは冒頭の飛行機を操縦する二郎の夢であったりカプローニと二郎の共有する夢であったりと幾つか有ります。この非現実の世界の種類について語りたいと思います。


次郎の妄想の夢
最初に描かれた子供の頃の二郎が飛行機を操縦する夢。この夢は他とは性質が異なりカプローニは現れず、二郎が謎の黒い存在に飛行機を落とされたりと、自分の意思が夢に反映されません。これは私達が普段見るのと同じ睡眠中に見るただの夢です。この夢にカプローニが現れない理由については、この時の二郎がカプローニの夢と違う景色を見ているからではないでしょうか。

成長した二郎とカプローニの関心は飛行機設計に向けられ、飛行機を操縦する事には一切向いてはいません。飛行機の操縦は一流のパイロットに任せればいいのであって自分達の取り組む分野では無いと分かっているんですよね。そっち方面の才能が無いことを自覚しているから挑もうともしない。

それが大人の二郎なんですが子供の頃の関心はそこよりも操縦士に向いていました。その為に既に飛行機設計のみを考えているカプローニの夢とは見ている景色が異なり夢が繋がらなかったのでしょう。しかし次第に二郎は近眼だから操縦士は諦めなければならないのかと考え、近眼でも出来そうな関心が設計に向いてきました。それが飛行機設計を生き甲斐とするカプローニの夢と接続させたのだと思われます。



技術者の透視と未来視
膨大な知識と想像する能力を持つ技術者の二郎には空を飛ぶ飛行機の内部構造が外からでも透視したかの様におおよそ把握出来てしまい、飛行中に壊れた飛行機のどこに問題があるのかも壊れる直前にある程度は見抜いてしまいます。同じ飛行機を眺めていても知識の無い凡人と優れた技術者では、そこから得られる情報には想像を絶する程の差がある。それはもう文字通り見えている世界が違うと言っても過言ではありません。その凡人には解せない光景を誰にでも分かる様に、技術者視点で映像化すると上の画像みたいになります。



仲間と共有する幻想
先程述べた優れた技術者にしか見えない世界を複数の人間で共有すると、二郎が技術者を集めて新たな飛行機設計の話をしている際に見えた映像になります。ここにいる技術者は二郎程では無いにしろ相当飛行機設計に関する知識を持っています。彼らは二郎の説明を聞けば二郎の描いている飛行機が、どの様な姿をしているのか頭の中に鮮明に思い浮かぶ。この現象は二郎が本庄との会話中にも起こりましたね。他の作品ですが「SHIROBAKO」の二話で描かれていた「アルピンはいます」もこれと同系統の表現になります。



同じ夢を抱いた者達の夢と夢の接続
上で説明した集団幻想をさらに一段階上げたものが二郎がカプローニと邂逅する夢。ここは同じものを夢見た者だけが訪れる事の出来る場所です。カプローニの言葉を借りれば夢の王国。神聖な場所なので妄想として現れるのも、操縦士に職工やその親戚と飛行機を愛している者達ばかりです。ここには二郎が最初に見た夢の様に、飛行機と無縁の黄色い声を送るだけの単なる町娘なんかは現れません。

ここを自らの意思で訪れるには飛行機を創る夢を抱いている事が条件であり、そこには言語も距離も生死すらも問われません。この不思議な夢は言うなれば「Fate/zero」に登場するイスカンダルの固有結界であるアイオニオンヘタイロイなんですよね。時空を越え召喚されるイスカンダルの臣下みたいに死んだはずの菜穂子もこの夢の王国に召喚されます。

ここに菜穂子は自らの意思で訪れ二郎を待ち続けていましたが、その行為に菜穂子の二郎に対する深い愛情を感じます。この飛行機を創る夢を抱いていなければ来れないであろう場所に菜穂子がいられたのは、二郎の夢が自分の夢にもなっていたからなのではないでしょうか。カプローニの夢と同じものを見ている二郎、そんな二郎の夢を菜穂子が心の底から応援していたからこそ、間接的にカプローニの夢と繋がることができた。

菜穂子が男性としての二郎だけを愛して、飛行機の設計士として仕事をする二郎を見ていなかったら、きっとあの場所に呼ばれる事も無かったと個人的には思っています。大人の恋愛では「仕事と私どっちが大切なの」みたいな口論がありますが、菜穂子はそういう自分本意な意見を口に出さないどころか、菜穂子を気遣い我慢して煙草を吸わない二郎に自由に吸わせてあげました。

二郎が少しでも仕事をしやすい様にする菜穂子の行為はまさに愛情と呼ぶに相応しいものですね。最後に死んだはずの菜穂子があの夢に現れたのは、彼女の二郎に対する愛情の深さの表れでもあると思うと彼女の生き様がとても素敵なものに見えてきます。