- 作者: 宇野常寛
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/07/25
- メディア: ハードカバー
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「エヴァ」が評価された理由も当時としては斬新な展開だったことや作画がテレビアニメでは綺麗なことやロボットのデザインセンスやら複数挙げられますし、90年代に流行した作品はそれ以外にも幾つもありました。それらを無視して「エヴァ」だけを持ち上げて時代と作品を結び付けて語ることには納得がいかない。ということで90年代のアニメを自分なりにまとめました。
家族との日常生活を描いたアニメ
90年代には「ちびまる子ちゃん」と「クレヨンしんちゃん」が放送開始。この二つに「サザエさん」を加えることで現在も放送されている家族ものが全部揃いました。「ちびまる子ちゃん」も「クレヨンしんちゃん」も「エヴァ」の倍以上の視聴率だった大人気作品なんですが、サブカルの批評家の間ではあまり話題にならないですね。
この3作品は家族形態がどれも異なっていて上手い具合に差別化が出来ています。この時代はまだ「クレヨンしんちゃん」の様に妻が専業主婦、子供が2人、マイホームを所有していることは一般的でしたが、最近はこうした家庭を持つことも困難になっていますね。ローンが後何十年残っているとはいえ現代では勝ち組の裕福な家庭に思えてきます。
名作推理漫画がアニメ化
「金田一少年の事件簿」に「名探偵コナン」と推理漫画の中でもトップクラスの知名度のある2作品がほぼ同時期にアニメ化。この2作品が始まってから10年間以上経過していますが、未だにこれらを越える作品が出ないというのは結構凄いですね。推理ものでは数年前に京都アニメーションがアニメ化した「氷菓」もかなり面白いですけど、知名度だけで考えると歯が立ちそうにありません。どうでもいい話ですが「金田一少年の事件簿」は推理ものでありながらホラー要素が強いですよね。子供の頃にあれを見て怖い思いをした視聴者は結構いたのではないでしょうか。
10年以上続いている長寿番組の登場
先程挙げた「ちびまる子ちゃん」と「クレヨンしんちゃん」と「名探偵コナン」以外にも「忍たま乱太郎」に「おじゃる丸」に「ポケットモンスター」に「ワンピース」と現在も放送中の長寿番組が幾つも始まりました。数年前に終わってしまいましたが「しましまとらのしまじろう」も14年間とかなりの長期間に渡り放送していたそうです。10年以上続いている番組がこれだけあるのは90年代だけだと思います。どうしてその様な作品が目立ったのかアニメ業界の事情と関連付けて分析してみるのも面白そうですね。
オタク向けのアニメの登場
この時代には「スレイヤーズ」に「VS騎士ラムネ&40炎」に「魔法少女プリティサミー」といった萌えや美少女が含まれる所謂オタクが好みそうな作品が作られ始めました。00年代にこの流れを強めていったのは赤松健先生とあずまきよひこ先生とその他沢山のライトノベルの力が大きかったと思いますが、90年代だとやはり「セイバーマリオネット」等のあかほりさとるさんの影響は無視出来ないでしょうね。
戦闘系魔法少女の誕生
戦闘系魔法少女ものの先駆け的な作品「セーラームーン」が放送されたのもこの時代。
この頃から「ナースエンジェルりりかSOS」等の魔法少女が戦う展開が主流になり、これが派生していき「プリキュアシリーズ」や「リリカルなのは」や「まどかマギカ」等のヒット作品を生み出すことになります。武内直子先生が東映の「美少女仮面ポワトリン」と「スーパー戦隊シリーズ」の影響を受けて「セーラームーン」を作り、今度は逆に東映が影響を受けて「プリキュアシリーズ」を作り出したというのは面白い話です。
ファンタジーとロボットの組み合わせ
ロボットものというとそれ迄はロボットに関する技術だけが進歩した現代か人類が宇宙進出した未来を舞台にする作品ばかりでしたが、この時代には「魔神英雄伝ワタルシリーズ」「ラムネ&40シリーズ」「魔法騎士レイアース」「天空のエスカフローネ」「覇王大系リューナイト」と異世界を舞台にした作品が目立ちました。最後に挙げた作品以外は全て主人公が異世界に召喚されています。90年代にはロボットもの以外でも異世界召喚系の作品は幾つもあるのですが、こうした作品の登場には「ドラゴンクエスト」といった当時流行していたゲームの世界に行きたいという子供達の願望が影響していたのではないでしょうか。
話は変わりますが小説家になろうで異世界召喚やゲームファンタジーが多いのは、作者が子供の頃にこれらの作品を観ながら育った事も多少関係ありそうですね。90年代に消費者だった層が大人になり生産者になったから流行が一周して戻ってきたとか。