太陽と芸術の神アポロンをモチーフにしているであろう天翔ひびき。詩歌や音楽を愛するアポロンらしく彼女の特技は楽器を奏でること、歌を歌うこと、そして趣味は美術館を巡ること。
美術館が好きな設定に表れているように、ひびきは芸術的で美しいものを愛する人であり、それがアリシアシャーロットとフレンズを結成した理由の一つと思われます。
ひびき「アリシアは会った人すべてを魅了する魅力の持ち主だ。彼女の歌、ダンス、パフォーマンス、どれもが素晴らしく、私は迷わず彼女とフレンズを組んだ。」
ひびきにとってアリシアの美しさは、美少女という女性の枠に収まらない美術品にも等しいのでしょう。その為か彼女は神話をモチーフにしているヘブンリーパフュームの赤色のドレスにはアイディアルレディ(理想の女)、水色のドレスにはアイディアルビューティー(理想の美)の名を与えています。
さて、アポロンと言えば残念なイケメンとして扱われる神。恋愛関係で問題が多いことが伝えられています。
一例としてエロスに金の矢を射ち込まれたアポロンはダプネを愛して追い回し、ダプネは逃げ回る日々に堪えられなくなり、最後は自身を月桂樹の姿に変えてしてしまうという悲劇的なエピソードがあります。
そして、彼女を喪い悲しんだアポロンは彼女への永遠の愛の証として、月桂樹から冠を作って被り続けることになりました。
この追い回す男と逃げる女の話を聞いた上で、月桂冠を模したヘブンリールビーヘアアクセを見ると何と言うか複雑な気分になります。スタッフは月桂冠に勝利と栄光の意味しか込めていないかもしれませんが、その背景に悲劇が隠されていることは覚えておきたいところですね。
眠れない夜を過ごす臆病な天翔ひびき
エロスに矢を射たれたアポロンがダプネに魅了されて追い掛けたように、ソルベット王国で矢を射たれひびきもアリシアを振り向かせる為に全力を尽くしました。
アリシア「貴方は私に相応しくない。」
アリシアに認められたい一心で砂漠を歩き、雪山を登り、最後は宇宙に飛び出す。アポロ計画で人類が月面に着陸してから50年、ひびきはその後に続く人類初の挑戦として宇宙でスペースアイカツを開始。
アリシアのいない暗闇の世界で必死に技を磨いてきた甲斐あって、アイカツアーティストとして世界的に認められました。その実力はオフィスに飾られたトロフィーの数々に表れています。
既に誰とフレンズを組んでも申し分ない力は身に付いていたことでしょう。ところが、そこまで自分を磨いておきながら、ひびきがアリシアの元に行って「フレンズを再結成して欲しい」と頼むことはありませんでした。
アリシアの本当の心に触れることを怖がるひびきは、遠く離れた所からメッセージを送るばかりで、トモダチカラを学んだ後も電話を掛けて終わり。
ゴールに向かって一歩ずつ進んでいましたが、神城カレンから見れば五十歩百歩の小さな差に思えたのかもしれません。カレンは何時までも立ち止まるひびきを責め立てました。
ひびき「アリシアは私と会おうとしないで城の前で追い返したんだ。」
カレン「それで逃げ帰ってきたのですか。」
何故、普段は温厚なカレンがひびきに対して厳しく接するのでしょうか。その行動にはきっと自分と同じ道を歩ませたくないという意図があったのではないかと思います。
目を逸らしていいことなんてひとつもない
5年前にラブミーゾーンでアイビリーブを引退させたと思い込み、その後は彼女達と向き合うこともせず、ソルベット王国の問題も知らなかったカレン。
アリシアが国を救う為に多忙な生活を強いられる中、彼女は自由にアイカツするだけではなく、島を改造して豪遊していました。アイカツ親善大使を始めた時と同じく、真実を知った時は無知な自分を恥じたはず。
何も知ろうとしてこなかった日々が長ければ、真実を受け止めた時の傷は深くなる。それを避ける為にもカレンは、ひびきをソルベット王国に一刻も早く向かわせようとしたのかもしれません。
カレン「彼女は言葉にはしないけれど、きっと…ひびきちゃん。あなたを必要としている。」
この時、カレンにはソルベット王国の現状を詳しく調べて伝える手もあったように思います。アリシアが国を救う為に苦しんでいることを知れば、訳も分からず再結成を拒絶されたひびきの不安は幾分か和らいだことでしょう。しかし、それをしてしまえばフレンズとして終わりです。
今もアリシアが大変な状況に置かれていると知らされた後で会いに行く。その行動にはパートナーを思いやる心はあるとしても、パートナーを信じる心はありません。
ミライ「パートナーのことを信じられなくなったらフレンズはおしまいだよ。」
パートナーが自分を必要としている根拠が欠片も無いとしても、それでも絆を信じて前に進める者がフレンズ。ひびきが自分から勇気を出して行かなければ、アリシアに再会しても意味はない。
だからこそ、カレンはあの様に強い言い方をしてまで、目を背けるひびきを再会するように焚き付けたのでしょう。表面的に厳しく見えても心の中は愛で溢れている。それが神城カレンというアイドル。
アリシアシャーロットの犯した罪
パートナーの実力は疑っていないけれども、自分がパートナーに求められていることは信じられない。ひびきとアリシアが深く愛し合っていることは、他の人の目には明らかなのですが、本人は自分が愛されるに足る者か不安を感じていました。
彼女達は意見が対立するフレンズとしてハニーキャットに似ていますが、自分がパートナーにどう思われているのか分からない点で大きく違っています。相手の人柄も趣味も詳しく知らないまま、フレンズを結成した故に起きる問題。
ひびきはピュアパレットとラブミーティアの助力を得て、アリシアの心の扉を開きましたが、離れた心と心の距離は容易に縮まりませんでした。
ソルベット王国を発った後もひびきはアイビリーブの再結成を再び断られるのではないかと恐れ、アリシアは足を引っ張ってしまうのではないかと気に病んでしまう。
アリシアはひびきに迷惑を掛けまいとして、休む暇も無くアイカツに取り組みますが、その目標の達成は彼女が吐いた嘘によって困難を極めていました。
アリシアの「貴方には私とフレンズを組む資格が無い」という冷たい言葉が、皮肉にもひびきをトップクラスのアイドルへ成長させる源となり、結果的に実力差を広げて「私は貴方のフレンズに相応しくないかもしれない」と苦悩する形で返されます。
ソルベット王国を救う為に必要であったとはいえ、アリシアの犯した罪は消えません。ひびきは許していましたが、天は許してはいなかったのでしょう。人を傷つけた分、自分も傷つけられてしまいます。
いつかきっと繋がる追いかけていこう
アリシアとひびきの仲を引き裂くように天から降り注ぐ雷雨。この時、アリシアは雨が強く降る前に足を止めてしまいました。
本気でひびきに追い付きたいのであれば、その程度で止まる訳にはいかないはず。アリシアがそれをしなかったのは、心の奥ではひびきに追い付けないと諦めていしまい、無意識に休む言い訳を探していたからなのかもしれません。
アリシア「私は貴方の走るスピードについていけない。」
アリシアはひびきと共に走ったことにより、自分の無力を改めて思い知らされて、アイビリーブを再結成するべきではないかもしれないと弱音を吐いてしまいます。
その言葉を聞いたひびきはデートの時の様に取り乱すことなく、アリシアが如何に大切な存在であるのかを語ります。最愛のパートナーが側にいなければ、どれほど素晴らしい光景も暗闇と変わらない。アリシアはひびきの世界を照らすMy Star。
姫「もし天の怒りが雷の雨となって降り注いだとしても、千の嵐が大地を切り刻んだとしても、ずっと共にいると誓って下さいますか。」
王子「ああ、たとえこの宇宙の終わりが来たとしても僕達はずっと一緒だ。」
貴方が信じる私を信じる。一度は弱気になっていたアリシアですが、ひびきが自分に大切に想われていることを告げられ、自分もひびきを想い続けていたことを打ち明け、遂にアイビリーブとしてステージに立つ事を誓います。
一緒なら誰よりも強く、響き合い、輝き合える。世界中が待ち望んだ「新たなるステージへ」ではアリシアが階段を降りてくるまで、ひびきは踊り場で待ち続けます。そうしてアリシアの手を取って初めて新たなるステージへ進む。
その後は再び階段で二手に別れてしまいますが、最後に辿り着く場所は変わりません。まるでアイビリーブの行く末を暗示するようなステージを見れば、たとえひびきとアリシアが離れ離れになったとしても、フレンズの絆が失われることはないと信じられますね。
最終回まで残り僅か、アイビリーブの幸福を願って最後まで楽しみたいと思います。