アニメごろごろ

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昔と今のアニメにおける脚本家の仕事

宝箱―TREASURE BOX―/プラチナジェット(TVアニメ『SHIROBAKO』新オープニング/エンディングテーマ)(初回限定盤)

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タイトルには分かりやすさを重視して脚本家と書きましたが、監督含む脚本作りに関わるスタッフ全般と捉えて下さい。最近のアニメの特徴としては1クールや2クールものの増加、小学生以下を対象にしたもの以外は殆んど深夜枠、ライトノベル原作のアニメの増加、キャラソンやフィギュアと関連グッズが多数作られること等が挙げられます。

こうしたアニメの変化は誰を対象に何を売り利益を上げるのかといった事に影響を及ぼしてきたと思いますが、それ以外に制作者側の仕事内容もまた変わってきたのではないでしょうか。今回はその中でも脚本について考えてみたいと思います。


玩具を売る為のアニメの終焉
20年以上前のオリジナルアニメは幾つもの魔法少女ものやロボットものを見ると分かると思いますが、玩具販売と密接に結び付いている事が今以上に多かったんですよね。これらのアニメは玩具販売会社等にスポンサーになってもらい、彼らの意向を汲んで作らなければならなかった為に、玩具を売る為に急遽路線変更を迫られたり打ち切られることもしばしばあったそうです。この話に関しては「ガンダムを創った男たち」を読んだり「ミンキーモモ」について知るのがお勧めです。

話を戻しますがこの時代は少子化により玩具が売れない様になり、玩具販売会社がスポンサーから降りたことで終わりを迎えたのですが、これにより良くも悪くも玩具販促という縛りのないオリジナルアニメを容易に作れる様になりました。勿論商売である以上は大人の事情により美少女を出せとか様々な制約は付けられてしまってはいるでしょうが、全体的に表現の自由度が以前より上がっているのは間違いないと思います。

アニメの視聴者層が高年齢化したことで難しい話も作れますしね。アニメが玩具を販売するのに便利な魔法少女ものやロボットものに限定されず、幅広いジャンルを手掛けられるのは喜ばしい事ですね。

オリジナル展開の激減
00年代前半までの漫画原作アニメは2クール以上やることが多かったのですが、2クールや3クールもやるとアニメが原作に追いついてしまう事態が多発します。そうなるとオリジナル展開を入れて話数を稼がなければならない。これは最近でも「ナルト」や「ワンピース」等幾つかありますが、違うのはオリジナルエンドが減ったということです。

最近はアニメの対象年齢が上がったこともあるのかアニメの続きが見たければ金を払って原作を読めというスタンスで、主人公達が目的を達成せずに伏線も放置したりと中途半端なところで終わらせてしまいます。バトルものなら敵対勢力の幹部を倒しただけで終わったり、ラブコメなら好きな相手と付き合うのか答えが出ずに終わったりとかですね。

これが昔の作品になると原作に手を出せない子供も大勢見ているからかアニメだけで綺麗に完結させようというスタンスで、俺達の戦いはこれからだと投げっぱなしにする終わり方は現在よりも少なめでした。綺麗に終わらせる為に中盤以降からオリジナル展開にすることも珍しいものではありませんでした。

ただこのオリジナル展開は原作ファンからの反感をほぼ確実に買ってしまいます。これは原作ファンを対象に高い円盤を売りつける現在のアニメの商売方法とは相性が悪い。その事と1クールものが主流になり原作を追い越す心配がないことから、最近のアニメにはオリジナル展開は減ってきているのではないかと。

余談ですが中盤以降オリジナル展開になりながら大ヒットした「鋼の錬金術師」のアニメは好き嫌いは別にして凄いと認めるしかない傑作だと思います。

台詞を取捨選択する能力の必要性
オリジナルも原作付きも1クールが主流な昨今のアニメ。昔は金になるコンテンツであれば当初の予定よりも放送期間が延ばされていたので、脚本家には物語を引き伸ばす能力が求められましたが、最近は逆に圧縮し纏める能力が求められています。たった1クールしかない環境になると箸休めの日常回といった本筋からはどうでもいい内容をやる暇は有りません。

4クールもある「プリキュア」の様に特定のキャラを掘り下げる為だけの回を入れる余裕は無いので、「まどかマギカ」の様に本筋を凄まじい速度で進めながらキャラの魅力も出さなければなりません。一からファンを作らなければならないオリジナルの場合には、これが失敗すれば目も当てられない結果になりますが、その代わりに成功した時の見返りも大きいです。

それは数万枚も売れている作品にはオリジナルアニメが多いことから言えると思います。原作があれば多少アニメの出来が悪かろうと熱狂的な原作ファンは買いますが、基本的に原作こそ至高という考えなのでアニメが良作程度だと熱は意外と低めなんですよね。アニメに対する盛り上がりの高さは展開が読めないオリジナルの方が強まりやすい様に感じます。

さて原作付きの場合は俺達の戦いはこれからだエンドが可能とはいえ、そこそこ区切りのいい箇所まで進めなければなりませんから、台詞を大幅に削らざるを得ない事も多いです。漫画原作の場合は原作の台詞の8割以上をそのままアニメに使うこともありますが、これがライトノベルやゲーム原作の場合はそうなることは殆んど有りません。

ライトノベルでは1クールで原作小説の3巻や4巻まで進めるのが主流ですが、これは漫画原作のアニメと比較すると二倍近い速度で進めていることになります。唯でさえライトノベルはアニメ化すると地の文による説明が無い所為で視聴者に伝わる情報が減らされているというのに、それだけの速度で進めようとすれば台詞も相当削ることになり意味不明な物語になりやすい。

ライトノベル原作のアニメがつまらないと言われる背景にはこれも大いに関係していると思います。ただ丁寧に進めると魅力的なキャラが登場するところまで進まないのが問題なんですよね。少々話が逸れましたが1クールものとライトノベルの登場により、脚本家には物語を作る創造力よりも要点を抑え詰め込む能力が役に立つ時代になったんじゃないかなと。「SHIROBAKO」の脚本家志望のディーゼルさんこと今井みどりは小説を書かずに先輩に頼まれたアニメに使う資料集めばかりしていますが、そこで培った能力というのは実は脚本家に繋がるのではないでしょうか。