アニメごろごろ

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荒川作品に登場するキャラの生き方は大人びている

荒川先生の作品には子供でありながらしっかりとした考えを持ち自立しているキャラが多いなと思う今日この頃。「鋼の錬金術師」のウィンリィ機械鎧整備士として働いており、さらには一流の技師を目指して他所に弟子入りするなど向上心が非常に高い。ウィンリィよりも年下のメイは一族の将来の為に、一人で賢者の石を探す旅に出ています。考えてみたら一番最初のエピソードに「立って歩け。前に進め。あんたには立派な足がついてるじゃないか」と自立を促す台詞がありますし、そこについては等価交換に並ぶ作品世界の理の一つなのかもしれません。現実とは文明も文化も異なるファンタジーの世界であれば、子供でありながら大人と変わらない位に自立したキャラがいても、個人的には不思議に思わなければ珍しいとも思いませんが、荒川作品の場合はそれが現実を舞台にしても変わらないんですよね。

現代日本の天才でも何でも無い普通の高校生を描いた「銀の匙」においても、将来について真剣に考えて行動しているキャラが何名もいるあたり、これはもう作風なのかなという気がしています。現実においても物語においても大抵の高校生は恋愛や部活や勉強に励んだり、それなりに何かに打ち込み目的を持って生きていますが、将来的にどの様な仕事に就いて何をするかまで先を見据えての行動は殆んど見られません。例えばスポーツものでは全国大会優勝を目指すといった短期的な目標はあっても、そこから先の目標がまるで考えられていないことは少なくありません。全国大会優勝出来そうな実力があるのに、将来的にプロになるのかどうかも全然考えていなかったりします。

青春ものでも人間関係等に対してはあれこれ悩んだりしても、将来については何も考えず何も悩まないキャラがいますよね。作品が何を主題にしているのかによって、そこら辺の描き方は変わるので、進路について考えていないから駄目だとは言うつもりはありません。ただ友達と一緒にいたいという理由だけで大学を選ぶキャラとかはどうかと思います。何か話が逸れてきそう。まあ言いたいこととしては八軒や駒場や多摩子や吉野の様な生計を立てる事も視野に入れた現実的な夢に悩むキャラはそうはいないよねという話。

百姓貴族 (3) (ウィングス・コミックス)

百姓貴族 (3) (ウィングス・コミックス)

銀の匙」でそうしたキャラが描かれるのは荒川先生の人生経験も影響しているのかなと「百姓貴族」を読んでいて感じます。農家に産まれて子供の頃から家業を手伝っていた荒川先生は、働いて生活費を得る事の大変さを普通の子供よりも感じることが多かったのではないかなと。手伝いとして過酷な肉体労働をさせられたり、経営上止むを得ず商品にならない家畜を処分しなければならなかったり、自然災害によって多大な損失をすることも目の当たりにしたことは、精神的に鍛えられ仕事の大変さを知ることに繋がったことでしょう。これらのサラリーマン家庭に産まれた大多数の子供には得難い経験が、価値観に影響を与えて作品にも影響していたのではないかなと思います。

サラリーマン等の仕事は子供の目には見えない場所で行われているので、子供には親がどの様な仕事をしていて何が大変なのかを把握するのは難しいんですよね。会社の業績が悪化して失業しそうだとしても、親が隠そうとすれば子供は何も知らず不安も感じずに終わります。農家だと商品が家に置いてありますし、子供も一緒に働いているので経営が苦しいかどうかは見えやすいでしょうね。そろそろ疲れてきたので話を纏めると、農家という働かざるもの食うべからずの理を感じやすい環境の中で育ったことで肉体的にも精神的にも鍛えられ、それが作品内で自立したキャラが描かれることにも繋がっているように思います。本当にそうなのかは分かりませんが「百姓貴族」を読むとそんな風に感じます。