アニメごろごろ

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「ガッチャマンクラウズ」のヒーローについての話


ヒーロー不要論者の爾乃美家累
特別な力を持ったヒーローに頼るのではなく、一般人の力を結集させることで世界をより変えていこうとする累。
破壊活動により政府を潰し新たな世界を作ろうとした梅田さんと違い、無血革命をしようとしているところは立派ですが、選民主義的なところがあるのは良くないですね。人間の善性というものを信じていて皆が善人になることが出来れば世界はよくなると考える累は、善人になれない連中のことは信頼せずクラウズも使わせません。
選民主義というよりはある種の潔癖症とも言えるかもしれません。
クラウズという特別な力も極力使わず、無血革命を目指し、人間の善意に期待していた累。現代が数多くの利害関係により複雑に絡み合った社会であることを理解しながら、累の方針は清濁併せ持つ複雑なものではなく綺麗事を貫こうとする単純なものでした。それはそれで素晴らしいことではありますが、自分の行動を自分の理念で縛り過ぎるといざという時に融通が利かずに行き詰ることもあります。

そうした考えが凝り固まった累に自由な発想を与えてくれたのがはじめでした。
それまでヒーローは要らないと言いながら内発性の高い人間ばかりにクラウズを与え仲間にするなど人格的に特別な人間を頼りにしていた累ですが、はじめの影響を受けてからは誰に対してもクラウズを与えるようになり特別な人間を必要としなくなりました。ここでようやく本当の意味でヒーローに頼らないで世界をアップデートすることに成功したと思います。

「ヒーローって何すかね。何なんすかねー?」と聞かれたら私は正義の心を持った人間であることが条件だと思うので、内発性がどうとか精神性により選別しているうちは残るのはヒーローしかいないんじゃないかと。
皆の力を合わせて世界を変えていこうという最後を迎える作品における皆というのは、善人ばかりを指すことがよくありますが「ガッチャマンクラウズ」の最後はそうではなかったところが素晴らしかったです。人格も能力も動機も何もかもばらばらな人達を上手くまとめながら、より良い方向に進めていくのが現実社会でも必要とされていることですね。



正義の体現者になった一ノ瀬はじめ
物事を様々な視点で見れる。常識に縛られない。自分の気持ちに正直。
これらがはじめの特徴だと思いますが、個人的にははじめの特徴としてこれ以外にはじめのやること全てが正しくなるというのがあると思います。はじめの言ってることは全てが正しくて、それに従っていれば間違えることがない。
MESSと戦わないこともガッチャマンであることをばらすことも様々な危険が伴うので、当然周りからも反対されていました。しかしはじめのそうした勝手な行動は結果的に正しいものになるので次第に誰も責めなくなる。

はじめのそうした絶対的正義は11話の前半のメンバー全員が異常なまでにはじめを持ち上げているところを見ると特にそう感じますね。はじめがたった一人で問題を解決している訳ではありませんが、解決策のほとんどははじめが考えているようなものです。リーダーであるパイマンよりも仕切ることが多くて、ガッチャマンも爾乃美家累も菅山首相もはじめの言葉に従う。問題を解決出来るようにはじめが設計してくれなければ、累達も動き始めることが出来ない。
一人のヒーローに頼らない世界を描いていた「ガッチャマンクラウズ」ですが、結局万物をデザインするはじめというヒーローがいなければ問題は解決出来なかった。
カッツェのことも最終的にはじめ一人で背負う形になってしまっていますしね。
そこら辺が見ていて少々気になったので、はじめの言葉を必要とせずに活躍出来る人達をもっと描いて欲しかったです。



仕事よりもヒーローを優先する枇々木丈
東大生ばかりが合格する国家総合職を選ばずに、市役所の職員になった丈さん。
同僚の女性達にどうして仕事が出来るのに市役所なんかにいるのかと聞かれ、暇だからと答えるあたり熱意がまるで感じられません。超激務の国家総合職だといくら仕事の出来る丈さんでも定時には帰れず、プライベートの時間も減ってしまいます。そうなるとダーツで遊ぶ時間もガッチャマンとしての活動も制限される。
恐らくそれが嫌だから仕事が楽で暇そうな市役所で働いているんですよね。実際は市役所でも忙しい部署は滅茶苦茶大変ですが、そこはフィクションなので無視しておきましょう。

この世界平和という大きな夢の為に、自分の能力に見合った仕事を選ばないのは「仮面ライダーオーズ」の後藤さんと一緒ですね。後藤さんについて簡単に説明すると、エリート警察官だったのに世界の平和を守りたいからと言って辞職し変な組織に入った人です。最初は大きなことを成し遂げてみせようという情熱があったのに、自分の身の程を知ってからは丸くなり大人しくなる。

本当は組織の歯車として一生懸命仕事をすることも必要なんですが、丈さんも後藤さんもそれをしないんですよね。
世界平和という夢を分かりやすい形でしか実現しようとしない。組織の歯車として働き世界平和を目指そうとはしない。
誰かを救うことが目的ならそうはならなかったかもしれませんが、ヒーローそのものになりたいという英雄願望があるから変なことになる。
正義感が強くて真面目な古典的ヒーローである清音と比べると、色々と歪んでいるのが丈さんの特徴だと思います。
どうでもいいけど清音は高校3年生なのにどうして19歳なんですかね…遅刻が多過ぎて留年とか?