アニメごろごろ

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最も残酷な死に方とは無意味な死

物語に悲劇性を付与する為に最も用いられているであろう「死」。これには自殺か事故死か等々幾つかの種類と分類方法がありますが、今回はそれを死亡するキャラの重要度と死に付随するドラマ性の高さの二軸に分けて分類します。キャラの重要度とは作中の役割の大きさや出番の多さ、ドラマ性は物語を動かす為に必要であるとか消費者を感動させ泣かせる意図を持たせたものと捉えて下さい。

まずは重要度の高いキャラのドラマ性の高い死ですが、これは「グレンラガン」のカミナの死や「コードギアス」のユーフェミアの死が該当します。2人の死はその後の主人公達の行動を変え、物語の流れにも多大な影響を及ぼしました。これが無ければ主人公達は世界を救う事も無かったでしょう。

2人の様な見せ場の多いキャラには愛着を持っている消費者も大勢いるので、そうしたキャラの死は容易に消費者の涙を誘います。物語の流れにも感動させる為にも役に立つ死。魅せ方が巧ければ感動を呼び込んで作品の評価が急上昇しますが、下手だと逆に泣かせようとしている制作者の意図が透けて見えて消費者が白ける諸刃の剣。多用すれば消費者がキャラの死に慣れて、死に伴う感動の価値が下がるから要注意。

次に重要度の低いキャラのドラマ性の高い死。大半の消費者は名前程度しか語られていない出番の少ないキャラには思い入れも無いので、別に死んでも悲しみも無ければ泣きもしません。この死の長所は使いやすさに有ります。

メインキャラは作品人気や物語展開の都合上、何時でも好きな時に簡単に殺せたりはしませんが、名前すら無いモブキャラであれば大量に消えても問題無い。その質より量の死をもって大勢の人々が犠牲になる戦争等の悲惨さを見せつけ、それが世界を平和にしたいといった主人公達の動機形成に繋がります。ユーフェミアによる虐殺された日本人の死もこの種類に分類されます。

上記の死からドラマ性を下げると物語展開上には大して必要無い、雰囲気作りの為だけの死になります。これには悪役の残虐性を表現する為に誰かを殺したり、グロテスクな死に様を見せ読者の関心を惹いたり、次々に死ぬ姿を描き世界の残酷さを演出するといった効果があります。

これらは主人公達の内面には何も影響を与えません。「ガンツ」や「進撃の巨人」では頻繁に使われていますね。「ガンダム」にある様な主人公の強さを表現する為に紙屑同然に破壊される量産型ロボットのパイロットの死なんかもそれに入ります。

進撃の巨人(16) (講談社コミックス)

進撃の巨人(16) (講談社コミックス)

ここからが今回の記事で書きたかった本題なんですが、四つ目の重要度の高いキャラのドラマ性の低い死というのは非常に少ないんですよね。上記の死にそこそこ近い描かれ方がされているのは「進撃の巨人」だとハンネスさんやマルコの死になると思います。まあこれは最適な例では無いのですが知名度を考えると伝わりやすいかなと。

ハンネスさんはメインキャラと呼べる程ではありませんし人気も低いですが、初期から登場していますし主人公のエレンの知り合いで大人の中では親しい間柄でした。エレンの父親に対する恩とエレンの母親を救えなかった後悔もあり、描こうと思えばかなりのドラマを展開するだけの背景が語られていたキャラだと個人的には思います。

そんなハンネスさんの最後はそこらのモブキャラが死んだのかと思ってしまう程にあっさりしたものでした。雑誌掲載当時にそう感じた読者の姿は検索すると簡単に確認出来ます。マルコの死もジャンから「誰しも劇的に死ねるってわけでもないらしいぜ」と言われる程にあっけないものでした。

折角作り上げたキャラを大した意味も持たせずに殺して、消費者にも感動を与えないのは勿体ないので普通は行いませんが、その無意味にも思える不条理な死によってしか表現出来ない事もあります。物語では重要度の高いキャラほど劇的な死を迎え、また唐突に死ぬ事も有りません。「アルドノアゼロ」とかの戦争ものが分かりやすいですが、兵士が次々に死んでいる中でもメインキャラだけは幸運にも生き残りますよね。

物語である事を忘れて現実的に考えればメインキャラだろうとモブキャラだろうと死ねば悲しむ家族や仲間がいますし、何時死ぬかは分からない運命にあるはずなのに、物語に働いている力がそれを許さずに死の描かれ方には優劣がつけられます。モブキャラは簡単に死にますし、死んでも適当に流されます。この差別を行わずにメインキャラだろうと物語の力に守られない、世界に生きる人間の一人でしか無いと表現する際に、この重要度の高いキャラのドラマ性の低い死が活きてきます。

それなりに出番のあるキャラにも劇的でも何でも無い死が突然訪れる事があると示しておけば、何時誰が死んでも不思議では無いと消費者に思わせ緊張感を持たせられます。現実では誰しも事故死や病死する危険があって、それは何時起きるのかも予測不可能です。そうしたリアリティを物語の世界に与える役割が、この四つ目の無意味な死にあるんですよね。

死は基本的に悲劇的なものとして扱われますが、この必然性の無い無価値な死はその中でも最も悲劇的と言えるでしょうね。重要度の高いキャラの死であれば劇的に魅せる事も可能なのに、作者がそれをしないという事はキャラの持つドラマを作者自身が殺す様なもので、個人的にはキャラにとってそれより残酷なものは無いだろうと考えています。