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「SIROBAKO」を見る前に「ハケンアニメ」を読もう

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

辻村深月先生の「ハケンアニメ」はアニメ業界に関わる様々な職業の人達を描いた群像劇。第一章では天才イケメン監督と女性プロデューサーが、第二章では女性アニメ監督と敏腕プロデューサーが、第三章ではアニメーターとアニメで町興しをしようと燃える公務員が仕事に挑む姿が描かれます。

物語として面白いこと以外にもアニメ業界の事情とかアニメファンにとって興味深い話が出ていて個人的にはかなり楽しめました。シナリオの打ち合わせが長いとかアニメ誌にある描き下ろしを作る時の流れとかとか。またアニメ制作だけの話にならずに最近流行の聖地巡礼についても取り上げたのも良かったですね。まああまり細かい話をして作品の魅力を伝えるのも面倒ですし読むのも疲れるでしょうから、とりあえず下にある台詞だけでも読んで見て下さい。これに対して何か来るものがあったらきっと楽しめるはず。


第一章 王子と猛獣使い
リア充どもが、現実に彼氏彼女とのデートやセックスに励んでいる横で、俺は一生自分が童貞だったらどうしようって不安で夜も眠れない中、数々のアニメキャラでオナニーして青春を過ごしてきたんだよ。だけど、ベルダンディー草薙素子を知ってる俺の人生を不幸だなんて誰にも呼ばせない」

第二章 女王様と風見鶏
「視聴率のことも、お金のことも、売り上げも。数字を気にする者は頂点を取れます。覇権を取りたいと、堂々と声に出すあなたの姿勢が、僕は大好きです。如何に天才だと持ち上げられようと、イケメンだろうと現場を逃げ出すような人間を、僕は心底軽蔑していますから」

第三章 軍隊アリと公務員
「ただ、その人から、あんまり夢は見るなって言われました。アニメの舞台になれば、ただそれだけでアニメファンがいっぱい押し寄せてくるって思ってるならそれは大間違いだって。肝心の作品がおもしろくて、かつ、観られなきゃ話になんないんだって、怒られました」


ちなみに第一章に登場する監督のモデルは幾原邦彦監督ではないかと連載中にネット上で言われていたんですが、巻末に書かれた取材協力者の名前の中に幾原監督の名前があるところを見ると、その説はどうやら当たりだったみたいですね。まあ幾原監督以外は考えられないという感じではありますが。作中でテレビシリーズを手掛ける、新作をあまり出さない、ルックスで注目されている、魔法少女もので伝説を作ったと説明されれば、アニメファンならまず「美少女戦士セーラームーン」や「少女革命ウテナ」の幾原監督を思い浮かべるでしょう。

この幾原監督がモデルとなっている王子監督の新作「リデルライト」では、一話進む度に作中で一年経過して魔法少女達が歳を取り、最終的には18歳まで成長するという斬新な作りなんですけど、これってストーリーは勿論のことキャラデザも相当大変そうですよね。美少女と普通の少女の違いや中学生と高校生の違いを表現出来ていないアニメを観ていると「リデルライト」でやろうとしている試みは実現不可能に近いとさえ思えてきます。こんなアニメが実際にあったとしたら是非観てみたい。

王子監督は自身が監督を務めた「ヨスガ」において登場する四人の少女のうち魔法少女に選ばれなかった三人を殺して終わらせたかったけど、子供やアニメファンや企業のことを考えてそれをやれなかったのが不満と話していました。王子監督は特別になれなかったら負けだとかそうした過激で残酷な現実認識を持っているみたいなんですが、そんな王子監督の登場する「ハケンアニメ」の作者である辻村先生はそれとは真逆だなと読んでいて感じました。辻村先生はこの作品の中で甘いだけではない辛い世界も描いてはいるんですが、最終的にはご都合主義ともいえるハッピーエンドで終わっていますからね。正直第三章のあの流れはあまりに都合が良すぎて現実味が無い気はします。